所得税アラカルト
4. 株式の売却と税金
株式の売却益は、他の所得と区分して税金を計算する申告分離課税です。
株式売却益の課税の仕組み
上場株式等及び上場されていない株式等(一般株式等)の売却益に対する課税は、それぞれ株式の売却によって得た収入金額から、株式の取得にかかった費用(取得費)と売買に関する手数料などの経費を差し引いて課税される所得金額を計算し、他の所得とは分離し、一定の税率をかけて計算します(申告分離課税)。
株式売却益に適用される税率
上場株式等の売却益及び一般株式等の売却益それぞれに対し、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率が適用されます。
上場株式等の範囲
上場株式等とは、①上場株式、②店頭管理銘柄、③新株予約権付社債、④公募投資信託の受益権、⑤国債及び地方債などをいいます。
「株式等」、「上場株式等」及び「一般株式等」の意義(国税庁HPへリンク)
株式の売却損の取り扱い
上場株式等の売却損
他の上場株式等の売却益と相殺後、申告分離課税を選択した上場株式等の配当や収益の分配、利子などに係る配当所得及び利子所得と損益通算をすることができます。また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等の売却益および上場株式等の配当などに係る配当所得及び利子所得から繰越控除することができます。
一般株式等の売却損
他の一般株式等の売却益と相殺後、いずれの所得とも損益通算することができません。
特定口座と一般口座
投資をする人が金融機関に「特定口座」を開設した場合(原則として、1金融機関につき1口座に限られます)に、その特定口座内における上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額については、特定口座外(一般口座)で譲渡した他の株式等の譲渡による所得と区分して計算します。
特定口座を選択した場合
特定口座に預け入れた株式を売却した場合、本人に代わって金融機関が上場株式等の譲渡所得の計算を行い、その年1年間のすべての取引について「年間取引報告書」を発行しますので、これを使って簡単に確定申告をすることができます。特定口座では譲渡益について、源泉徴収制度の「あり」と「なし」のどちらかを選択することができます。
源泉徴収の「あり」を選択すると、売却して利益が出る度に、所得税と住民税を証券会社が計算して源泉徴収し、損失が出た場合には既に徴収されていた税額を限度として金融機関が還付まで行いますので、確定申告をする必要はありません。源泉徴収ですべての課税関係が終了しますので、控除対象配偶者や扶養親族となるかどうかの判定をする場合の合計所得金額にも含まれません。ただし、年間を通じて損失の方が多かった場合には、別途、確定申告をすることになります。
源泉徴収の「なし」を選択した場合には、金融機関が発行した「年間取引報告書」を添付して、自分で確定申告を行い、自分で所得税と住民税を納付します。
一般口座を選択した場合
一般口座に預け入れた株式を売却した場合には、取引をした本人が、株式の銘柄ごとにその取得費を確認し、譲渡益を計算して確定申告しなければなりません。
非課税口座内等の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税措置(NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA)
成年である居住者等が、非課税口座に非課税管理勘定を設けた日の属する年の1月1日以後5年以内に一定の契約に基づく譲渡をした場合において、配当等と譲渡益は非課税、譲渡損はないものとされます(NISA)。また、非課税口座に累積投資勘定を設けた日の属する年の1月1日以降20年以内に一定の契約に基づく譲渡をした場合において、配当等と譲渡益は非課税、譲渡損はないものとされます(つみたてNISA)。NISAとつみたてNISAとでは、非課税期間が異なるほか、NISAでは投資方法について制限がないのに対して、つみたてNISAではあらかじめ定めた銘柄に定期的に継続して投資しなければならず、投資できる金融商品も異なっています。1年の間に両方を同時に利用することはできません。
未成年である居住者等が、未成年者口座に非課税管理勘定を設けた日の属する年の1月1日以降5年以内に一定の契約に基づく譲渡をした場合において、配当等と譲渡益は非課税、譲渡損はないものとされます(ジュニアNISA)。
特定管理株式のみなし譲渡損失(紙くずとなってしまった株式の損失)と確定申告
通常、所有していた株式が発行会社の破綻によってその価値がなくなってしまった場合の損失については、譲渡をして譲渡損失が出たわけではありませんが、一定の要件の下に、これを「みなし譲渡損失」として取り扱うことができます。証券会社では、この上場廃止になった株式を「特定管理口座」に移し、価値を失った株式に係る証明書を発行しますので、これにより株式の譲渡損失とみなして他の株式の譲渡益と通算し、確定申告を行うことができます。
気をつけなければならないのは、上場廃止となっただけでなく、その株式の発行会社が解散し、精算結了した場合や、破産手続開始決定を受けたことなど、一定の要件に該当しなければ、この特例の適用がないことです。
上場株式等の譲渡損失の繰越控除
上場株式等を譲渡して損失が出た場合には、他の上場株式等の譲渡益から差し引き、さらに上場株式等の配当等と損益通算することができますが、譲渡損失の方が上回ったときは、確定申告をすることによって、この損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができる制度があります。この制度は、上場株式等の譲渡損失が発生した年以後、毎年確定申告をしなければ適用されません。特定口座で源泉徴収「あり」を選択している場合であっても、損失を繰り越すには確定申告をすることが必要です。