平成17年度教員のための金融教育セミナー
1. 講演会 「生きる力と金融教育」
第4の資金調達法“転換社債”とは
ここからは、“週刊こどもニュース”用に準備していたのですが、実際には使わなかったテーマの“転換社債”について、少し紹介してみようと思います。
企業が資金を調達する方法には、銀行から借りる、個人投資家に社債を買ってもらう、株式を発行する、さらに第4の方法として“転換社債”があります。ここでは、ライブドアがニッポン放送の株買占めに使った800億円の調達方法だった、転換社債について紹介しましょう。
Convertible Bond、略してCBとも言われる転換社債は、株式に転換できる社債、会社の借金のことです。ライブドアはニッポン放送の株買占めで、転換できる社債の価格が変動するMSCB(Moving Strike Convertible Bond)というものを発行しました。これはライブドアが800億円分の転換社債を発行し、リーマンブラザーズという証券会社に買い取ってもらい、その800億円でニッポン放送の株を買い占めようとしたわけです。
リーマンブラザーズは、買い取った社債をライブドアの株に換えたのですが、少しずつ株に転換したため、株価は急な値下がりを起こしませんでした。株価が値上がりする際に少しずつ発行すれば、株そのものは値下がりせず発行できるのです。
株に換えるときは、株式市場での株価よりも一割安い値段で交換できる条件だったため、リーマンブラザーズとしては社債に金利がつかなくても、実際の株価よりも10%安い値段で交換でき、そのまま株に換えたため、株価の約10%の80億円ほどをまるまる儲けることができました。
さらにリーマンブラザーズは、ライブドアがMSCBを発行する日まで約20日もあったのを利用して、その分として580億円の“つなぎ融資”を行いました。そこでは、高い株価の時に売って安くなった時に買い戻す“カラ売り”という方法を使い、二つの方法で合計約100億円の利益を出したといいます。
フジテレビもニッポン放送の株を入手するために、大和證券MSBCから800億円の資金を調達したので、その結果、大和證券MSBCも同様の利益を出したといわれています。
このような転換社債を使う方法で、ライブドアのような新興企業が資金調達を行っています。経済新聞の公告を見ると、ライブドアが行ったような資金調達は増えつつあるようです。これからますます、会社が売り買いされるような時代になっていくでしょう。
ライブドア、楽天、ソフトバンクといったインターネット関連企業と呼ばれる企業の多くは、実は、儲かりそうな、または儲かっている企業を買収して、利益を上げる会社である側面も見えてきます。