金融商品なんでも百科
(平成27・28年用)
金融機関破綻時の金融商品の保護について
金融商品別にみた保護の内容
まず、金融商品別に、どのような保護の仕組みがあるかについてみてみましょう。
預金
預金を取扱う金融機関に預金をすると、預金保険法によって、その預金には自動的に保険が掛けられることになります。これが預金保険という制度です。
万が一、取扱い金融機関が破綻しても、預金者は預金保険制度によって保護されることになります。
農漁協などが取扱う貯金
農業協同組合、漁業協同組合、水産加工業協同組合、信用事業を行うこれらの協同組合の連合会、農林中央金庫の取扱う“貯金”などについては、これらの金融機関が加盟する農水産業協同組合貯金保険制度という、預金保険制度に似た機能をもつ制度によって保護されています。
郵便貯金
平成19年10月に日本郵政公社が民営化され、貯金はゆうちょ銀行が取扱うことになりましたので、預金保険制度の対象となりました。
ただし、19年9月末までに預けられたもののうち、定期性の郵便貯金(定額、定期、積立、住宅積立、教育積立)は、「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構」が引き継いでおり、政府保証が継続されています。
金銭信託
信託銀行などで取扱われている合同運用指定金銭信託(一般口)など、すべての信託商品は、信託法および信託業法によって金融機関自身の資産と分別(ぶんべつ)管理することが義務づけられています。
また、信託商品には、元本補てん契約があるものと、元本補てん契約がないものと2つありますが、このうち、元本補てん契約がある信託は、預金との類似性が高いので、預金保険制度の対象金融商品として保護されています。
信託の元本補てん契約
信託は実績配当(信託によって生じる利益も損失も受益者に帰属する)が原則です。ただし、一部の信託については元本の損失を補てんする契約を結ぶことが、信託銀行に認められています。こうした元本保証の契約を「元本補てん契約」と呼んでいます。
有価証券(公社債、株式など)
国債、社債(転換社債<新株予約権付社債>、ワラント債を含む)といった公社債(債券)、株式、投資信託の受益証券、外債などの有価証券は、仮に販売・売買の窓口となっている証券会社などが破綻した場合でも、(その破綻証券会社などの発行する有価証券でない限り)債券保有者や株主としての権利を失うことはありません。
証券会社による保護預りの有価証券、預り金(有価証券の売買代金など)、信用取引に伴う委託保証金の代わりに差入れた有価証券などの顧客資産については、証券会社自身の資産と分別して保管することが義務づけられていますので、万が一、証券会社が破綻したとしても、顧客資産はそのまま返還されることになります。
なお、顧客資産の円滑な返還が困難であると認められた場合は、投資者保護基金によって補償されることになります。
累積投資、株式ミニ投資
累積投資、株式ミニ投資により買付けた有価証券(複数の顧客および証券会社が共有している有価証券)については、買付けた有価証券のうち、個々の顧客の持ち分がいくらあるか、証券会社が帳簿上で直ちに判別できるように管理することが義務づけられています。
投資信託
株式投資信託、公社債投資信託、MMF、ETFなどの受益証券は上記のとおり分別保管が行われますが、運用されている財産そのものは、販売窓口である証券会社や銀行などが管理しているのではなく、投資信託の運用会社(投資信託委託会社)と信託契約を結んだ信託銀行が、信託財産として信託銀行の本体資産とは別に管理(分別管理)しています。したがって、証券会社や信託銀行が破綻したとしても、顧客資産はそのまま返還されることになります。
外国為替証拠金取引(FX)やデリバティブ商品
外国為替証拠金取引(FX)の証拠金やデリバティブ商品は、FX業者や金融機関の資産とは別に信託銀行に預けて分別管理(信託保全)されることになっています。
組合せ商品
公社債の利息部分を別の金融商品で運用・管理する組合せ商品があります。こうした商品の保護は、その利息部分を運用する金融商品によって異なってきます。たとえば、国債定額貯金では、国債の利息のうち千円単位の利子が定額貯金で運用されていますので、利息部分(定額貯金)は国によって保証されることになります。
生命保険、損害保険
仮に、保険会社が破綻した場合、それまで保険料を払込んだ保険契約が引継がれないなどの問題に対処できるように、保険契約者は保険契約者保護機構という仕組みで保護されます。その場合、他の保険会社や保険契約者保護機構などに、破綻保険会社の保険契約が引継がれます。ただし、保険契約の引継ぎが行われるにあたり、責任準備金(保険会社が、将来の保険金などの支払いに備えて積立てている積立金)や予定利率の引下げなど契約条件の変更が行われることがあります。
個人年金
個人年金保険は外貨建て個人年金も含めて、生命保険会社が加入する生命保険契約者保護機構による保護の対象です。万が一、引受保険会社が破綻した場合には、生命保険契約者保護機構の保護措置が行われますが、契約の際に示された年金額等が削減され、その結果、年金額等が払込保険料を下回ることがあります。
簡易生命保険
平成19年10月に日本郵政公社が民営化され、保険はかんぽ生命が取扱うことになりましたので、生命保険契約者保護機構の対象となりました。
ただし、平成19年9月末までに加入された簡易生命保険は「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構」が引き継いでおり、政府保証が継続されています。
財形貯蓄
財形貯蓄は、それ自体が独立した金融商品ではなく、預金、信託、投資信託、国債、金融債、保険などの既存の金融商品を利用したものになっており、その保護については、利用される金融商品と同様となります(したがって、同じ財形貯蓄といっても、保護の内容は利用される金融商品によって異なります)。