先生のための金融教育セミナー
2015年度 先生のための金融教育セミナー(1月・福島)
2.実践発表・ワークショップ1
『我ら、アイデアマン!』よりよく考え、判断し、行動する子の育成
~消費者教育・金融教育から~
東京都東村山市立回田小学校 曽我部 多美 校長
東京都目黒区立駒場小学校 塚本 哲 主任教諭
- 進行・コメント:
- 国立教育政策研究所 大杉 昭英 初等中等教育研究部長
実践発表
本校は、平成24年度、25年度と金融教育研究校として研究実践を重ねてきました。金融教育を行うことによって、子供たちが主体的に考えることができるようになります。また、さまざまな教科に金融教育を取り入れることで、子供たちが意欲的に学習に取り組むようになります。金融教育は、価値観が多様化し、物があふれ、変化の激しい現代社会において、子供たちが自分らしさを失うことなく、生きるための力になるのではないかと考えています。
本校では、学年毎に発達段階や児童の実態に合わせてさまざまな教材開発を行っています。1年生は生活科、2年生は道徳、3年生は社会科、4年生は総合的な学習の時間で職業調べと体験、5年生は家庭科で上手なお金の使い方について学んだ後、総合的な学習の時間に発展させて買い物と契約について学習します。お金とは一体なんだろうということを子供たちと一緒に考えた後、家計管理に進みます。その中で特に考えさせたのが生活を充実させるために必要なお金についてです。お金の役割とともに、お金の使い方は各家庭の価値観によって全く違うということを考えます。ものを買うときには、価値観を基に本当に必要かどうかを考え、判断させることが必要になります。
6年生では、算数の時間にハンバーガーショップのシミュレーションゲームを行い、売上と利益の算出方法を学習し、そこから総合的な学習の時間に発展させ、『我ら、アイデアマン!』という授業で商品開発や経営の基礎的なことを学んでいます。また、移動教室の買い物計画や中学校に入学する費用はいくら必要なのかということをテーマに授業を行っています。5年生で学習した家計管理から6年生では金銭を計画的に使うにはどうしたらいいかという学習に発展させています。
ワークショップ
実際に回田小学校の6年生の前期に行った『もうけの達人になろう』と、後期に行った『我ら、アイデアマン!』を体験しました。ハンバーガー開発チーム3班と店舗計画チーム3班に分かれ、販売しようと考えるハンバーガーや出店しようとする店舗について班ごとに企画を考え、それぞれのアピールポイントなどをまとめて発表しました。ハンバーガーについては、健康に気を使ったヘルシーバーガーや福島の食材を使ったハンバーガーなどが紹介されました。店舗については、ショッピングセンター内への出店や、高齢者向け、テイクアウトのみの店舗など、バラエテイに富んだアイディアが発表されました。提案されたハンバーガーや店舗について、授業と同様に投票を行ったところ、最も人気の高いハンバーガーの利益が最も高いという結果にはなりませんでした。
コメント
大杉昭英先生より次のようなコメントがありました。
授業の中で、子供たちに資源をどう配分していくか、希少性や選択、これを選んだらこれを選べないというようなトレードオフを教えることが大切です。価格動向によって、人々がどのように消費行動を変えるのかといった知識を使って、経済分野の学習にも適用することが可能だろうと思います。また、得られた結論よりも、どういうプロセスでその結論を導き出したかがこれからは重要になると思いました。
また、ワークショップで取り上げたハンバーガーはさまざまな商品設計が可能なので、面白い教材だと思いました。こうした実物に近いものを使った授業は子供たちも喜ぶでしょう。自分も大学の授業で実践してみたいと思いました。政治分野では主権者教育がさかんに言われていますが、買うということも投票行動と同じです。購入とは商品に対する投票、投資とは店の立地等に対しての投票です。こうした自己決定の大切さが、この授業の中で養われていくのではないかと思いました。