第43回 全国婦人のつどい
「新生活と貯蓄」
特別講演(要旨)「金融新時代を賢く生きる」
金融機関の健全性回復に向けて
しかし、本当に重要なのは金融機関の破綻が起きないことです。多額の預金や借入れを行っている企業などにとっては、取引先金融機関が破綻すると何がしか痛手を蒙(こうむ)ることは不可避です。その意味でも、銀行経営の健全性回復は非常に重要な課題です。
このため政府は、ペイオフ解禁までに全体としての金融システムの健全性を取り戻すべく、まず個々の金融機関の経営実態の正確な把握に努めています。その結果、損失への備えである資本が不足し、実質的に債務超過と認められた場合、先送りせず直ちに破綻処理を断行するという方針を採っています。
一方、基本的に存続可能で、債務超過ではないものの資本が不足している銀行に対しては、抜本的な経営の刷新を求めつつ、国の資金を資本として注入し、資本基盤の強化を行っています。
もちろん、それだけでわが国の金融システムの課題がなくなる訳ではありません。これからペイオフ解禁までの1年間で金融機関の健全性が回復したとして、その状況を維持していかなければなりません。
金融機関の経営内容は、ややオーバーにいえば日々変化しており、行政の検査などのチェックだけでは不十分です。この問題に対しては、金融機関の経営内容を可能な限りガラス張り、つまり情報開示して、幅広い利用者、特にプロの市場関係者、株主、あるいは専門のアナリスト等からの目でチェックしていくことが有効な方法になります。
市場によるチェックが機能するようになると、金融機関はプレッシャーを感じて、例えば無理な不動産融資に走るとか、リスクの高い有価証券を体力以上に保有するといったことがなくなります。
ただ、その場合でも金融機関の破綻を完全に無くすことはなかなか困難かもしれません。実際、米国では昨年までは経済が順調に拡大し、金融機関の経営状態も極めて健全とされてきましたが、破綻は起きています。
つまり金融システム全体としては健全でも、競争社会においては、個々の金融機関の破綻は起こり得るものだといわざるを得ないのです。だからこそ、しっかりとした預金保険制度を作ったということです。