金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-
(2023年10月改訂版)
4.金融教育の指導計画の作成と実施に向けて
(2)各教科等の学習と金融教育
② 特別の教科 道徳、特別活動と金融教育
ア.特別の教科 道徳
道徳教育は、小学校、中学校ともに「特別の教科である道徳を要として学校の教育活動全体を通じて行うもの」とされ、その目標は「自己の(人間としての)生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した一人の人間(自立した人間)として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこと」(カッコ内は中学校)と示されている。これを受けて、特別の教科 道徳は「道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己の(人間としての)生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」(カッコ内は中学校)ことを目標にしている。その内容項目は、自分自身に関すること、人との関わりに関すること、集団や社会との関わりに関すること、生命や自然、崇高なものとの関わりに関することの4つの視点の下に、それぞれ学年ごとに示されている。特別の教科 道徳は、自己の生き方や人間としての生き方を考えることを目標とし、社会との関わりを考えることを内容に含んでおり、金融教育の目標とは極めて関わりが深い。
例えば次のような内容項目には、金融教育の目標や内容と直接的に関わりがある。
- (前略)物や金銭を大切にし、(中略)規則正しい生活をすること。(小学校第1学年及び第2学年)
- 約束や社会のきまりの意義を理解し、それらを守ること。(小学校第3学年及び第4学年)
- 働くことや社会に奉仕することの充実感を味わうとともに、その意義を理解し、公共のために役に立つことをすること。(小学校第5学年及び第6学年)
- 望ましい生活習慣を身に付け、(中略)節度を守り節制に心掛け、安全で調和のある生活をすること。(中学校)
- 法やきまりの意義を理解し、それらを進んで守るとともに、そのよりよい在り方について考え、自他の権利を大切にし、義務を果たして、規律ある安定した社会の実現に努めること。(中学校)
特別の教科 道徳では、お金を扱った教材に関する学習だけでなく、感謝や規則の尊重、遵法精神、公徳心、勤労、公共の精神等、金融教育に関わりのある内容項目の学習において、金融教育の視点でもある、自分の生き方や価値観を磨くことや、より豊かな生活やよりよい社会づくりに参画することなどを意識することが大切である。
イ.特別活動
特別活動の目標は、例えば中学校を例にとると、次のように示されている。
「集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ、様々な集団活動に自主的、実践的に取り組み、互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して、次のとおり資質・能力を育成することを目指す。
- 多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し、行動の仕方を身に付けるようにする。
- 集団や自己の生活、人間関係の課題を見いだし、解決するために話し合い、合意形成を図ったり、意思決定したりすることができるようにする。
- 自主的、実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして、集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに、人間としての生き方についての考えを深め、自己実現を図ろうとする態度を養う。」
小学校や高等学校においても、ほぼ同様の目標となっている。
金融教育に関連する内容は、校種別に、次のように段階的に示されている。
(小学校)
- 基本的な生活習慣の形成や、現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成など(学級活動)
- 勤労の尊さや生産の喜びを体得するとともに、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるようにすること(学校行事のうち勤労生産・奉仕的行事)
(中学校)
- 自他の個性の理解と尊重、よりよい人間関係の形成や、社会生活・職業生活との接続を踏まえた主体的な学習態度の形成等、社会参画意識の醸成や勤労観・職業観の醸成、主体的な進路の選択と将来設計など(学級活動)
- 勤労の尊さや生産の喜びを体得し、職場体験活動などの勤労観・職業観に関わる啓発的な体験が得られるようにするとともに、共に助け合って生きることの喜びを体得し、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるようにすること(学校行事のうち勤労生産・奉仕的行事)
(高等学校)
- 自他の個性の理解と尊重、よりよい人間関係の形成、学校生活と社会的・職業的自立の意義の理解、社会参画意識の醸成や勤労観・職業観の醸成、主体的な進路の選択決定と将来設計など(ホームルーム活動)
- 勤労の尊さや創造することの喜びを体得し、就業体験活動などの勤労観・職業観の醸成や進路の選択決定などに資する体験が得られるようにするとともに、共に助け合って生きることの喜びを体得し、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるようにすること(学校行事のうち勤労生産・奉仕的行事)
このように、特別活動の時間においても「自己の生き方」(小学校)、「人間としての生き方」(中学校)についての考えを深めること、「人間としての在り方生き方についての自覚を深め」ること(高等学校)に関わって、金融教育の目標や内容が位置付けられている。体験的な学習も取り入れ、金融教育の重要な実践場面として捉え、児童生徒の主体的な活動を展開することができる。