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金融広報中央委員会委員・若田部日本銀行副総裁コラム

第4回 金融リテラシーを学ぶ早道は経済学の入門教科書を読むこと

初心者・一般向け

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  • 金融リテラシー
  • 資産形成
  • 経済学
  • 行動経済学

世の中には金融資産形成、俗にいうお金儲けの指南が溢れています。

ただ、その内容は玉石混交で、どれが正しいのか迷われた方も多いでしょう。

どれが正しいかを見分けるには、金融リテラシーが求められます。

金融リテラシーとは、金融を正しく理解する能力・知識と考えてください。

金融リテラシーを身に付けるには、何が有効でしょうか?

私の答えはずばり、経済学の入門教科書を読むことです。

これは私自身が教科書を書いているからではありません。金融リテラシーの基本は、経済学の知識そのものだと深く確信しているからです。

経済学では、人々は合理的に行動すると仮定します。そうではないだろう、というツッコミが聞こえてきそうです。

実際、行動経済学では、人々がかなり頻繁に同じ間違いをすることを実証的に明らかにしています。

ただ、合理的に行動するという代わりに、「人は損得に反応する」と言ったらどうでしょうか。

スーパーでレジに並ぶときに、人はできるだけ短い列に並ぼうとします。これは時間を節約したいからでしょう。

「人は意外に合理的」なのです。

行動経済学でも人が損失を嫌がることは実証されています。

金融商品やサービスを購入する際、損をしないためには、支払う対価をしっかりと理解することが大事です。

とはいえ、金融の場合、普通の商品以上に対価が分かりにくい場合があります。

金融商品には、その便益が将来にわたって長期的に発生する、市場環境によって将来の損得が変化し得るなどの特性があります。

買い手の金融リテラシーが不足していると、そうした特性を十分に理解するのは困難です。

逆に、売る側は自分たちの売るものをよく知っています。

このように取引の当事者の間で情報に格差があることを、経済学では「情報の非対称性」と言います。

こういうとき、買い手は、よく分からないままに高い手数料の金融商品を買ってしまったりします。

金融リテラシーの基本は、最終的にいくらかかるかを理解することですが、利用できる情報の差から、手数料の高さを見落としてしまうのです。

だとすれば、世の中にはむしろ「うまい儲け話」が転がっていそうです。

なぜなら、多くの参加者がいる市場では、儲けの機会は通常はすぐに利用され尽くされるはずですが、参加者の間に情報の非対称性があることにより、そうした機会が利用されないことがあるからです。

では、仮に情報の非対称性のおかげで、うまい儲け話があるとしましょう。それを知っている人は、できるだけそういう話を隠すはずです。

それなのに、「あなただけ」に儲け話を教えてくれるものでしょうか?儲け話というより、怪しい話に聞こえます。

「経済学のポイント」
人は損得に反応する

人間は意外に合理的に行動する

金融商品は分かりにくい

売り手と買い手には情報の格差(非対称性)がある

うまい儲け話は転がっていない

市場に参加者が多いと利益は最後にはなくなる

何事も大事なのは教科書を読んで基本を理解したうえで、現実の例に当てはめて実践してみることです。

そうした観点から、用例の豊富な教科書を読むことをお勧めします。

ちなみに、経済学者は資産形成を得意としているわけではありませんが、資産家として有名なウォーレン・バフェット氏やイーロン・マスク氏は大学や大学院で経済学を学んでいます。

実践に役立つのは、金融広報中央委員会(知るぽると)のホームページです。

これはなんと無料です。「ただほど高いものはない」という格言は、これには当てはまりませんのでご安心を。

本コンテンツは、金融広報中央委員会発行の広報誌「くらし塾 きんゆう塾」Vol.61 2022年夏号(2022年(令和4年)7月発刊)から転載しています。
広報誌「くらし塾 きんゆう塾」目次

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