金融教育ガイドブック~学校における実践事例集
ガイドブックの利用にあたって
1.学校における金融教育の必要性とその内容
(3)四つの分野
学校における金融教育を幅広く捉えるとしても多くの事例が漠然と並んでいては利用する方にとっても不便です。そこで各種事例を以下四つの分野に便宜的に分類しました。この分類は金融広報中央委員会が平成14年に発表した『金融に関する消費者教育の推進に当たっての指針(2002)』の中で提示した「金融理解度向上のための年齢層別カリキュラム(素案)」(上記「指針」の別紙8<本書別表1として再掲>)を参考としつつ、本書が実践事例集であるという性格と現状の社会の問題意識等を踏まえて組み直したものです。
四つの分類についてあえてその考え方を整理すれば、第1分野はいわゆるパーソナルファイナンスの分野、第2分野は経済や金融のしくみに関する分野、第3、第4分野は現在社会の注目を集めている二つの問題――金融に関する消費者トラブルの増加と若者の勤労意識の問題――に焦点をあてて独立の分野としたものです。なお、個々の実践事例を見ると、複数の分野の要素を含むものが大半であり、その意味で四つの分野は相互に関わりがあると考えています。
1.生活設計・家計管理に関する分野
この分野には、ものを大切にすること、我慢の気持ち、意思決定の理解と体得、計画を立てて消費すること、年齢相応の金銭管理の実践、貯蓄の意義と実践、ライフプランニング、預金・株式・債券・生命保険・損害保険の知識、各種金融商品の知識とリスク、リスクとリターン、ローンの仕組みなどの学習が含まれます。
2.経済・金融の仕組みに関する分野
この分野には、お金の機能、身の回りの生産消費活動、交換や市場の機能、比較優位、資本主義経済と株式会社の機能、金融市場・証券市場の仕組みと機能、中央銀行と金融政策、公共活動と税金、年金・健康保険・雇用保険・介護保険の仕組み、時事問題の理解などの学習が含まれます。
3.消費生活に関する分野
この分野では、欲望の制御、契約と自己責任、各種カードの機能、金利の意味と金利計算能力、借入れの注意点、携帯・インターネットを利用した取り引きとその留意点、消費者の権利と責任、消費者基本法、消費者トラブルの実情、トラブル処理にあたっての対処法、消費生活センターの役割などの学習が含まれます。
4.キャリア教育に関する分野
この分野では、労働の価値を知る、身の回りの仕事を手伝う、職場体験や職場訪問、起業トライアル、自分の将来について考える、進路決定のための情報収集、希望する職業の調査やそれを実現するための条件、職業選択と生活設計の結びつけ、意思決定にあたっての注意点などの学習が含まれます。
本書の初版を発刊した2年後の平成19年2月に、金融広報中央委員会は『金融教育プログラム─社会の中で生きる力を育む授業とは─』において、金融教育の定義と年齢層別金融教育内容を発表しました。すなわち、金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育であり、上記の四つの分野をさらに13項目に細分して、各項目の目標と小学校から高等学校の各学校段階において何を学ぶべきかを一覧表にまとめました(別表2として本書に収録)。