大人のための お金と生活の知恵
Ⅳ 次世代に向けて
①次世代への金融教育
子や孫など、次世代の人たちに対して、今後の人生の基盤となること(例えば、周囲の人への感謝、ものやお金の大切さの理解、働くことの意義、お金には限りがありその範囲内で家計管理を行うことが重要であることなどです)を、ぜひ教えてあげてください。
学校でも、お金と生活の基本を学ぶようになってきています(学校教育が目指す「生きる力」の育成の一環です)。しかし、お金や生活の問題は価値観と一体のものですし、日常生活での実践が最も重要です。
家庭においてご家族の方が、ご自身の経験も踏まえて教えていただくことが、子や孫の今後の人生にとって大きな財産になります。
②子や孫に資産をゆずりたい
「子や孫に資産をゆずりたい」とお考えの方もいらっしゃると思います。その場合は、計画的な準備と実行が重要です。
資産をゆずる場合、ご自身のライフプランにおける他の目的(老後、医療ほか)との優先関係を考えておく必要があります。子や孫のライフプランにも影響します。早めに考え、準備したり、家族と相談しておくことが大切です。
とくに贈与、相続、事業承継などに関しては、さまざまな税制上の措置があります。あらかじめよく考えて利用されると効果的です。制度を調べ、計画を立て、早めに対応しましょう。
- 例えば、贈与には年110万円の基礎控除があります(=贈与税がかからない)。3人に年100万円を贈与する場合(例:配偶者、子2人)では、10年間で3,000万円、20年間では6,000万円になります。早めに実行することの大切さがわかります。
(注意)贈与を受ける方との間で、例えば10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与することを約束しているような場合には、贈与税がかかります。国税庁ホームページなどで調べ、税務署や税理士に適宜相談しましょう。税制改正にも注意しましょう。
③判断力の衰えなどに備えたい
加齢などに伴う判断力の衰えについて心配される方も多いと思います。
この点も、計画的な準備が重要です。例えば、ご家族、信頼できる方と、あらかじめ話し合っておくと、希望に近い対応がとれる可能性が高まります。
介護や成年後見などにつき、基本的な内容を理解しておくと、不安が和らぎます。
成年後見のうち、「法定後見」は、判断能力が不十分な方を保護し、支援する制度です。判断能力の程度などに応じて、「後見」「保佐」「補助」に分かれます。一方、「任意後見」は、自分に十分な判断能力があるうちに、判断能力が不十分な状態になった場合に備え、信頼できる人との間で、自分の生活、療養看護、財産管理などにつき、希望に沿った契約を結んでおくものです。
「日常生活自立支援事業」の利用も考えられます。社会福祉協議会に相談し、ホームヘルパーに来てもらったり、日常生活費(小口)の出し入れや通帳管理を援助してもらうなど、自分が希望する支援を一定の料金で受けることができるものです。
- 近年、エンディングノート(終活ノート)を利用する方も増えています。このノートは、財産に関することに限りません。自分に関する情報、判断力が衰えた場合の対応、医療や介護に関する希望、最期の迎え方、自分亡きあと家族にどうしてほしいか、家族や大切な人への思いなど、自由に書き、自分の意思や希望を伝えるものです。あらかじめ考えておくと、逆に「いま何をしておくべきか」がわかり、日々の生活の安心感も高まりやすくなります。
④将来の社会を考えたお金の使い方
人々がお金をどのように使うかが、社会のあり方など世の中全体に大きな影響を及ぼします。
消費者一人ひとりが、次世代に対する自分の「思い」や、社会・経済のあり方に対する「志」を込めて、お金を使う(例えば、ものやサービスを購入する、出資・投資する、寄付するなど)ことが、次世代や社会に対する貢献になります。
(注)消費者教育推進法は、「消費者が、自らの消費生活に関する行動が、現在と将来の世代にわたって内外の社会経済情勢や地球環境に影響を及ぼし得ることを自覚して、公正で持続可能な社会の形成に積極的に参画すること」を、基本理念の1つとしています。