Hello, フィンテック!
第2話 キャッシュレス決済のいま(その1)
「○○pay使えます」。お店の入り口で、こんなポスターやのぼりを目にする機会が増えました。レジには沢山のキャッシュレス決済のロゴマークが並んでいます。
2018年から19年にかけて、様々なキャッシュレス決済サービスが始まり、使えるお店もどんどん増えました。決済サービス事業者や政府によるポイント還元キャンペーンも普及の後押しとなり、キャッシュレス決済が身近なものになっています。
スマホで決済
キャッシュレス決済に使う道具も変わってきています。これまではクレジットカードやプリペイド式の電子マネーなど、プラスチック製のカードを使う方法が主流でした。最近では、スマートフォンを使ったキャッシュレス決済が増えてきています。
スマートフォンに埋め込まれたICチップを使って端末にタッチして支払う方法や、バーコードやQRコードをお店に示したり、逆にスマートフォンのカメラで読み取ったりしてお金を払う方法です。
スマートフォンは登場して10年もしないうちに現代人の生活スタイルを大きく変えましたが、お金を払うという日常体験も変えつつあります。
普及を数字でみてみると
どれぐらいの買い物がキャッシュレス決済で行われているのか統計をみてみましょう。
図表1が示すように、金額でみるとクレジットカードが主力で、2018年には67兆円がクレジットカードによって支払われています。そして、クレジットカードの利用額は近年伸び続けています。
アンケート調査などで示されているように、ネットショッピングではクレジットカードが一番よく利用されているようですが、そのネットショッピングが拡大していることが理由ではないかと思われます。
これに対し、電子マネーは5.5兆円程度と意外と少ないです。現時点で利用可能な統計では、最近登場してきたQRコード決済などの新しいタイプのキャッシュレス決済は含まれていませんが、クレジットカードが現在のキャッシュレス決済の主力であることに変わりはなさそうです。
この70兆円を上回るキャッシュレス決済ですが、スーパーマーケットの売上高が年間で13兆円、百貨店で6兆円ですから、相当な金額です。
日本はやっぱり現金社会?
しかし、世界と比較すると、日本のキャッシュレス決済の利用度はそう高くはありません。個人消費額全体を名目GDPの統計でとらえて、これに対するキャッシュレス決済の割合を計算してみたものが図表2です。
右端にいる日本は約2割。一方で、他の先進国は5割とか、なかには9割を上回る国もあり、先進国の中では日本はまだまだ現金社会だといえそうです。
銀行預金を使った支払いもキャッシュレス
ただし、この統計では捉えきれていないキャッシュレス決済があります。銀行預金を使った支払いです。公共料金の自動引き落としや、預金口座から送金する際には現金は使いません。昔からあるのであまり意識されることがないのですが、これらもキャッシュレス決済の一種です。
日本は、ほぼ全ての成人が銀行口座を保有しており、銀行預金を使った便利な支払い方法が早くから発展、普及してきました。ちなみに、15歳以上の銀行口座の保有率をみると、日本は98%、ユーロエリアは95%、米国は93%となっており、日本が一歩リードしています(2017年時点)。
残念ながら、銀行預金を使った決済の国際比較ができるような統計はありませんが、預金による支払いを含めると日本のキャッシュレス決済の割合は相応に高くなることを示唆するような調査もあります。
日本が現金社会だというのは、「店頭での支払いに現金がよく利用されている」ことを指しているのかもしれません。そして、キャッシュレス決済の普及は、店頭でのお金の支払いという私たちの日常生活を変えつつあるということなのでしょう。
なぜ今キャッシュレス決済?
ところで、なぜキャッシュレス決済が急に注目されるようになったのでしょうか。
大別すると、1)現金決済という社会システムを支えてきた金融機関等の事情、2)新しい決済サービスを積極的に提供する事業者の事情、3)キャッシュレス決済に対応する店舗側の事情、4)便利なサービスを享受したい消費者側の事情があります。
次回は、この4つの事情を順にみていきます。
(2020年1月)