金融教育ガイドブック~学校における実践事例集
ガイドブックの利用にあたって
1.学校における金融教育の必要性とその内容
(2)学校における金融教育の範囲
現在、「金融教育」という言葉はさまざまな意味合いで使われています。
代表的な例を挙げれば、「物やお金を大切にすることを通じて、正しい金銭感覚を養うこと」(金銭教育的な視点)、「経済・金融の仕組みや機能を理解すること」(経済教育的な視点)、「経済学的な考え方を基本に合理的な意思決定や社会問題を考える視点を養うこと」(経済学教育的な視点)、「家計の収入や支出内容を把握し、健全な家計管理と将来の生活設計力を身につけること」(生活設計的な視点)、「各種金融商品の内容やリスクについて学び、自己責任にもとづく合理的な資産運用の力を身につけること」(投資教育的な視点)、「消費者としての基本的な権利と責任を学び、各種の金融トラブルの未然防止や事後対応力を養うこと」(狭義の消費者教育的な視点)、「労働体験を通じて勤労の意味を理解するとともに、将来の職業選択等について考えさせること」(キャリア教育的な視点)等々です。
一般の社会人を対象として金融教育を考える場合には、それぞれの人が直面する関心分野に則して上記のそれぞれの範囲で金融教育を定義することがあってもいいと思われますし、その方が適当である場合もあります。しかし、児童生徒を対象として「学校における金融教育」を考える場合には必ずしもそれと同列に扱うことは難しいように思われます。むしろ、学校教育は児童生徒が社会人として健全に成長してくれることを念頭において行われるものだと考えれば、金融教育の範囲も、上で述べたさまざまな分野をほぼ包含した相当幅広い概念としてこれを定義する方が適切ではないかと思われます。したがって、このガイドブックにおいて金融教育という場合はかなり広義のものと受け止めていただきたいと思います。
(付)金銭教育との関係
金融広報委員会は過去40年にわたって金銭教育に取り組み、この間、全国で累計2,400以上の学校で実践研究を行ってきました。金銭教育はお金に関連した狭い教育ではなく、モノやお金を大切にすることを通じてお金や労働の価値を知り、感謝と自立の心を育てることによって人間形成の土台づくりを目指す幅広い教育です。このような理念は時代が変わっても決して廃れるものではありません。今回のガイドブックでもその財産を十分汲み取ったうえで、さらに経済の仕組みや個人としての生き方、実践的な消費者教育等を織り込んで金融教育を定義しました。したがって、金銭教育はこのガイドブックでいう金融教育のなかに当然含まれますし、金融教育はさらに幅広い内容を含むものであると理解していただきたいと思います。