先生のための金融教育セミナー
2015年度 先生のための金融教育セミナー(1月・福島)
1.基調講演
「児童・生徒の生きる力と学校における金融教育」
国立教育政策研究所 大杉 昭英 初等中等教育研究部長
今日は3つの大きな柱で話をさせていただきたいと思います。「資質能力を高めていくことが今、求められている教育の方向性であること」、「金融教育で身に付けるべき知識と能力とはどういうものか」、「それはどのような学びで身に付けることができるのか」という3点です。
近年では、異なる集団の中で交流する機会が増え、文化、生活習慣、考え方等が違う人たちと一緒に一つの社会をつくる力が求められています。その前にまずは、自分自身が自立して活動できる基本的な力が必要です。加えて、知識や技術というような道具を相互作用的に用いる力、つまり知識を活用する力が必要です。この三つがキー・コンピテンシーといわれています。今の学習指導要領では、これらのキー・コンピテンシーを用いることが非常に重要で、こうした解釈や説明ができる読解力を育てるために言語活動が重視されています。
道具を相互作用的に用いる力とは、PISAでいう読解力のことであり、PISA型読解力を育てるということにつながります。これはテキストから情報を取り出して、意味を理解して、自分の知識や生活経験に関連付けて熟考し、評価、判断する力です。これが、今後の教育の方向性を決めるエッセンスになると思います。
では、金融教育で身に付けることのできる知識と能力とは何か。それは、「生きる力・自立する力」、「社会とかかわり公正で持続可能な社会の形成を意識し行動する力」、「合理的で公正な意思決定をする力・自己責任意識」、「お金と向き合って管理する力」です。
これらは、①生活設計・家計管理に関する分野、②金融や経済の仕組みに関する分野、③消費生活・金融トラブル防止に関する分野、④キャリア教育に関する分野、という四つの領域を学び、より良い生活と社会づくりに繋げていくことを目指しています。
金融教育とは、生活の場面で起こる諸問題に対して、知識を使って考え、判断し、うまく解決していく力を養うことです。そのために、オーセンティック・ラーニング(真正の学習)が必要になってくるわけです。
また、アクティブ・ラーニングとは、社会生活で起こる問題を実際に考え、判断し、表現していくということです。今日の社会で必要とされる能力を育てるために、能動的、協働的な学習活動、すなわちアクティブ・ラーニングが求められています。
では、どういうことを考えて金融教育の教材開発をしていくかですが、1番目に、実際に社会生活上の問題を取り上げるという具体性が必要です。2番目は、知識が活用される可能性があるものを取り上げることです。3番目にアクティビティー、すなわち活動性があるものを選ぶことです。この3点を踏まえて、学習指導を行うことが必要です。
生活をより良くしていくことについては、今生きている私たちだけではなく、将来世代にとっても良いことか、についても考えなければなりません。公正性が保たれ、さらに持続可能な社会をつくるために、これからの金融教育を考えていくべきだと思います。