先生のための金融教育セミナー
2020年度 先生のための金融教育セミナー(オンライン開催)
E その他
特別支援学校
「ろう学校での金融教育について」
(特別支援学校)
東京都立中央ろう学校 荒川 早月 校長
ろう学校は多くの場合、幼稚部から高等部まで設置されており、この一貫型の教育を活かして、卒業後の生活までを視野に入れた系統的な金融教育を行うことが求められています。今日は、聴覚障害という障害特性を踏まえて指導上大切にしていること、学部ごとの金融教育の事例をご紹介します。
幼稚部では、お店屋さんごっこやおままごとなどの遊びを日常的に行っています。このような遊びの中から、お金の存在や役割を知り、物やお金を大切にすることが身についていきます。また、遊んだ後の振り返り学習、日記指導、話し合い活動を通して遊びの際のイメージや行動を言語化し、日本語として身につけていく活動は、小学部以降の金融教育に大きな意味があります。
小学部での課外活動の取り組みをご紹介します。「夏祭りにお店を出そう」というテーマで活動を行いました。PTAや地域、大学などと共同開催される夏祭りに、子どもたちがお店を出店し、本物の金銭を扱い、商品を販売する取り組みです。どうしたら売り上げを高めることができるか、お金をどのように管理したらよいかなどを子どもたちに考えさせます。必要に応じて大人が支援しますが、子どもたちの自主性や意欲を大切にすることは言うまでもありません。
中学部では教育活動全般において金融教育を行っています。3年生では、修学旅行のコースを、経路や費用などを総合的に検討して自分たちで決定する取り組みを行いました。職業調べ、職業体験も行いました。将来の職業選択について考え、それを実現させるには今後何を学ぶ必要があるのかといった進路指導にも結びつけることができます。
高等部では実際に社会に出た時に活用できる実践力を養う必要があります。一人暮らしの設計の学習では、収入と支出のバランスについて考えました。また、大学進学を考えている生徒たちにとって、奨学金の制度を知ることも大変重要です。一人一人の障害の状態や言語力、理解力に合わせて指導をしていきます。
聴覚障害から生じるコミュニケーションや情報収集の課題をどのように捉え、自立にむけて世界を切り開いていく力を育てられるかという視点が大切です。そして、子どもたちが自立し、豊かな生活を送り、よりよい社会づくりに貢献できるよう、金融教育を通じて育成していくことが、私たちの役割だと考えています。