金融商品なんでも百科
(平成27・28年用)
金融機関破綻時の金融商品の保護について
金融商品保護の主な仕組み
預金者の保護
預金の預け先が破綻しても、預金は預金保険制度によって保護されます。
金融機関は、制度を運営する預金保険機構に保険料を払い、自らが破綻したときには、(1)預金者に対して保険金が支払われる(保険金支払といいます)、あるいは、(2)預金などを譲受ける救済金融機関に対して資金援助が行われるようになっています。(1)、(2)いずれの場合も保護の範囲は同じですが、決済や借入れなどのサービスも救済金融機関へ引継がれるよう、(2)の資金援助が優先されます。つまり、金融機関が破綻した場合、すぐに預金がカットされるわけではありません。
対象金融機関
日本国内に本店のある、以下の預金取扱い金融機関はすべて、預金保険制度への加入が義務づけられています。
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なお預金取扱い金融機関のうち、上記金融機関の海外支店、政府系金融機関、外国銀行(日本国外に本店のある銀行)の在日支店は預金保険制度の加入対象外です。
預金保険
対象商品
預金保険の対象となっている預金などは以下のとおりです。なお、いずれも国内にある預金などが対象で、海外支店の預金などは除きます。
預金保険の対象預金など | 預金保険の対象とならない預金など |
---|---|
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保護の範囲
無利息、要求払い、決済サービスを提供できること、という3条件を満たす決済用預金に該当するものは全額保護となり、それ以外の預金などについては、1金融機関につき、1預金者当り対象預金などの元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護の範囲となります。なお、担保預金となっている場合には、預金保険機構は、借入金相当額の預金については、保険金の支払いを保留することがあります。
預金の種類 | 保護の範囲 | |
---|---|---|
預金保険の |
当座預金、利息のつかない普通預金など※1 | 全額保護 |
上記預金以外の預金など | 合算して元本1,000万円までと破綻日までの利息等※2を保護 | |
預金保険の対象とならない預金 |
外貨預金・譲渡性預金など | 保護の対象外 |
※1 無利息、要求払い(預金者の要求でいつでも払戻しができる)、決済サービス(引落しなどができる口座)を提供できること、という3条件を満たす預金。決済用預金という。
※2 定期積み金の給付補てん金なども利息と同様保護される。
「いくつも預金を持っている」場合はどうなるか
保護の上限は、同じ金融機関にある同一預金者の対象預金などの合計に対して適用されます。
では、「いくつも預金を持っている」場合はどうなるのでしょうか。たとえば、
複数の金融機関に預金をしている場合
異なる金融機関が同時に破綻しても、それぞれ別に計算します。
金融機関が合併などした場合
金融機関が合併を行ったり、事業(営業)のすべてを譲受けた場合には、その後1年間に限り、「1,000万円×合併などに関わった金融機関の数+それらの利息」が保護の対象となります。
同じ金融機関の複数の支店に預金をしている場合
金融機関としては1つですから、各支店の預金を合計します。
同じ金融機関に家族の預金がある場合
夫婦や親子などの家族でも、名義が異なれば別の預金者として扱われます。
同じ金融機関に複数の立場から預金をしている場合
会社や団体の代表者・役員などとして名義人となっている預金は、当該会社・団体の預金として、個人名義の預金とは別に計算されます(会社や団体の預金の保護については、次のコラムを参照してください)。
他人名義・架空名義の預金の場合
保護を求めることはできません。
会社・団体の預金の保護
会社(法人)の預金は、その会社を1預金者として保護されます。したがって、会社の支店などの名義となっている預金も、同じ会社の預金として合計され、保護の上限が適用されます。
また、マンション管理組合など複数の人が集まって作った団体は、規約などの確認によって法人と同視しうる場合(権利能力なき社団・財団としての要件を備えている場合)に、その団体が1預金者として認められます。それ以外の場合は、その団体を構成する個人の共有預金とされて、各人の他の預金と合計されることになります。
預金保険制度のその他の機能
仮払金の支払い
預金保険金の支払いなどにかなりの日数を要すると見込まれる場合に備えて、必要な請求手続きをすれば、普通預金(総合口座の普通預金を含む)の残高について、1口座あたり60万円を限度に支払いを受けられる制度が用意されています。これは、預金保険制度による保護の一部をとりあえず先に行うという意味で、「仮払い」と呼ばれます。
危機的な事態に対応するための措置
内閣総理大臣が、金融危機対応会議の議を経て、「国全体または地域において信用秩序の維持に極めて重大な支障が生じるおそれがある」と認める場合に限り、金融機関に対する直接の資本の増強(金融機関の体力を増強させる)、資金援助の特例(救済金融機関に預金引継ぎの一定額保証を超えて資金援助を行う)、銀行などの特別危機管理(預金保険機構による全株式の取得)など、例外的な措置(預金等の全額保護)が可能となる手当てがされています。
決済を維持することの重要性と決済用預金
「決済なんてどうでもいい。保険金でも、引継ぎでも、預金さえ無事ならどちらでもいいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、想像してみてください。たとえば、公共料金の支払いが滞ったために、電気やガスが止められてしまったら困ることになるでしょう。企業はもっと大変です。企業は、原材料の仕入れなどの代金受払いを、現金ではなく、手形や小切手、口座振替など金融機関を通じて決済するのが一般的です。代金の支払いができないと、企業は倒産の可能性すら出てきます。極端な話ですが、それは自分自身や自分の家族が勤めている会社かもしれないのです。
そこで、決済機能の安定性を確保するために、決済に用いられる利息のつかない預金については、全額保護されることとなりました。また、決済手続きがなされているものについては、金融機関が破綻してしまった後でも、その決済を完了させることができます。
投資者の保護
投資者は、株式や債券の発行会社に投資したのであり、証券会社に対して投資したわけではないのですから、証券会社が破綻しても、投資者の権利に影響はなく、証券会社に対して株式や債券の返還を求めることができます。
証券会社破綻時の投資者の保護とは、投資者が証券会社の顧客として預けた株式や債券などの有価証券やお金が確実に証券会社から返還されること、または、返還がうまくいかなかった場合の補償をすることです。そのために、顧客資産の分別保管と投資者保護基金という仕組みがあります。相場の値下がりや評価損・元利金の不払いなどを補償するものではありません。
具体例 | 分別保管の方法 | |
---|---|---|
有 |
●保護預りの株式・債券など ●代用有価証券(※) |
「顧客有価証券」と証券会社自身が保有する「固有有価証券等」の保管場所を明確に区分し、かつ、顧客有価証券については、どの顧客の有価証券であるかが直ちに判別できる状態で保管されます(現物がないなどの場合は、証券会社の帳簿によって、誰が何をいくら持っているかを管理しています)。 |
お 金 |
●有価証券の買付けに伴い預けた現金 ●受渡日を過ぎた売却代金・配当金・分配金・利子・償還金等で、証券会社に預けたまま、受取っていないものなど |
左記のお金などの合計額から、買付けにあたって証券会社が立替えた金額などを控除した額が、証券会社が破綻した場合に返還すべき額(「顧客分別金」といいます)として、信託銀行へ信託されます。 |
※委託保証金など、本来はお金でやりとりするものについて、同価値の有価証券をもって代えることが認められていることがあります。その有価証券のことを「代用有価証券」といいます。
顧客資産の分別保管
証券会社は、顧客から預かった株式や債券などの有価証券とお金を、証券会社自身が保有する有価証券やお金としっかり分けて“何が誰のものか”わかるように保管すること(これを「顧客資産の分別保管」といいます)が、義務付けられています。証券会社が分別保管を行っていれば、どの証券・お金がどの顧客のものかハッキリしているため、預かっていた有価証券やお金は確実に顧客へ返還されます。
顧客資産の分別保管
投資者保護基金
万が一の事故など、何らかの事情により、顧客資産を完全には返還できない場合や返還に著しく日数を要する場合に備え、投資者保護基金という仕組みがあり、顧客の損失を補償します。また、損失の補償が必要ない場合でも、顧客資産が迅速に返還されるよう、破綻証券会社に対し返還のための資金融資することもできます。
対象証券会社
国内で証券業を営む証券会社は、外国証券会社の在日支店も含めて、すべて投資者保護基金への加入が法律で義務づけられています。
顧客の損失の補償
対象商品
下図のような株式・債券などの売買や保護預りなどに伴って、一般顧客が証券会社へ預けた有価証券・お金は「顧客資産」と呼ばれます。破綻した証券会社が預かっていた顧客資産のうち、円滑な返還が困難であると保護基金が認めるものが、保護基金による補償対象(補償対象債権)となります。
補償対象債権と保護の範囲
なお、円滑な返還が可能な顧客資産は、破綻証券会社から返還されます。
補償の範囲
1顧客あたり1,000万円を限度として補償されます。但し(1)補償対象債権のうち担保権の目的として提供しているものと、(2)破綻証券会社に対して顧客が負っていた債務(借入れなど)が控除されます。
補償対象が有価証券である場合
実際の補償対象が有価証券である場合は、原則として、補償を行う旨の公告がなされた日の最終価格(いわゆる終値)を基準とした評価額(時価)がお金で支払われることになります。
補償支払いの額の計算
保険契約者の保護
保険契約者の保護制度として、「生命保険契約者保護機構」、「損害保険契約者保護機構」が設立されており、国内で事業を行うすべての保険会社は、原則的にこれらの保護機構への加入が法律で義務づけられています。
(注)簡保・共済・少額短期保険業者・特定保険業者、再保険契約、船主等責任契約のみの業務を営む保険会社などは保護機構の加入対象外。
「生命保険契約者保護機構」は、生命保険会社が破綻した場合、破綻した保険会社の契約を引継ぐ「救済保険会社」へ資金援助を行うほか、「救済保険会社」が現われない場合は、「承継保険会社」を設立して保険契約を承継します。これにより、従前の保険契約時との年齢、健康状態の違いから保険に加入できなくなるといったことが避けられます。また、保険契約が救済保険会社などに承継されるまでは、破綻時点の責任準備金(将来の保険金支払いに備えた準備金)の90%まで、保険金などの支払いが保護機構によって補償されます。
「損害保険契約者保護機構」も、損害保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構と同様の仕組みで保険契約者の保護を図ります。ただし、損害保険契約の補償割合は、契約の種類によって異なり、以下の図のようになっています。また、自動車保険や契約者が個人などの火災保険など一部の損害保険は、生命保険と異なり、既往の契約とほぼ同一条件の契約を他の保険会社と締結できることが少なくありません。このため、破綻後3か月間に発生した事故の補償割合は100%としながらも、3か月経過後は80%とし、破綻後3か月以内の新たな保険契約の締結を促す仕組みになっています。
保険の種類 | 保険金支払い | 解約返戻金・ 満期返戻金など |
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生命保険 | 責任準備金の90%※1 | ||
損害保険 |
自賠責保険 家計地震保険 |
補償割合100% | |
自動車保険 |
破綻後3か月間は保険金を全額支払補償割合100% (3か月経過後は補償割合80%) |
補償割合80% | |
火災保険※2 その他損害保険 ※2 (賠償責任保険、動産総合保険、海上保険、運送保険、信用保険、労働者災害補償責任保険など) |
|||
保険期間1年以内の傷害保険※3 海外旅行傷害保険※3 |
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年金払型積立傷害保険※3 財産形成貯蓄傷害保険 確定拠出年金傷害保険 |
補償割合90%※1 | 補償割合90%※1 | |
その他の疾病・傷害保険 (上記以外の傷害保険、所得補償保険、医療・介護(費用)保険など) |
補償割合90%※1 (積立型保険の場合積立部分は80%) |
(注)破綻保険会社の財産状況により上記補償割合を上回る補償が可能である場合は、当該財産状況に応じた補償割合による給付を受けることが可能。
※1高予定利率契約(破綻時に過去5年で常に予定利率が基準利率<現在は3%>を超えていた契約)の補償割合は以下の式により算出され90%を下回る。なお、保険金が運用実績に連動する変額保険などの生命保険契約は、特定勘定の100%の補償となる。高予定利率契約の補償割合=90%−{(過去5年間における各年の予定利率−基準利率)の総和÷2)}
※2「火災保険」、「その他の損害保険」については、保険契約者が個人など(個人、小規模法人、マンション管理組合)である場合に限られる。ただし、個人など以外の者であっても、その被保険者である個人などがその保険料を実質的に負担すべきこととされている保険契約のうち、当該被保険者に係る部分は、補償の対象。
※3契約締結時に行う告知事項に健康状態に関するものが含まれない保険契約に限られるなどの条件がある。