先生のための金融教育セミナー

平成22年度教員のための金融教育セミナー

2.分科会（金融教育の事例紹介とワークショップ）

分科会2（中学校）

進行およびコメント：: 岐阜大学教育学部大杉昭英教授

実践報告およびワークショップ（1）

「お金にまつわるトラブル防止ポスターをつくろう～金銭問題に関する防衛策を学ぼう～」（2年美術）
福岡県春日市立春日野中学校木尾栄次教諭

実践報告

美術は心の教育であり、その中に金融教育を取り込んで、お金にまつわるトラブルを防止するポスターを作りました。実際の金銭トラブルに関する新聞記事や金融広報中央委員会刊行の『きみはリッチ？』などを読み、クレジットの仕組みや契約、保証人、ヤミ金融について学んだうえで、文字や絵の配置やバランス、色使いなどに注意しながらポスターを作成し、生徒同士で相互評価を行いました。生徒が世の中の動きを知ることにより、将来被害者にならないようにするための自衛力とともに、情報を発信していく力も身につけることができます。このような授業を行う際には、家庭および地域と学校の連携が必要であり、この連携を深めていくことが今後の課題でもあります。

ワークショップ

実践報告を参考に、トラブル防止のポスターを作成しました。まず、グループ内で話し合ってどのようなテーマにするかを決め、個人で一つ、もしくはグループで一つの作品を作りました。参加者の多くは美術以外の担当教科の方でしたが、中学生の現状などを話し合いながら、架空請求やお金と友情についてのポスターを作成していました。

コメントおよび質疑応答

大杉先生より、消費生活・消費者トラブルにかかわるポスター作りについて、「さまざまな教科で学んだことをシンボリックな形で絵に表わす作業は難しいが、ぜひ子どもたちに取り組んでほしいことである」との意見をいただきました。

また、「たとえば複利計算では、利息がだいたいどのくらいの金額になるかといった感覚を持つことが重要。消費者トラブルを防ぐために、他にどのようなことを身につけさせるべきかを考えていってほしい」と述べられました。

本実践事例は、金融広報中央委員会の『はじめての金融教育－ワークシート付き入門ガイドと実践事例集－』で紹介されています。
はじめての金融教育－ワークシート付き入門ガイドと実践事例集－ 2．金融教育の実践事例集（3）中学校における実践事例

分科会2（中学校）の模様（1）

実践報告およびワークショップ（2）

「『お金』にかわるもの　～クレジットカードと上手に関わるには～」（3年社会）
千葉市教育委員会山﨑二朗氏

実践報告

クレジットカードについて学んだうえで、クレジットカードと上手に関わるための標語と解説を記載した「アドバイスカード」を作るという授業を行いました。クレジットカードを取り上げたのは、国民生活で幅広く利用されていて、現実の経済活動を知りお金に絡むリスクについて考える手掛かりになるほか、体験的な活動を取り入れることができると考えたためです。自作授業プリントやDVD教材を活用して学習した後、信用照会端末を使って操作体験を行いました。また、アドバイスカードの作成時には、ゲストティーチャーを招聘して専門的な立場から意見を述べていただきました。

金融教育に取り組むためには、他教科等との連携により時間を捻出するとともに、お金に関連した学習の必要性を生徒本人や他の先生方、保護者に認識してもらうようアピールすることが大切です。

ワークショップ

クレジットカードの標語を考えた後、グループごとに、各学校で実践している内容や課題について意見交換しました。参加者からは、「子どもたちが金銭感覚を身につけるように普段から促していく必要がある」、「他の教科の内容を知らないことを痛感した」、「社会科と家庭科とで重なっている部分もあるが、クーリングオフや悪質商法への対応などの大事な点は重複してでも教えなければいけないのではないか」といった意見が挙がりました。

コメントおよび分科会総括

「この実践ではクレジットカードに対して警告的な要素が強くなってしまうように思うが、プラスの要素はどう扱ったのか」という参加者の質問に対して、山﨑先生は「クレジットカードがあるからこそ便利なこともあるという点を授業の中で触れるように意識した」と回答されました。

また、大杉先生からは、「クレジットカードやプリペイドカードなどの仕組みができると便利になるが、便利になった分、お金の使い方が目に見えなくなる。目に見えない部分に落とし穴がある。そうした落とし穴に子どもたちがはまることのないように、知識を活用して課題を考えさせる授業を実践していただきたい」とのコメントをいただきました。

分科会2（中学校）の模様（2）