貯蓄・生活シンポジウム 2000
金融新時代を暮らす~ペイオフと私たちの暮らし~
パネルディスカッション
(3) 多様化する商品やサービスを選択するポイント
田部 IT革命の急速な進行に伴い、金融の分野にも大きな変化が起こっています。iモードやインターネットでいろいろな金融商品が買えるようになったとか、沢山の商品やサービスが登場し、宣伝も活発に行われています。その一方で、消費者としては何を選んだらよいのか、どのように利用したらよいのかという戸惑いもあります。
翁 金融の様々な動きを四つにまとめると、まず一つ目が金融商品の多様化です。これは規制緩和が背景にあり、株式投信や保険商品などについてもいろいろな商品が販売されるようになりました。
例えば、株式投信を挙げると、IT関連の企業にだけ投資するとか、中小のベンチャー企業にだけ投資するとか、いろいろな特徴を持ったものが種類豊富に登場しています。保険商品についても同じです。女性向けとか、血圧の高い方でも入れるものとか。つまり、金融機関の創意工夫が凝らされる時代になってきたといえます。
二つ目がデリバリーチャネルの多様化。デリバリーチャネルとは、金融商品の提供ルートという意味です。
例えば、昔は銀行や証券会社の支店が唯一の顧客と行員、または社員との接点でした。しかし、今はインターネット・バンキングの増加をみてもわかるように、わざわざ銀行の支店に行かなくても済むようになっています。このように、テレフォンバンキングやインターネットバンキングといった、さまざまなルートを通じて金融機関が顧客と接するようになってきています。
三つ目が新サービスの登場。典型的なものがデビットカードです。銀行のキャッシュカードを使って買い物をし、直接銀行預金から代金を引き落とすことが可能になっています。
四つ目はサービス提供主体の多様化。流通業やメーカーによる銀行業への参入が相次いでいます。こうした新規参入が増えていけば、新しい発想やビジネスの展開が期待でき、金融業界全体が活性化していくことになります。うまく使えば、顧客にとっても非常に利便性の高いものになっていくと思います。
田部 日本の金融資産の構造が変わっていく可能性もありますね。
原田 日本の金融資産構成は、預貯金が54.7%という実に大きなウエイトを占めています。アメリカはわずか10.1%。その代わりに株式とか投資信託の比率が非常に高く47.8%にもなっています。日本はわずか10.4%に過ぎません。
経済全体の政策的な視点からいえば、日本では金融機関に集中しているお金が株式とか投信を通じて、産業界やベンチャービジネスに流れて行くことが望ましいといえます。
しかし、この問題は個人の生き方で決めていくべきことです。自己責任原則を私なりに解釈すれば、資産運用は自分がどのような生き方をしていくかということからスタートすべき問題だと思います。
金利は安くても銀行に入れておいて、趣味や教養で心が豊かな生活を送るのだという生き方もあるでしょう。あるいはいろいろな金融商品にチャレンジして、金融資産を効率的に増やすという生き方もできます。
要はハイリスクに対してはハイリターンであり、ローリスクに対してはローリターンであるということを踏まえ、主体性をもって、自分の生活設計に合う金融商品を選ぶことが大変重要になってくると思います。