平成13年度「全国金銭教育協議会」
「総合的な学習の時間における金銭教育の進め方」
~金融に関する消費者教育の視点から~
実りある学習とするために
総合的な学習の時間を実りあるものとするためのヒントとして、もう一つの事例をご紹介します。CMを作ろうというテーマの学習のことですが、なかなか興味深いものです。
子どもの関心を引く創造性のあるおもしろいテレビCMなどで動機づけをしたあとに、クラスをいくつかのグループに分け、CM会社を作らせたのです。そして移動教室の時間を使い、現地のお店に各グループごとでCMを作らせてもらうお願いをするとともに、取材もするわけです。学校に戻ってからはお店の人とファックスやメールでやりとりしながら、文章はどうしようか、どういうレイアウトにしようか、値段の文字はどこにおいたらいいかと考えるのです。
おまんじゅう屋さんのCMでは、子どもたちがこういう文章を作りました。「自家製の小豆でつくったあんこ、軽く酸味のきいた皮、伝統を守りつづけて197年」。うまい文章ですよね。でも関心が向くと、自家製の小豆でつくったあんこ?おかしいんじゃない、という疑問が子どもたちから出てくるのです。
このお店は小豆畑は持っていないから、この文章は違うのではないか。「特別につくらせた小豆でつくった自家製のあんこ」に訂正します。どうでしょうか、国語の授業で詳しく読みなさいといっても読み解けないのに、切実な問題となると微妙なところに気づきます。
このように、テーマのとらえ方とその進め具合で、金銭教育であるとともに、国語の文章作成や読解力をつける学習にもなっていくのです。こういう学習が進みますと、子どものほうから広告代理店の仕事に興味が広がったり、何気なく見ていた広告にも目がいくようになります。
例えば「690円」と大きく値段が表示されているものと、大きく広告を打っているにもかかわらず、一番下に小さく「20万円」と値段が出ているものがあることに気づいたりします。値段をとるか、理念をとるか、というCMの方針の差異に気づくようになります。社会やものの価値が見えてくるんですね。つまり相対的な価値だけではなく、絶対的な価値観というものも感じていくわけです。
このCMをテーマとした学習も、単に広告を作って、教室に並べて、どこの作品が一番といって終わりにしてしまったら、総合的な学習の時間は活動するだけで、学力低下を招くという批判を受けかねません。それを防ぐためにも、子どもが問題意識をもち、自ら判断し、解決していくことができるような取り組みの工夫が求められていると思います。
最後にまとめとして、今の社会の変化のなかで子どもが置かれている現状を考えますと、金銭教育というものは本当に大切であり、これをきちんとやっていかないと、子どもは大きな不幸に見舞われてしまうかもしれません。
真に豊かな生活を自分たちで獲得していくために、先生方におかれましてはさまざまな情報を収集していただき、各学校でどうするかという考えを作り出して、教育課程のなかに位置づけていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。