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金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-

(2023年10月改訂版)

1.金融教育のねらいと基本的性格

(3)金融教育の意義と魅力

① 金融教育の意義

学校教育が児童生徒に培うことを期待している能力として「自立する力」と「社会と関わる力」を挙げることができる。金融教育の意義をそうした観点から捉えれば、次のように整理することができる。

ア.お金を通して生計を管理する能力を身に付け、それをもとに、将来を見通しながら、より豊かな生き方を実現するため、主体的に考え、工夫し、努力する態度を身に付けること(自立する力の育成支援)

生計を立てるためにはまず働いて収入を得ることが基本であることを自覚する。そのためには学校において働く体験をする機会や場を設け、働くことの楽しさと大変さを体験するとともに、働くことの意義や大切さを理解する。さらにそれを土台に、なりたい自分やよりよい生き方について考え、将来の自分の職業についても主体的に考える態度を身に付ける。

働くことを通してお金の価値の重さを知り、使えるお金には限りがあることを理解した上で、それをどう消費や貯蓄に振り向けるかを考える。その際、工夫を凝らしてやりくりすることの大変さ、楽しさ、大切さを身をもって理解する。さらに、それを手がかりとして、将来を見通した生活の姿を資金計画をもとに現実的に組み立てるとともに、生活していく上で生ずるリスクについて考え、その予防策や対応策についても学び、活用できるようにする。

イ.金融・経済の仕組みを学び、働くことやお金を使うことなどを通して、社会に支えられている自分と社会に働きかける自分とを自覚して、社会に感謝し、貢献する態度を身に付けること(社会と関わり合う力の育成支援)

金融の働きや経済の仕組みを理解すること、職場体験等の体験学習を行うことなどを通じて、自分が様々な支えや関係性のもとで生かされていることを知り、つながりの大切さ、他者を尊重する気持ち、法をはじめとする社会規範などのルールを守る必要性などを理解し、周りの人や社会に感謝する心を養う。

同時に、働くことやお金を使うことなどを通して、自分が人や社会に影響を与えていることを理解する。それを踏まえ、よりよい社会を築くために自分が社会の一員としてなすべきことを考え、お金の活用を含めて主体的に取り組む態度を身に付けるとともに、社会経済が抱える課題に対しても幅広く関心をもち、その解決に向けて合理的・主体的に考える態度を養う。

② 保護者・子供たちにとっての金融教育の魅力

子供たちの成長に願いを込める保護者や教育を受ける子供たちの立場に立って金融教育の魅力は、次のように整理することができる。

ア.金融教育は現実の社会と触れ合う機会を提供する

いまの子供たちは生活体験、社会体験等が不足しているといわれる。金融教育は現実の社会を知るための知識を学ぶが、それだけが目的ではない。体験的な学習などを通して、知識や課題を常に自分の暮らしや生き方と関わらせながら理解し、それを現実の場で活用したり、行動に表したりする部分が大事な構成要素となる。したがって、金融教育は常に実社会や自己の生活といった現実に目を向けさせる側面をもち、子供たちが生活者や社会人としてその役割を果たすために必要な素地を養う教育となる。このようにして、金融教育は、子供一人一人の人格形成に止まらず、よりよい社会づくりに貢献することになる。

イ.金融教育はたくましい人間形成をサポートする

いまの子供たちは何事につけ簡単に答えを知りたがる傾向があるといわれる。また、タブレット型端末やスマートフォン等から簡易に情報を得られる環境にもある。金融教育は、金融分野の知識や情報を得ることだけでなく、教科等の学習で得た知識や、自分なりの経験・判断を織り込みながら、自ら課題を発見し、その解決に向けて、総合的に組み立て、高度に応用する力を養う点に特徴がある。得られた知識、友だちの考え方、自分の価値観、現実的な制約等様々な条件を加味しながら正解が一つとは限らない課題を解決するためのいくつかの選択肢を考え、その中から最適と思われるものを選び取る資質・能力を身に付けることが重視される。この過程で、子供たちは物事を多面的・多角的に捉え、柔軟でたくましく生きる基礎的な力を培うことができる。

ウ.金融教育は将来への意欲や活力を生み出す

いまの子供たちは将来に明るい希望をもちづらくなっているとの指摘がある。金融にはその機能の一つとして「現在と将来をつなぐ」働きがあり、金融教育にも「将来」を意識した様々な内容が含まれている。将来を考える上で特に大事なことは、子供たちが内発的な意欲をもって未来に夢を紡ぐことができるかどうかである。同時に、自らの将来を想像し、そこに至るまでの過程を考察することを通じ、現在の自分の課題を見付ける。その意味で金融教育が重視する体験的な学習の意義は大きい。子供たちは体験的な学習の中で、実感や感動、新鮮な気付きや達成感、新たな意欲や関心に出会う。そして幅広い人々や現実との触れ合いを通じて、それぞれの感性や志向をもとに、他者と自分を比較するのではなく、自分自身の、自分にしかない夢や未来を見いだす機会を得る。これは必ずしも定量的な学力や評価と直接結び付くものではないが、子供たちの将来にとってかけがえのない成長の可能性を提供する。そして、それが結果としては教科等の学習において積極的に取り組む動機付けを与えることにもなる。

③ 学校にとっての金融教育の魅力

一方、学校や教師の立場に立つと、金融教育の魅力は、学校全体として金融教育を軸にしたカリキュラム・マネジメントを行い、そのために家庭や地域・関係機関の協力を得ることにより、各学校の特色を出しつつ、学校教育目標の具現化や「社会に開かれた教育課程」の推進、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が図られ、教師の質の向上にもつながることにある。さらに、金融教育に関しては、既に様々な教材や実践事例が作成・公表されているため、これを活用することにより、比較的小さなコストで学校教育の中に金融教育を取り込むことができ、費用対効果が高い点も魅力といえるだろう。これらの点について、本プログラムで取り上げている個所は次のとおりである。

学校にとっての金融教育の魅力 取り上げている個所
学校教育目標の具現化に資する 4.(1)
カリキュラム・マネジメントの実例となる 1.(6)2.(1)③イ4.(1)④
保護者や地域との連携・協働を育む基盤となり、社会に開かれた教育課程の実践となる 1.(4)①イ(6)4.(1)⑥(2)(3)
「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の実例となる 下記
教師の資質・力量の向上に寄与する 1.(6)4.(3)②(4)
費用対効果が高い 6.

学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進により、「子供たちが、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、これからの時代に求められる資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにする」ことが強く求められている。上で述べたように、知識や課題を自分の暮らしや生き方と関わらせながら理解し、それを現実の場で活用する力を養うとともに、将来を見通しながら、より豊かな生き方を実現するため、主体的に考え、工夫し、努力する態度を身に付けたり、よりよい社会を築くために自分が社会の一員としてなすべきことを考えたりする金融教育の意義や魅力は、学習指導要領が求めるものと軌を一にしているといえる。

1.金融教育のねらいと基本的性格の目次

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