先生のための金融教育セミナー
2020年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
C 消費生活・金融トラブル防止に関する分野
高等学校
「消費者トラブルの問題について」
(チャレンジスクールにおける実践)
東京都立文京高等学校 石川 周子 主任教諭
本日は前任校のチャレンジスクールにおける実践をご紹介します。チャレンジスクールには、対人関係やコミュニケーションに苦手意識を持つ生徒、長期欠席が続いたことで学習に不安を感じている生徒が多くいます。2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられると、一般的には高校3年生のクラスの中に、成年と未成年が混在する状況が生まれ、これは、社会経験の乏しい若年層を狙った消費者トラブルが増加する可能性がある中、クラスに「未成年者取消権」が使える生徒と使えない生徒が混在することを意味します。
このように「消費者問題」は生徒が直面する課題であるにもかかわらず、学習に不安を抱える生徒にとって法律の名称や用語は難しく、対処法などの知識を習得することに留まり、適切な行動に結びつける実践的な力を養うまでに至っていないということが課題でした。この課題を解決するために、身近な消費者トラブルの実例を使って当事者意識を持たせることを大切にし、この知識が今後の生活に使えることを実感させる仕掛けを工夫しました。
たとえば、「無料ネイルの勧誘を受けて店舗に行ったところ、高額の化粧品を勧められ、何度も断ったが夜中まで勧誘されたので、仕方なく契約書にサインした。この契約を解約できるか」といった実際のトラブル事例を生徒に提示して、重要だと思うポイントに線を引き、自由に意見を出してもらいました。その後で、教師から色々な制度や関連する法律の知識を伝えることで、自分で考えたことと知識が結びつくようにしました。
また、消費者生活センターの相談員の方を招き、電話相談の擬似体験を行いました。これにより、センターに相談するとどのように対応してもらえるのかがわかり、実際にトラブルに巻き込まれた際に相談する心理的ハードルが下がったと思います。相談員の方からの「相談の電話をしてもらうことで、センターに情報が集まり、被害者を減らすきっかけにもなっている」という言葉も生徒の印象に強く残ったようでした。
消費者トラブルを学ぶことは、生徒が消費者の権利と責任を自覚した自立した消費者になることに加え、社会的な課題の解決に向けて、社会の一員として積極的に関与する消費者となることにもつながります。今後も消費者教育、消費者問題について、工夫を繰り返して、2022年を迎えたいと思います。