先生のための金融教育セミナー
2020年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
B 金融や経済の仕組みに関する分野
高等学校
「高齢者を支える仕組み」
(1年 家庭総合・生活科学)
山梨県立北杜高等学校 矢崎 香織 教諭
本校は普通科・総合学科の2学科による総合高校です。今回ご紹介するのは家庭総合「高齢者を支える仕組み」における実践です。「年金制度」、「介護保険」、「介護サービス」の3時間のうち、「年金制度」の授業についてご紹介します。
高齢者を支える仕組みについて生徒がどのくらい知っているのかを把握するために、また、生徒にこの課題について関心を持たせるために、問題を出すことから始めました。「高齢者とは何歳以上の人のことを言うでしょうか」、「介護保険は何歳から保険料を払うと思いますか」など基礎的な問いかけでしたが、生徒にとっては難しかったようです。回答の集計には、以前はマークシートなどを使用していましたが、今回ICTを活用しました。アンケート機能を使って出題、回答状況の確認、集計が簡単にできる仕組みがあり、そうした仕組みを使うと、効率的に調査ができると思います。
この結果を踏まえ、自分だったらどんな老後を送りたいかという質問を投げかけ、老後に必要なお金や年金の仕組みについて学び、国民年金と厚生年金の違いなどについても理解を深めました。また、学生が国民年金を納める余裕がないときにはどのような制度があるのかを伝えたいと考え、学生納付特例の申請用紙の実物に記入してみるという学習を行いました。
また、金融広報中央委員会の『これであなたもひとり立ち』のワークシートを使い、給与明細、求人票について指導しました。初めて求人票を見る生徒も多く、求人票から様々なことが読み取れることを理解できたようです。給与明細のポイントとして、厚生年金や健康保険が差し引かれることを知り、手取り金額がいくらになるかを把握しました。
この授業を通して、生徒は年金制度への理解を深めただけでなく、職業によって公的年金の種類が異なること、公的年金によって高齢者が支えられていることなどを理解することができました。高校生が年金や介護を現実のこととして考えるのは難しい部分がありますが、自分の進路やライフプランとつなげて考え、理解することができたと思います。家庭科の時間数の中で教えられる内容には限界があります。また、生徒は一度に大きく変化するのではなく、少しずつ成長していきます。他教科とのつながりを持たせながら、継続的に金融教育を行うことが大切だと感じました。