起業を考える ―多様化する働き方の選択肢―
(Q3 起業する場合の組織形態)
Q3 どんな組織形態で起業するのがいいのでしょうか
A3 経営目的や社員数によって、適した組織形態は異なります
起業を考える際、個人事業と法人のどちらにするのかを決める必要があります。
個人事業は、税務署に開業届を提出するだけと手続きが簡単です。
最初は1人で小さく事業を起こし、市場調査をしたいという場合は個人事業から始める方法もあるでしょう。
法人の場合、法務局への登記費用などがかかるものの、社会的な信用力や税制面のメリットは大きくなります。
法人には法人税、個人事業主には所得税が課税されますが、法人の税率は利益が増えても原則一定なのに対し、個人事業主は利益が増えるほど税率が高くなります。
そのため、事業が拡大し利益が増えてくると、法人の方が税制面で有利になります。
また、法人には、事業活動により得られた利益を構成員(株主など)へ分配する「営利組織」と、構成員へ利益分配せず、団体の活動目的のために充てる「非営利組織」があります【図表4】。
営利組織 | 非営利組織 | |||
---|---|---|---|---|
株式会社 | 合同会社 | NPO法人 | 一般社団法人 | |
出資者の名称 | 株主 (設立前は発起人) |
社員 | 出資の必要はない | 出資の必要はない |
必要な株式・社員の人数 | 1人以上 | 1人以上 | 10人以上 | 2人以上 |
設立費用※ | 約24万円~ | 約10万円~ | 数千円~ | 約15万円~ |
意思決定機関 | 株主総会 | 社員総会 | 社員総会 | 社員総会 |
- 設立費用は登録免許税や定款用の収入印紙代など実費。必要な費用は法人の種類などにより異なる。
- (出所)
- 監修者作成
主な営利組織としては、「株式会社」と「合同会社」があります。
株式会社は社員以外から広く出資を求めることができるのに対し、合同会社は社員が出資者である点が、大きく異なります。
合同会社は設立費用が安く済む一方で、資金調達の方法が制限されます。
事業を拡大していきたい場合には、株式を発行することで、多くの投資家から出資を募ることができる株式会社の方が有利と言えるでしょう。
一方、非営利組織には主に「NPO法人」と「一般社団法人」があります。
NPO法人は事業分野に制限があり、原則、都道府県知事等の認証も必要ですが、一般社団法人には、目的や事業の制限がなく、所轄庁の認証も必要ありません。
ただし、設立後に税制優遇などを受けやすいのはNPO法人です。
それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、設立形態に迷ったときは税理士などの専門家に相談しましょう。