所得税アラカルト
6. マイホームの譲渡・取得と税金
特例を利用する人はたとえ無税となった場合でも確定申告をお忘れなく!
マイホームの譲渡と税金
土地や建物等の不動産を売った場合には、譲渡収入金額から取得費用(買ったときの値段をいい、分からないときは譲渡代金の5%とすることもできます。)と譲渡費用(印紙代・仲介手数料・測量費など、その譲渡のために直接かかった費用)を差し引き、残りの譲渡益に対し他の所得と分離して、所得税や住民税がかかります。
マイホームの譲渡の場合には、特に税の負担に配慮して、さまざまな特例が定められています。
居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームの譲渡益から3,000万円を控除する制度で、次の要件をクリアすることが必要です。
- 居住用家屋又はその家屋と敷地の譲渡であること
- 住まなくなってから3年目の年末までに売却すること
- 売却する相手は配偶者のほか特定の親族や特殊な関係のある法人でないこと
- その年の前年、前々年にこの特例を受けていないこと
- 税額がゼロとなっても必ず申告をすること
低率分離課税の特例
その年の1月1日現在で所有期間が10年を超えたマイホームの譲渡で、上記の3,000万円控除と同様の要件に当てはまるときは、税額を通常よりも低い税率で計算する特例を受けることができます。この特例は、上記の3,000万円特別控除と併用することもできます。
課税長期譲渡所得金額 | 税額(注) |
---|---|
6,000万円以下 | 課税長期譲渡所得×(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%) |
6,000万円超 | (課税長期譲渡所得-6,000万円)×(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)+600万円 |
買い換えによる譲渡損失の繰越控除
住宅ローンの残っているマイホームを買い換えた場合に生じた譲渡損失を、その譲渡した年だけでなく、翌年以降の3年間にも繰り越して、所得から控除することができるという制度です。住宅取得資金の贈与の特例とは併用できませんが、住宅借入金等特別控除の特例とは併用することができます。
繰越控除の要件は、次のとおりです。
- 旧マイホームの所有期間5年超、かつ、住宅ローンとして10年以上の残債があること
- 新マイホームに買い換えの翌年末までに住むこと
- 旧マイホームの敷地面積が500平方メートル以内、かつ、新マイホームの床面積が50平方メートル以上であること
- 売却の相手が配偶者のほか特定の親族や特殊な関係にある法人でないこと
- 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
その他の特例
このほか、相続により親や祖父母が居住していたマイホームを取得した場合の買換えの特例や所有期間が10年を超える特定の居住用資産の買換えの特例などがあります。
マイホームの取得と税金
住宅ローン等を利用してマイホームを新築、購入、又は増改築等した場合で、一定の要件に当てはまるとき、所得税については「住宅借入金等特別控除」を受けることができます。
一口メモマイホームの取得に関する他の税金
マイホームの取得に関する税金は、所得税以外に、次のようなものがあります。
- 贈与税
平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間に、父母又は祖父母からマイホーム取得資金の贈与を受けた場合に、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。また相続時精算課税の贈与の特例に加え、住宅資金特別控除の特例があります。 - 印紙税
不動産業者から不動産を買うときの売買契約書、銀行にローンを申し込んだときのローン契約書等には収入印紙を貼って消印します。印紙が貼ってなくても、契約の効力には影響はありませんが、本来の印紙税額の3倍の過怠税が課されます。 - 消費税
土地の売買には消費税はかかりませんが、不動産業者から購入する家屋や仲介手数料には10%の消費税がかかります。なお、個人同士で売買する中古家屋には課税されません。 - 登録免許税
不動産を登記するときには、登録免許税がかかります。家屋については、新築したときの保存登記、買ったときの所有権移転登記、抵当権の設定登記など、それぞれのケースに応じ、不動産の価格に税率を掛けて計算します。
マイホームの場合には軽減の特例があります。 - 不動産取得税
住宅用の家屋を取得した場合や、マイホームを建築したときの敷地については、その取得した日から60日以内に「不動産取得税の減額申告書」を都道府県の地方事務所に提出することを要件として、軽減される特例があります。