金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(2023年10月改訂版)
4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて
(3)全体計画、指導計画の作成
② 指導計画の作成
ア.指導計画作成の意義
学校教育は意図的、計画的かつ組織的に営まれることから、いかなる場面においても指導計画の作成が不可欠である。このことは学校で金融教育を推進する場合にも例外ではない。
指導計画は、教科等ごとに年間、単元や題材、単位時間(「本時の展開」)など様々な時間の幅で作成される。そこでは、指導に当たっての目標、目標を実現させる指導の展開、そして指導の過程や結果における評価についてそれぞれ計画する必要がある。目標と指導と評価について総合的に計画したものが広義の指導計画である。狭義には、特に指導場面の計画を指導計画ということがある。ここでは、金融教育に関わる教材や資料、学習活動、地域の人たちの協力などについて、指導の内容や手順を具体的に計画する。なお、総合的な学習(探究)の時間に金融教育を重点的に取り上げる場合には、目標や指導内容、教材などが金融教育と直接結び付いたものになる。
イ.指導計画作成の手続き
各教科等の指導において金融教育を位置付けて実践するとき、次のような手続きで指導計画を作成することが考えられる。
- 当該教科等の趣旨や目標等を踏まえて、単元や題材の指導目標を設定する。教科等によっては、金融教育の目標や内容が単元や題材の指導目標として、直接に位置付かない場合もあることに留意する。
- 目標を実現させていく筋道(指導の展開)において、金融教育の目標や内容がどこでどのように位置付くのかを明確にする。その際、教科等によっては学習内容のレベルにおいて関わりがあるだけでなく、教材や題材、学習活動などにおいて金融教育と関わりをもたせることができることに留意する。
- 指導の主眼はあくまでも当該教科等の目標や内容の実現を図ることである。それらの学習(指導)の過程に金融教育の内容を指導に当たって配慮すべき事項(金融教育の視点、あるいは金融教育との関連)として示すことになる。
- 目標の達成状況を評価する方法を示しておく。その際、金融教育の視点についても児童生徒の学習にどのように影響したのか、定着の状況を見極めるための方法を計画しておく。
金融教育の視点を重視した指導計画の作成に当たっては、金融教育の趣旨や目標等を理解するとともに、教材や資料、児童生徒の学習活動の構成、地域の人たちや関係機関等の協力の得方などを計画し、児童生徒がお金や金融・経済に対する理解と関心を深めることができるように配慮する。
ウ.指導計画作成に関わる配慮事項等
従来の指導計画は、教師が学校の考え方や児童生徒の実態や特性を踏まえて作成し、それに基づいて地域の人たちに協力を求めてきた。金融教育の実践に当たっては、児童生徒も教師も地域の専門家に学ぶことができる貴重な機会であり、その意味では指導計画の作成段階から、地域の人たちや関係機関などと共同で作成するという姿勢が求められるため、共同で指導計画を作成・実施し、指導に対する評価もともに行うようにすることが望まれる。
そのためには、金融教育の指導計画を作成するとき、地域で金融・経済に関わって活動している人たちの存在を理解するとともに、都道府県の金融広報委員会をはじめ、協力の得られる金融機関や関係団体等を把握することが重要になる。それらの協力場面を各学年の教科等の単元や題材に適切に位置付け、無駄な重複を避けるようにする。それらの人たちの立場や仕事を考慮し、できるだけ余裕をもって打ち合わせを行うなど、十分な準備と配慮が必要であることは言うまでもない。
また、様々な官庁や機関・団体等が学習指導例や教材を作成・提供している。こうした学習指導例や教材を参考にして、地域や児童生徒の実態等を加味して指導計画を作成することも有益である。