金融広報中央委員会創立70周年記念対談
18歳成年に必要な金融知識
俳優 鈴木梨央×金融広報中央委員会委員 日本銀行副総裁 若田部昌澄
お金との関わり方と健全に生きる力を養う金融教育
司会 梨央さんは、実際にご家庭や学校で金融教育をお受けになる機会はありましたか?
鈴木 家では、小さいころにおこづかい帳みたいなものを付けていたんですけれど、なかなか続かなかったです(笑)。学校の授業では「ビジネス概論」という授業があり、グラフを見て、売上が多い時期と少ない時期を見比べて、わかることをみんなで考えたり、企業の人の目線で討論したりする機会もあります。
司会 昔はお金のことを学校で教えるのは抵抗がありましたよね。なぜ今は金融教育の重要性が叫ばれているのでしょうか?
若田部 基本的には金融教育というのが「生きる力」、この社会で生きるうえでは欠かせない、ということだと思います。
実際に金融教育がどれくらい効果があるかということを、金融広報中央委員会が実施している「金融リテラシー調査」(脚注1)2022年の結果でご説明します。
(%)
全体 | 学生 (18-24歳) |
若手社会人 (18-29歳) |
一般社会人 (30-59歳) |
高齢者 (60-79歳) |
|
---|---|---|---|---|---|
金融教育を受けた人 | 63.9 | 52.9 | 50.0 | 63.9 | 77.1 |
金融教育を受けていない人 | 55.0 | 38.1 | 41.3 | 53.9 | 64.2 |
まず、「金融教育を受けている人」は、「金融教育を受けていない人」よりも明らかに正誤問題の正答率が高く、金融教育の効果が出ているということが言えます。
次に、金融教育を受けた人ほど望ましい金融行動をとる人の割合が高いという結果が出ています。紙の上での正答率が高くなるだけでなく、たとえば、金融商品を購入する際に他の金融機関や商品と比較するなど、実際に望ましい金融行動をとることに結びついているということが言えます。
金融教育 | 行動特性・考え方 | 影響・結果 | |
---|---|---|---|
金融教育を受けている人が多め | 情報を頻繁にみている | → | 金融トラブルが少なめ |
家計管理がしっかりしている | → | 消費者ローンの利用が少なめ | |
計画をたてている | → | 借入れの負担感が低め | |
緊急時の備えを持っている | → | 経済ショックへの耐性が強め |
また、金融教育を受けている人は、「情報を頻繁にみている」「家計の管理がしっかりしている」「計画をたてている」「緊急時の備えを持っている」などの特徴が見えてきます。結果として、金融教育を受けている人は、金融トラブルが少なく、借入れへの負担感が低く、自分が働けなくなるなどの経済ショックへの備えもあるということです。
司会 梨央さん、金融教育というものへのイメージは変わりましたか?
鈴木 まだ自分には関係のないことのように思っていたのですが、これから生きていくうえで、本当に身近な問題で、すごく必要な教育だと思うようになりました。トラブルに巻き込まれないためにも、しっかりと学んでいきたいと思います。
若田部 お金と上手く付き合っていくために必要なのが金融教育です。誰でも、お金を稼いだり、貯めたり、使ったり、借りたりということを一生のなかで必ず行います。その基礎的な教育は学ぶべきなのです。金融教育は難しいというイメージがあるかもしれませんが、基本の部分はそんなに難しいものではないんです。常識的なことが多いので、誰でも勉強することができると思います。
鈴木 今まで私にとってお金は、欲しいものを買ったり美味しいものを食べたりするときに必要なものと感じていて、あまり深く考えたことはなかったのですが、今回、金融教育は人生において本当に大切なことだと実感しました。本当に必要なものなのか、将来何がしたいのか。幸せを見つけていくためには、お金は人生を豊かにするツールでもあって、知識と責任をもって生かすものなんだと心から思いました。
若田部 お金は“手段”なんです。手段のほうに振り回されてはいけないんです。自分がお金に使われるのではなく、お金の主人になる、ということが大事です。
鈴木 お金に振り回されずに、自分で計画を立てて運用していくことが大事 なんですね。ありがとうございました。
脚注
- 1
- 金融リテラシー調査…「金融知識・判断力」に関する正誤問題と「行動特性・考え方等」に関する問題とを組み合わせて、当委員会が3年に1度実施している調査。
金融リテラシー調査(2022年)