所得税アラカルト
5. 給与所得者の税金 ―源泉徴収と年末調整―
給与所得者の年収と、課税される所得金額とは違います。
所得税は申告納税制度(納税者自身が、税額を計算し自主的に申告して納付をする制度)をたてまえとしていますが、さまざまな所得の中には、その支払者が支払う金額から税金を差し引きして国に納める、いわゆる天引きの方法によって納めるものがあります。これを源泉徴収制度といい、給与所得者の場合にはこの制度が適用されます。
普通給与の課税の仕組み
賞与以外の普通給与を受け取る場合には、給与の支払者(勤務先)で所得税を計算して源泉徴収します。
この場合の所得税は「給与所得の源泉徴収税額表」によって計算しますが、税額表には、月額表と日額表があり、月額表には甲欄・乙欄、日額表には甲欄・乙欄に加えて丙欄という区別があります。月額表と日額表は、給与の支払いかた(月ごと、毎日など)によって使い分け、それぞれ、あらかじめ勤務先に扶養控除等申告書を提出している人には甲欄を、そうでない人には乙欄を適用して計算します。なお、日雇労務者の場合は、日額表の丙欄が適用されます。
賞与の課税の仕組み
その賞与の支給を受ける月の前月に普通給与を受け取っている場合には、その普通給与の金額と扶養家族の数により、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に定められている税率を賞与の金額(社会保険料等の金額を差し引いた残りの金額)に掛けて計算した所得税が差し引かれます。
なお、前月に支給された普通給与がない場合や、前月の普通給与の10倍以上の賞与を受け取る場合などには、「給与所得の源泉徴収税額表」の月額表を用いた、別途の特別な計算方法が定められています。
年末調整の役割
給与の支払者(勤務先)は、普通給与や賞与について前記のような計算を行った結果、その年最後の給与を支払うときに、従業員各人ごとにその年の給与の総額を計算し、その給与総額についての所得税を計算し直します。その税額と既に源泉徴収した税額とを比較して、足りないときは最後の支給額から徴収し、多すぎたときは最後の支給額で調整します。これを年末調整といい、大多数の給与所得者は、この手続で課税関係は終了します。
ただし、給与の金額が2,000万円を超える人については、勤務先で年末調整が行われませんので確定申告をする必要があります。
住宅借入金等特別控除を受ける場合、控除を初めて受ける年だけは確定申告をすることが必要ですが、2年目からは勤務先の年末調整で還付を受けることができます。
給与所得者の確定申告
確定申告をしなければならない人
給与所得者であっても、①給与の金額が2,000万円を超える人や、②2か所以上から給与を受け取っている人、③給与所得以外の所得(例えば、原稿料や満期保険金など)の合計額が20万円を超える人は、確定申告をしてその年の所得税の精算をしなければなりません。
確定申告をすれば税金が戻ってくる人
雑損控除、医療費控除や寄附金控除を受けようとする人は確定申告をしなければ税金の還付を受けることができません。
給与所得者の収入金額(年収)と所得金額
給与所得者の場合、所得税課税の対象となる「所得金額」は、給与明細に記載される税引き前の「収入金額」(年収)とは違います。所得金額とは、その年の収入金額から必要経費や一定の控除額を差し引いた残りの金額になります。
具体的に、収入金額と、収入金額から給与所得者の必要経費に当たる給与所得控除額を差し引いた後の所得金額との違いは、下表のようになっています。
収入金額(年収) | 給与所得控除後の所得金額 | (参考) 主な控除や特例の要件 |
---|---|---|
1,000,000円 | 450,000円 | |
1,030,000円 | 480,000円 |
|
2,000,000円 | 1,320,000円 | |
2,013,000円 | 1,329,100円 |
|
3,000,000円 | 2,020,000円 | |
4,000,000円 | 2,760,000円 | |
5,000,000円 | 3,560,000円 | |
6,777,000円 | 4,999,300円 |
|
7,500,000円 | 5,650,000円 | |
10,000,000円 | 8,050,000円 | |
11,950,000円 | 10,000,000円 |
|
20,000,001円 | 18,050,001円 |
|
31,950,000円 | 30,000,000円 |
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配偶者控除の48万円(配偶者の所得金額)、寡婦控除の500万円(納税者本人の所得金額)、配偶者特別控除の1,000万円(納税者本人の所得金額)、給与所得者の確定申告をすることが必要となる2,000万円(納税者本人の収入金額)、住宅ローン控除の3,000万円(納税者本人の所得金額)というように、各種控除や特例などの要件は「誰の」「収入か所得か」が異なりますので、しっかり確かめることが大切です。