金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(2023年10月改訂版)
4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて
(3)全体計画、指導計画の作成
① 全体計画の作成
ア.全体計画作成の意義
各学校においては、これまでにも道徳教育をはじめ、国際理解教育や環境教育、総合的な学習(探究)の時間など、様々な教育課題の全体計画を作成してきた経緯がある。各学校で金融教育を推進するときにも、全体計画を作成することが求められる。現在、金融教育を重点的に指導できる時間は「総合的な学習(探究)の時間」を除いて特に設定されていない。金融教育は全教育活動を通じて広く実践される教科等横断的な教育課題である。そのために、教科ごとにどのような内容や教材・題材が金融教育と関わりがあるのかを明らかにし、その全体像を把握する必要がある。また、金融教育は全ての教職員がそれぞれの教科指導や教科外指導で実践するものである。全校ぐるみで実施するためには、学校としての統一性を確保し、教師の指導力が総合的に発揮できるようにするためにも、金融教育に対する学校としての基本的な考え方や実践場面等を示した全体計画が必要になる。
金融教育は保護者や地域との連携・協力を重視することによって、指導の効果を一層高めることができる。金融教育の全体計画は、保護者や地域住民に対する説明資料として活用することができるし、時には啓発する機能をもたせることもできる。全体計画は校外に向けた重要な資料でもある。さらに、金融教育は学校教育を基礎とし、生涯にわたって関心をもち、学び続けていかなければならない課題である。学校教育は生涯学習の基礎づくりを行う場であり、その意味で各学校段階の役割や指導内容を明確にした全体計画を作成することには重要な意義がある。
イ.全体計画に盛り込みたい内容
金融教育の全体計画に盛り込みたい内容項目は、他の教育課題と基本的に変わるものではない。次のような項目について学校としての考え方や方針を明確にし、「社会に開かれた教育課程」の体現に資する全体計画を作成したい。
- 金融教育に対する学校としての指導目標を設定する。ここでは、学校の教育目標を踏まえるとともに、学習指導要領の趣旨、児童生徒の発達上の課題や地域の実態、保護者や地域住民の願いや意向などを総合的に考慮する。この際、金融広報中央委員会発行の本プログラムをはじめとした手引き等も参考になる。
- 指導目標を受け、児童生徒の発達の段階を踏まえて、各学年の目標や内容を具体的に設定する。ここでは、教科等における金融教育にも配慮しつつ、目標や内容の系統性を重視することが重要である。小学校第1学年と保育所・幼稚園・認定こども園、小学校第6学年と中学校第1学年など、隣接する校種との連続的な発展性を考慮する。
- 各教科等において金融教育との関わりのある指導内容や教材・題材、学習活動などを学年ごとに抽出し、それらを一覧表に整理する。その際、金融教育の視点や関連を明記しておく。このことによって、金融教育に関わる指導がどの学年のどの教科等でどのように行われるのかが明らかになる。特に関わりの深い教科等に、社会科、公民科、生活科、家庭科、技術・家庭科、特別の教科 道徳、特別活動、それに各学校が活動内容を定める総合的な学習(探究)の時間がある。
- 地域との連携・協力の在り方について、基本的な考え方や具体的な進め方を明らかにする。ここでは、地域にみられる金融教育に関する素材、人材、施設や機関・団体等との連携・協力の在り方について、学校としての基本方針を示す。
ウ.作成の手続きと配慮事項等
全体計画の作成に当たっては、校内に、例えば教科主任により構成する「金融教育の全体計画作成委員会」のような組織を立ち上げ、作成の必要性を確認するとともに、作成のための方針や手順を学校として明確にする。作成方針に基づいて全教職員が携わることが重要であり、個々の教師が作成のための作業を具体的に行うことによって、当事者意識が高まり、学校全体での指導体制が確立していく。
全体計画に定まったものはないが、必要事項が盛り込まれ、具体的な学習指導のイメージがつかめることが望ましい。また、折に触れて改善していく柔軟性をもたせたい。全体計画は、各教師が教科等で指導計画を作成し実施する際に拠り所となるものであり、基本計画としての性格をもっている。全体計画の内容には教職員はもとより、保護者や地域の人たちにも理解できるような分かりやすいものが求められる。