先生のための金融教育セミナー
2015年度 先生のための金融教育セミナー(1月・福島)
4.実践発表・ワークショップ3
地域創生・地域活性化につながる金融教育
群馬県立高崎商業高等学校 國雲 省吾 教諭
- 進行・コメント:
- 国立教育政策研究所 大杉 昭英 初等中等教育研究部長
実践発表
本校は、本年度で創立113年を迎える歴史と伝統のある学校です。1年生で基礎科目を共通で学び、2年生から国際ビジネス科、情報ビジネス科、流通ビジネス科、の三つから学科を選択します。部活動の加入率は98%以上で、欠席率は県内では最も少なく、3年間皆勤の生徒が40%います。
本校の特色ある取り組みとしては、まず中学2年生対象の学校説明会が挙げられます。今回で3回目になりますが、1回目はブライダル形式、2回目は企業説明会形式で行いました。今回は、簿記の授業も取り入れました。
他には、地元企業の協力を得て、年2回、高校生プロデュースの結婚式を行っています。3年生の就職希望者はレセプション実習として、1学期期末試験の後にローテーションを組んで来客の応対をしています。また、高校生コンサルタントへの挑戦として、地域のパン屋や障害者施設のコンサルティング等に取り組んでいます。さらに、生徒から募集したゆるキャラ関連商品の製造・販売、コンビニのコラボ商品の生産協力、地元のヤマトイモを使ったジェラートの共同開発や販売なども行っています。
本校は、今回2年間の研究校の委嘱を受け、金融教育に取り組みました。期間が2年間しかなく、いろいろなことはできませんので最初に外部講師による講話を実施しました。ファイナンシャルプランナーや大学教授に講師をお願いして、ライフプラン、消費者教育、悪徳商法、クーリングオフ等について講義をしていただきました。
次に取り組んだのが、生活設計マネープランゲームです。結婚、住居取得、自動車の購入等、人生にはさまざまな選択があります。このゲームは計画性を持った生活が必要であるということを楽しみながら学習できる教材です。2時間ぐらいでできます。
次に日本銀行本店、東京証券取引所の視察を行いました。東京証券取引所では、パソコンを使った株の模擬取引も体験しました。また、学校の文化祭で販売実習を行い、材料の仕入れ販売、在庫管理、利益計画、店舗設計、販売促進、銀行業務についても模擬体験をしました。
さらに、県内で商業を学ぶ11校が群馬県高校対抗税金クイズ大会に参加して、この様子は群馬テレビで放映されました。そこで本校の生徒が司会進行のアシスタントや、マイク、受付、得点掲示、着ぐるみなども担当しました。
また昨年12月15日に金融教育公開授業を行いました。英語の授業では、3年生が生活に必要なコストについて英語で発表したり、家庭基礎では、自分らしく生きるための人生設計や人生と経済について考えました。ビジネス経済ではIPO銘柄から日本経済成長のヒントを探ったり、ロングホームルームで職業選択の方法と働くことの社会的意義を学びました。
金融教育研究校の委嘱は本年度で終わりますが、今後も継続して金融教育に取り組んでいきたいと考えています。そのためには、中心になって進める人材の育成が必要です。資格取得指導の学習が中心に行われている本校で、金融教育のプログラムを効果的に、計画的に取り入れていくことが今後の課題です。
ワークショップ
ケーススタディーの授業として、実在する埼玉県川越市の赤字路線バス会社の経営の立て直しについて検討しました。まず、一人一人が資料を読み込んでケースを把握し、特徴的な単語をピックアップしました。次にグループ活動で、気付いたところを3点箇条書きで書き出し、発表しました。続いて、賃上げでこの会社の人手不足が解消されるのかという設問について、個人がまとめた考えをグループで共有し、意見を発表しました。最後に、ケーススタディーには正解がなく、検討する過程が大切であることを確認しました。
コメント
大杉昭英先生より次のようなコメントがありました。
今回のワークショップの題材のように、論争問題を考えるときは、全員がしっかり状況を共有して理解しておくこと、そして論点の整理が大切です。今回のケースでは、バス会社が新しい事業を開発して受注が増えたものの、運転手が足りないから外注に回すお金が増え、赤字になってしまいました。運転手を引き留めるために給料を上げる場合、これからの会社運営をどうするのか。その人材を、多くの乗客がいる路線に回すのか、バスが運行していないと生活に困る人の多い地域に手厚いサービスをするために回すのか。公共交通機関として公的資金をどう取り入れていくのか。このような問題は、社会の在り方に関わる問題なので、皆さん、判断に迷われたと思います。
こうした学習は、金融教育の中のキャリア教育に関する分野となります。『金融教育プログラム「学校における金融教育の年齢層別目標」』の「社会への感謝と貢献」に当たります。「持続可能な社会やより良い社会を展望して、それに向けて必要なことを考え、実践しようとする」ということと、「より良い社会の実現に向けたお金の使い方をしようとする」ことになります。企業の社会的責任と社会貢献のあり方について、自分の職業選択と関連付けて考えることは、高校生にとってとても大切だと思います。