家計の金融行動に関する世論調査
家計の金融資産に関する世論調査[二人以上世帯](平成15年まで)
平成9年調査結果(貯蓄と消費に関する世論調査)
V 生活の設計
1. 「経済的豊かさ」と「心の豊かさ」
(1) 経済的豊かさ
「経済的豊かさ」については、これを「実感している」世帯が全体の32.3%、「実感していない」世帯が66.2%となっている。
「経済的豊かさ」を実感するために大切なもの(2項目以内での複数回答)としては、全体では「ある程度の額の年収の実現」や「ある程度の額の金融資産の保有」を挙げる世帯が多いが、実際に「経済的豊かさを実感している」世帯は、「実感していない」世帯に比べ「マイホームなどの実物資産の取得」を評価する割合が高くなっている。
経済的豊かさを 「実感している」世帯 |
経済的豊かさを 「実感していない」世帯 |
|
---|---|---|
ある程度の額の年収の実現 | 55.2 | 62.2 |
ある程度の額の金融資産の保有 | 49.6 | 53.9 |
マイホームなど実物資産の取得 | 31.9 | 17.2 |
消費財やレジャー関連消費の充実 | 20.9 | 17.6 |
その他 | 4.7 | 6.0 |
(2) 心の豊かさ
次に、「心の豊かさ」については、これを「実感している」世帯が全体の56.2%と、「実感していない」世帯の42.3%を上回っている。
「心の豊かさ」を実感するために大切なもの(3項目以内での複数回答)としては、「健康」、「経済的豊かさ」、「家族とのきずな」、「将来の生活への安心感」が上位を占めているが、実際に「心の豊かさを実感している」世帯は、「実感していない」世帯に比べ、「健康」、「家族とのきずな」を重視する割合が高い一方、「実感していない」世帯では、「実感している」世帯に比べ「将来の生活への安心感」、「経済的豊かさ」といった経済的事由を重視する割合が高い。
心の豊かさを 「実感している」世帯 |
心の豊かさを 「実感していない」世帯 |
|
---|---|---|
健康 | 78.6 | 62.6 |
経済的豊かさ | 42.1 | 59.1 |
家族とのきずな | 52.6 | 35.8 |
将来の生活への安定感 | 26.3 | 45.5 |
2. 生活設計の策定状況
(1) 「生活設計」策定の有無
「生活設計を立てている」世帯(37.0%)と「現在は立てていないが、今後は立てるつもりである」世帯(39.4%)を合わせた「生活設計を立てる意思がある」世帯は8割近くに達しており、生活設計の重要性に対する認識が高いことがわかる。
これを年代別にみていくと、若い世代ではほとんどの世帯で「生活設計を立てる意思がある」が、年代が進むにつれて「現在は立てていないが、今後は立てるつもりである」世帯の割合が縮小していく傾向がある。
(2) 家計簿記帳の動向
家計簿記帳の動向をみると、「つけている」世帯は22.5%で、これに「ときどきつけている」世帯(12.9%)を合わせると、調査世帯全体の約3分の 1が記帳していることになる。
年代別にみると、「つけている」世帯と「ときどきつけている」世帯を合わせた世帯の割合は、20歳代では約半分(47.9%)と最も多く、その後、年代を追って50歳代まで低下している。
(3) 住宅の取得
各世帯の現在の住居形態を尋ねたところ、全世帯の70.0%が持家(相続等を含む)に住居していた。
次に、現在、マイホームを取得していない世帯に対し、取得予定目途を尋ねたところ、マイホーム取得について「目下のところ考えていない」とする世帯と「将来にわたり取得する考えはない」とする世帯が、約半分(各29.9%、17.9%)を占めた。
さらに、近く住宅取得予定のある世帯に対し、必要資金総額を尋ねたところ、平均が3,417万円となり、このうち自己資金による充当は1,085万円、借入金による充当は2,332万円となった。
3. 老後の生活
(1) 「老後の生活」への心配
老後の生活に対する評価を窺うと、全世帯のうち4分の3が「心配している」と回答しており、とくに20~40歳代の若年・壮年層では8割以上の世帯が老後を心配している点が目立つ。
全体 | 20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
心配している | 74.3 | 81.7 | 80.7 | 81.4 | 75.0 | 68.4 | 55.0 |
心配していない | 25.0 | 17.6 | 19.1 | 17.8 | 23.9 | 30.9 | 44.5 |
また、過去の調査結果と比べても、60歳未満の世帯では、「心配している」世帯割合が趨勢的に上昇している。
平成5年 | 平成6年 | 平成7年 | 平成8年 | 平成9年 | |
---|---|---|---|---|---|
心配していない | 35.6 | 28.2 | 27.2 | 27.8 | 20.4 |
心配している | 62.0 | 69.9 | 71.6 | 71.3 | 78.8 |
(2) 老後の生活を心配する理由
このような老後の生活に対する心配の具体的な理由を、「老後を心配している」世帯に対して尋ねたところ(複数回答)、「十分な貯蓄がないから」や「年金(公的年金、企業年金、個人年金)や保険が十分でないから」を挙げる世帯が圧倒的に多かった。
(3) 老後の生活費と収入源
老後の生活資金として世帯主の年金支給時に最低限準備しておけばよいと考える貯蓄残高について、世帯主が60歳未満の世帯に尋ねたところ、平均2,286万円と、実際の60歳以上の平均貯蓄保有額1,913万円を上回った。
一方、老後の生活費については、世帯主が60歳未満の世帯が予想する老後の生活費の平均月額は28万円と、世帯主が60歳以上の世帯が実際に必要としている現在の最低生活費(月額28万円)と同水準になった。
また、老後の収入源を世帯主が60歳以上の世帯に尋ねたところ(3項目以内での複数回答)、「公的年金」と「就業による収入」が2大資金源になっている。ただし、年代別にみると、60~64歳では「就業による収入」が最も多いが、65歳以上になると、「就業による収入」が減少して、「公的年金」の依存度が高くなっている。
過去の調査結果と比較すると、「利子・配当所得」が減少傾向にあり、「貯蓄の取り崩し」がここにきて増えてきている。
平成4年 | 平成5年 | 平成6年 | 平成7年 | 平成8年 | 平成9年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
公的年金 | 70.7 | 66.4 | 68.2 | 73.3 | 72.4 | 73.8 |
就業による収入 | 49.0 | 53.6 | 51.7 | 46.3 | 52.1 | 47.8 |
企業・個人年金等 | 15.6 | 15.3 | 14.8 | 15.6 | 16.7 | 17.9 |
貯蓄の取り崩し | 11.1 | 11.1 | 11.9 | 10.5 | 14.6 | 18.8 |
利子・配当所得 | 11.5 | 10.3 | 8.3 | 9.2 | 6.1 | 4.6 |
(4) 年金に対する考え方
年金(公的年金、企業年金を含み、個人年金は除く)について、老後の必要資金をまかなえるか尋ねたところ、「さほど不自由はない」と回答した世帯は 5.2%、「ゆとりはないが、生活費はまかなえる」が29.6%と、両者を合わせて全体の約3分の1となっている一方、「年金だけではゆとりがない」は 64.8%となった。
これを年代別にみると、とくに20~40歳代では7割以上の世帯が「年金だけではゆとりがない」と不足を見込んでいる。
次に、「ゆとりがない」と回答した世帯にその理由を尋ねたところ(2項目以内での複数回答)、「医療・介護費用の個人負担が増えるとみているから」が最も多く、「年金支給金額が切り下げられるとみているから」、「物価上昇等により費用が増えていくとみているから」、「年金支給年齢が引き上げられるとみているから」が続いている。
ただ、この結果を年代別にみると、20~50歳代ではどの事項についても3割以上の世帯が不安を感じているのに対し、60歳以上では「医療・介護費用の個人負担が増えるとみているから」と「物価上昇等により費用が増えていくとみているから」が主な理由として挙げられている。
さらに、年金の不足分をどうやってまかなうか(または現在まかなっているか)を尋ねたところ(2項目以内での複数回答)、具体的な対応として「働いてまかなうつもり」が最も多く、「貯蓄でまかなうつもり」、「生活水準を引き下げるつもり」が続いている。
(5) 老後のイメージ
老後の暮らし方(高齢者は今後の暮らし)について尋ねたところ(複数回答)、「夫婦2人で暮らしていくつもり」(56.1%)が半分以上で、次いで「こどもなどと同居するつもり」(21.9%)が挙げられている。
また、老後に何をして過ごすのかについては(複数回答)、「趣味に打ち込む生活をしたい」(55.1%)と「仕事を続けたい」(51.3%)が半分を超えている。
(参考) 平成9年の平均モデル世帯の収入・支出動向
家計全体の収入・支出状況(フローベース)をみる場合、本統計においては、年間手取り収入や消費支出、貯蓄や借入金の増減などの各項目の回答世帯数が異なるため、各項目の平均値を単純に比較することはできない。
そこで、9年の平均的な年収世帯(「平均モデル世帯」と呼ぶこととする)の収入・支出パターンをみることとした。
この平均モデル世帯の本年の動きは次のとおりである。
すなわち、年間手取り収入は605万円と、前年(593万円)を+2.0%上回ったほか、消費支出も508万円と、前年(487万円)を+4.3%上回った。この結果、消費性向(手取り収入に占める消費支出割合)は84.0%と前年(82.1%)よりも上昇した。この間、年間貯蓄は、33万円(貯蓄額96万円-同取り崩し額63万円)の純増となった。