金融教育ガイドブック~学校における実践事例集
ガイドブックの利用にあたって
今後の課題と展望
本書発行は学校における金融教育を進めるうえでの新たな試みですが、なおささやかな一歩に過ぎません。これを契機として学校における金融教育を一層進めていくにはまだいくつかの課題があります。
一つは、授業実践事例収集とその共有です。金融広報中央委員会は、本書に続いて『金融教育プログラム』(平成19年)、『はじめての金融教育』(平成21年)を発行しています。今後も全国各地での金融教育実践事例をできるだけ多くの先生方からお寄せいただけることを期待しつつ、当委員会としてもそうした事例の発掘に努めていきたいと考えています。また刊行物の発行とあわせホームページ上にもそれらを紹介することを通じて、タイムリーかつ利便性の高い情報提供に努めていきたいと考えています。
二つ目は、学校で金融教育を進めるにあたって活用可能な既存の副教材やセミナー等の情報を収集し、利用しやすい形に整理して学校に提供することです。多くの先生方は少ない時間で多くの課題への対応や指導の改善を進めなければなりません。それだけに、授業で活用できる既存の資料や題材があれば金融教育を進めやすくなると思われるからです。当委員会としてもそのような面で貢献をしていく必要があると考えています。
三つ目は、地域との関係や関係機関との連携を深めつつ、実践にあたっての環境作りを支援することです。金融広報中央委員会では平成16年度から地域ぐるみで金融学習に取り組んでいただくため、新たに「金融学習特別推進地区」制度を設けています。学校での金融教育を進めるにあたってはこうした制度を活用いただきながら地域の人と一緒になって取り組むことが重要です。また、そうした活動において地元の企業のみならず、関心を持つさまざまな機関・団体等の協力が得られればその力を厚く大きくしていくことができます。当委員会としてもそうした実践分野で相応の貢献をしてまいりたいと考えています。
四つ目は、児童生徒の実態に合わせた金融教育を進めていくため、全国的な規模で児童生徒を対象とした金融意識調査・金融知識調査を実施することです。金融教育に関しては実践事例が多くないだけに、児童生徒の金銭感覚や生活感覚のほか、金融経済知識等のレベルがどの程度か実態が十分把握されていません。そうしたデータベースが整えられれば、金融教育の実践にあたって有効であるばかりでなく、多くの保護者や先生方に金融教育の必要性について理解していただける契機となるのではないかと考えています。
この点に関し、金融広報中央委員会は、平成17年度および22年度に、「子どものくらしとお金に関する調査」を実施し、調査結果を金融広報中央委員会のホームページ上で公表しています。
五つ目は、以上のような実践事例の収集や調査の結果を踏まえつつ、わが国の実情に即した金融教育プログラムの体系化を進めることです。英米諸国のように、わが国でも金融教育が一つの独立した教育分野として位置づけられるかどうかはともかくとして、学習段階毎に期待される一定の到達水準の目処をスタンダードとして示すことによって、複数の学校段階を通じた連続的・継続的取り組みが可能となり、それによってより均質的で高度な金融教育サービスを提供することができるようになるのではないかと考えています。
こうした考えに沿って、学校における金融教育をより効果的に進めるための方法について詳しく取りまとめ、平成19年に『金融教育プログラム─社会の中で生きる力を育む授業とは─』として発刊しました。
多くの人たちの力を結集しつつ、わが国における児童生徒への金融教育が充実し、そして健全な社会人が育ち、そうした人たちが「活力と品格ある社会」を作り出してくれることを希望しつつ、当委員会は今後とも「学校における金融教育」の普及に全力を尽くしたいと考えています。
このたび、最新の情報に照らして、下記の改訂を行うとともに、「ガイドブックの利用にあたって」の関連する記述を見直しています。
- 「年齢層別の金融教育内容」(『金融教育プログラム─社会の中で生きる力を育む授業とは─』より)を別表2として収録
- 「学習指導要領における金融教育関連個所」を新学習指導要領に基づき作成し別表3として収録
- 金融・金銭教育研究校等の推移(P.11)、および画像データを改訂
なお、頁数等の関係から、今回は「教科書における金融教育に関する内容」(従前の別表3)を収録していません。
引続き、金融教育の実践事例集としてご利用ください。
平成26年6月
(注)2016年2月に『金融教育プログラム』(2007年2月発刊)を全面改訂しました。