平成13年度「全国金銭教育協議会」
「総合的な学習の時間における金銭教育の進め方」
~金融に関する消費者教育の視点から~
総合的な学習の趣旨と特色
本日のテーマに基づき、総合的な学習の時間とはどのようなものなのか、金銭教育の必要性と重要性、それを教育の中にどのように取り入れていけばよいのか、の三つの視点からお話させていただきます。
まず、総合的な学習の時間というものは何かについてお話したいと思います。総合的な学習の時間は、小学校の高学年であれば年間授業時間数は110時間と決められていますが、国語や算数のような教科にある内容や目標は組み込まれておらず、その中身は各学校の裁量にまかされているというのが一番の特色です。
その学校の子どもの実態や保護者の願い、あるいは先生方の考えを踏まえ、各学校において最も必要な教育を考え出すということです。学校の主体性が強く求められているわけであり、クリエイティブな教育であります。これを大変だと消極的にとるか、おもしろいと感じて能動的、主体的にとるか、学校の姿勢や意欲が大いに関係してくるのではないかと思います。
総合的な学習の時間の中身を決める際の参考になるものとして、四つのポイントがあります。一つは、総合的な学習の導入趣旨を十分に理解することです。学力低下が懸念されている中で、国語や算数などの教科の時間を減らしてまで総合的な学習の時間を設けたのは、各学校が地域の実態を踏まえて特色ある活動を展開することが、極めて重要であると考えられたからです。
また、総合的な学習の時間は、既存の教科の枠を超えた横断的・総合的なものであるため、自ら学び、自ら考えることを通して生きる力を育むことを可能にします。
生きる力というのは、私流にいえば、頭と心と体が勤勉に働くということです。頭の勤勉とは、よく考え、よく判断し、よく表現して頭を使うことであり、心の勤勉とは、ものに感じ、感動し、不思議に思うことです。そして体の勤勉とは、不思議だなと思ったら本も読むけれども、体を使って現場に出て直接見てくる、聞いてくる、やってみる。このようなことが生きる力です。
これまでの教育は、各教科で学んだことを子どもの中で総合化させて、生きる力を育むという理念に立っていました。しかし、社会の変化とともに、これが難しくなっているという現状があり、総合的な学習の時間が導入されたのです。このような導入趣旨をよく理解することがまず必要だと思います。
二つめは、総合的な学習の時間のねらいを踏まえることです。学習指導要領には、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることと、学び方やものの考え方を身につけ、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにするということが示されています。これらのねらいを踏まえるということです。これは金銭教育と重なることがたくさんあるのではないかと思います。
三つめは、この時間に取り上げる学習活動についてです。学習指導要領には、子どもの興味、関心に応じた課題、例えば国際理解、情報、環境、福祉、健康などのいわゆる横断的かつ総合的な課題、地域や学校の特色に応じた課題といったものが示されています。これはあくまでも各学校で何を取り上げるかを考える際の参考であり、視点であるということです。ですからここに示されてないことを取り上げることも大いに結構だと思います。
四つめは、学習指導の創意工夫があげられます。総合的な学習の時間を実施するにあたっては、できるだけ体験的な学習を取り入れたり、地域の人と協力した指導を工夫してみたり、ティームティーチングを実施したりすることが重要です。
以上が総合的な学習の時間の特色とねらいの概要ですが、申し上げるまでもなく、金銭教育はこの時間に入れるべき重要な内容の一つになるはずです。