第43回 全国婦人のつどい
「新生活と貯蓄」
特別講演(要旨)「金融新時代を賢く生きる」
IТ革命の進展にみる銀行のあるべき姿
銀行の最近の経営戦略で、もうひとつ目立つ動きがIT革命への対応、端的にはインターネットの導入です。預金者がどこでもいつでも取引できるインターネット・バンキングの普及によって、地理や時間の制約が緩和され、金利その他の取引条件をすばやく検索できるようになります。
このため預金者の金融機関の選択基準が変わる可能性があります。また、手間暇かけずにスピーディに取引ができるので、例えば、金利の有利な銀行に資金がシフトするといったことが起きやすくなるとの指摘もあります。なお、インターネット銀行でも、預金保険の対象になっているという点では通常の預金と同じです。
また、コンビニを経営している会社やインターネットのプロバイダー業務を行っている会社ないしその親会社による「異業種の銀行参入」も、見逃せない新しい動きです。
ちなみに、現在の大手銀行の多くは、江戸時代に海運、運送業、呉服商などのいわば異業種が両替商を営み、それが合従連衡(がっしょうれんこう)を繰り返しながら、今日に至っています。海運、運送業など物流は必然的に資金の動きを伴いますし、これらの業者は全国各地に物流拠点を有しています。このことが両替商に進出する最大の背景になっていたわけです。
その意味では、コンビニやインターネット・プロバイダーなどネットワークを持っている企業が銀行業に進出することは、不自然とはいえません。インターネットといった先進的な技術が確かに大きな役割を果していますが、やはり銀行業の基本は現実のものであれ、バーチャルなものであれ、ネットワークだと思います。
このようないわゆる異業種の銀行参入は、当然、銀行間の競争激化につながる動きです。そして、預金者にとっては高度の取引を安く利用できるということであり、メリットがあります。同時に、よい銀行はますます取引先の支持を受け、そうでないところは取り残されるという状況が強まり、銀行の優勝劣敗が進んでいく可能性があります。だからこそ、セーフティネットを強化しなければならないということになります。
こうした金融新時代における賢い利用者とは、それぞれのライフスタイルに最も合致した金融機関、商品を賢く選ぶということではないでしょうか。
多様化といっても、必ずしも窓口がバラバラになるというわけではありません。むしろ、多様な商品をひとつの窓口で買えるようになってきたと言ってよいように思います。それをうまく活用していくことが、ひとつのポイントであるように思います。
最後に預金者等の自己責任の問題ですが、これは今後の新しい金融時代において基本となるべき重要な考え方です。
しかし、先程から申し上げているとおり、預金、証券、保険には、それぞれの特性に応じてセーフティネットが設けられています。その内容をよく理解すれば、過度な不安感を持つ必要はありません。こうしたことを認識しておくことが、金融新時代を賢く生きる第一歩ではないかと思います。