平成17年度教員のための金融教育セミナー
1. 講演会 「生きる力と金融教育」
世の中の仕組みを知って、“生きる力”をフルに生かす
今まで“週刊こどもニュース”で取り上げた、金融・経済に関するお話を紹介して来ましたが、日本銀行が新しい紙幣を発行した際、番組でもこれを取り上げました。それについては、“どうしてこれがお金なのか、お金とは何か”という点から始め、物々交換、金との交換の裏付けとしての“信用”といった話しをしました。
先ほどの銀行合併の際にもお話しましたが、子どもたちの知識は十分なものではありません。その暗黙知のギャップといいますか、概念を埋めるためには、回り道になってもいいですから、ていねいに、順序よく話しを進めていくことが必要になると思います。
消費者金融を紹介した時には宣伝のためか、子どもたちの多くが憧れのようなものを持っていました。金利が高いこと、利子が付いた分にまた利子が付く“複利”といった概念がありませんでした。そこでこのことを解説すると、子どもたちは驚きの声をあげたのですが、私はその声にびっくりさせられました。
お金を借りることのリスクや返し方などを教えた上で、どうすればいいかを教える。そのきっかけを与えることが、実は大事なことなのではないでしょうか。つまり、世の中の仕組みをきちんと教えていくことが、もっと必要になってくるのではないかと思います。世の中の仕組みが分かってこそ、これからの時代を担う子どもたちは、どうやって生きていくかを知ることになり、それを身に付け、より良く生きていくことができるのではないかと思います。
流通の始まりである物々交換で交わされた品物は、人間の労働によって作られたものです。私たちが労働することによってある種の価値が見いだされ、その価値をたまたま仲介するのがお金だったわけですが、その価値を裏付ける“信用”とは、たいへん重要な存在になります。
そこで金融教育は、これから社会に出て行く子どもたちにとって、その“信用”を身に付けることで、社会で一人前の役割を果たし、そして実りある人生を過ごしてもらうために必要なものです。
つまり金融教育とは、一人ひとりが生きていく上で必要になる知識を、お金を通じて学んでもらうこと、個人生活に関わる諸問題の知識や知恵を身に付けることを自ら学び、その中で自分で考え、選択していくという基礎的な力を養うものです。
その力を現在、社会の底流が、“金融教育”または“生きる力”として求めているのだと思います。総合学習という点からも、“生きる力”を身に付けることが求められていますが、社会の仕組みの大原則が分かれば、後は応用問題として理解できるようになるでしょう。
そのためにも、世の中の仕組みを、段階を踏んで順に追って解説することで、一見難しそうな話題や事柄も理解できるようになるのだと思います。