先生のための金融教育セミナー
2020年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
D キャリア教育に関する分野
中学校
「村上の魅力再発見」
(2年 総合的な学習の時間)
新潟県村上市立村上東中学校 白澤 直子 教諭
本校は新潟県北端に位置する自然豊かな村上市にあります。新潟県最大の面積を有する歴史ある城下町です。この実践を行うにあたり、教員の間で金融教育の4つの分野の共通理解を図りました。そのうえで、本校では、特にキャリア教育の分野と関連づけながら、村上の魅力を再発見し、アイデアを実現しようとする生徒を育てたいと考えました。
キャリア教育における地域学習を小学校の学びの履歴から考えると次のようになります。子どもたちは小学3年生から5年生の間に、村上大祭や名産品の村上茶、木彫り堆朱、鮭など地域の魅力を学びます。6年生になると村上の未来図を考え、成果を町づくり協議会の前で発表します。中学1年生では商店を訪問し、地元の人々の情熱に触れます。中学2年で、今回ご紹介する「村上の魅力再発見」というテーマで地域の未来を考えます。小学6年での活動内容と似ているように見えますが、金融教育の視点を取り入れ、実現可能性を追求する点が大きく異なります。
「村上の魅力再発見」の活動では、まず生徒一人一人が村上市の魅力再発見プランのアイデアを考えました。外部の講師を招いての学習を経て、アイデアを実現させるための具体的な方策を考え、「人・もの・お金・情報」の4つの観点からそのアイデアの完成度を高め、企画書を作成しました。特に、お金が村上市を循環することで、市が経済的に豊かになることを意識させました。企画書は、「セールスポイント」、「アイデアの説明」、「必要な物と費用」の3つで構成されています。企画が赤字にならないよう、費用を細かく計算しました。生徒からは「廃校にレストランをつくり、地産地消の給食を提供する廃校再生計画」、「村上の鮭を釣ろうプロジェクト」といった企画書が出されました。
この実践の成果は二つあります。一つ目は、小学校と中学校が連携し、金融教育の現実的な内容を加味することでレベルアップした学びができたことです。二つ目は、地域のことを真剣に考え、経済的な視点も取り入れながら考える生徒の姿に大人が心を動かされ、アイデアが実現する可能性が高まるということを実感できたことです。経営の視点を通して中学生と大人のつながりを強くすることができ、ダイナミックな学びを展開することができました。生徒の考えたアイデアがもし地域で実現すれば、生徒の達成感や自己有用感が一層高まると思います。地域と学校がwin-winの関係になることが期待されます。