平成17年度教員のための金融教育セミナー
1. 講演会 「生きる力と金融教育」
子どもの発想や視点を生かすために
ご紹介いただきました池上です。私は“NHK週刊こどもニュース”のお父さん役を、今年の3月まで11年間務めましたが、今日はその経験から、“週刊こどもニュース”の裏話を中心に、失敗したことや気付かされた例を挙げながら、子どもに理解してもらうことの難しさや大切さについてお話したいと思います。
そもそも11年前に“週刊こどもニュース”が始まったのは、“世の中いろいろなニュースがあるのだから、子ども向けのニュース番組があってもいいのではないか”という視聴者からの要望を受けたからです。またその当時、子どもの権利条約が発効したこともありまして、そこに“子どもにだって知る権利がある”という条文があって、子どもの知りたいことを伝えることが、大人あるいは報道に携わる者の責務であろうという思いで番組を作っていました。
“週刊こどもニュース”は、土曜日午後6時10分からの生放送なので、出演している子どもたちから、思わぬ質問や感想が出されます。以前、中東問題でパレスチナのテロとイスラエル軍の対立を説明したとき、「子どものケンカみたいだ」と言った子がいて、視聴者から「子どもに何を言わせるんだ」という抗議が殺到しました。子どもに素直な意見や感想、質問を言ってもらう番組ですが、スリルとサスペンスのある番組でもありました(笑)。
私はあの番組に出演していましたがアナウンサーではなく、番組で取り上げるニュースを決め、子どもに分かってもらうにはどのようにしたら良いのかを考え、解説に使う模型の設計をしたり、説明をする際の原稿を書いたりする記者、いわゆる裏方でした。前日の金曜日に行われる出演者打ち合わせでは、解説するニュースの原稿を子どもたちに読んで聞かせ、分からないところがあれば指摘してもらい、そこを分かるように書き直すといったことを行っていたのです。
ニュースを扱う以上、抽象的なこともあります。そこで、抽象的な概念が分かるといわれている小学校5年生ぐらいの子どもを主な対象にして、さらに、子どもたちの成長が早いことも考えて、2~3年ごとに子どもを入れ替え、その際にはお母さんも入れ替えて、新しい家族という設定で番組をお届けしたのです。11年間の間にお母さんも、柴田理恵さん、高泉淳子さん、林マヤさん、林家きく姫さんと4名も替わりました。