知っておきたい! 共働き夫婦のお金の話
~家計&財産管理、離婚時の財産分与~
(共働き世帯ならではの注意点)
住宅ローンの借り方 知っておきたい活用法と注意点
共働きの家計相談では、住宅ローンについてよく質問されます。片働きで住宅ローンを借りる場合は、収入のある人が主債務者になる「単独ローン」となりますが、共働きの場合は、単独ローンより多額のお金を借りられる「ペアローン」、「連帯債務型」、「連帯保証型」といった選択肢もあります【図表3】。
※画面を横にするか、横にスクロールしてご覧ください。
特徴 | メリット | デメリット | |
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単独ローン |
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ペアローン |
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連帯債務型 |
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連帯保証型 |
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ペアローンは夫婦それぞれの契約になるので、「夫は返済期間20年の固定金利型、妻は返済期間10年の変動金利型」というように、返済方法を決められます。個々の働き方や考え方に応じた返済方法を選択できるのは、共働きにとって大きな魅力と言えるでしょう。
税金面においても、ペアローンと連帯債務型によるメリットは見逃せません。まず、住宅ローン控除は夫婦2人が受けられます。また、家の所有権が共有名義になるため、家の売却時に一定の要件を満たせば、夫婦それぞれ最高3,000万円の特別控除を受けられます(「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」)。
家の名義人が亡くなった場合、共有名義なら所有する持ち分のみが課税対象なので、相続税が抑えられます。
次に、注意すべき点も知っておきましょう。
返済リスク
住宅ローンは「いくら借りられるか」より「いくら返せるか」が大切です。今は2人とも十分な収入があって多額の借入れができたとしても、住宅ローンを支払う数十年の間に、減収など不測の事態が起こる可能性もあります。2人でやっと返済できる金額を1人で返済するとなると、家計の破綻を招きかねません。ライフプランや貯蓄なども十分に考慮して、ぎりぎりの返済計画にならないようにしましょう。
コスト高
ペアローンでは、夫婦それぞれの契約になるため、事務手数料や保証料などもそれぞれの契約に必要となります。また、夫婦連生団体信用生命保険ではなく、各自で団体信用生命保険に加入した場合、加入する死亡保険の負担が単独ローンより大きくなることもあります。いろいろなパターンを比較検討して、トータルコストを下げる選択を心がけてほしいと思います。
離婚時の財産分与における共働きならではの注意点
婚姻中は、夫婦は協力して財産を増やし、維持していきます。しかし離婚となった場合、2人で築いた財産を合理的に分割する「財産分与」を行わなければなりません。
財産分与の対象資産は、婚姻してから別居までに夫婦で形成した共有財産となる「現金・預貯金、有価証券、不動産、車、貯蓄性のある保険、年金、退職金、負債など」が当てはまります。財産分与の基本的なことは共働きも片働きも変わりませんが、共働きならではの注意点があるので紹介します。
年金の分割
年金の分割は、年金分割制度によって定められており、婚姻期間中の保険料納付記録を分割することになります【図表4】。
合意分割制度 | 3号分割制度 | |
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分割対象となる離婚時期 | 2007年4月1日以後の離婚 | 2008年5月1日以降の離婚 |
分割の決定方法 | 当事者間の合意または家庭裁判所の決定 | 当事者間の合意は不要 |
分割の対象 | 婚姻期間中の夫婦の厚生年金の保険料納付記録 | 2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間における、相手の厚生年金保険の保険料納付記録 |
分割の割合 | 2分の1が上限 | 2分の1 |
分割請求できる期限 | 原則、離婚した日の翌日から2年以内 | 原則、離婚した日の翌日から2年以内 |
この分割制度には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類があり、共働きは合意分割制度が適用されます。
年金分割制度は、厚生年金が対象となり、国民年金や厚生年金基金、国民年金基金などは対象外となります。例えば、夫が自営業で妻が会社員の場合、妻の厚生年金のみが分割対象になるということを知っておきましょう。
家の財産分与
婚姻期間中の購入なら、名義にかかわらず財産分与の対象になります。しかし、ペアローンや連帯債務型など2人で住宅ローンを支払い、その残債がある場合は少々面倒です。
例えば、ペアローンで残債がある家に妻が住み続けるため、夫の所有権を妻に譲渡して100%妻名義にすることで、夫の住宅ローンの残債を妻が引き受けるとします。
しかし、夫の住宅ローンは金融機関との契約であるため、家や住宅ローンの名義や契約変更などは、金融機関の同意が必要となります。
残債が多く妻1人の収入に見合わないなどの場合は、審査が厳しくなるほか、別の金融機関での借換えも、容易ではありません。家の財産分与や住宅ローンの契約変更などは、金融機関へ早めに確認しておきましょう。
家計管理の決め手は夫婦のコミュニケーション
共働きの家計管理の改善には「家計の見える化」と「共同経営者としての意識」が必要であるとお伝えしました。
そして何より大切なことは、「お金について話し合う」という夫婦のコミュニケーションです。共働きでは、お金の流れはもちろん、夫婦の考え方や生活スタイルなど複雑な傾向にあり、すれ違いや争いが起こることも考えられます。
だからこそ、ふだんからコミュニケーションを意識して、離婚などの事態にならないように、協力と信頼で支え合いながら未来を築いてほしいと願っています。
今回のまとめ
- 共働きの家計管理は「費用別分担タイプ」、「共有口座タイプ」、「片方負担タイプ」に分類できる。
- 家計管理の改善ポイントは「家計の見える化」と「共同経営者としての意識」。
- 住宅ローンの借り方によっては、返済リスクや財産分与時のトラブルになる可能性がある。