第2回「金融に関する消費者教育セミナー」(東京)
(2)実践事例報告およびワークショップ
『きみはリッチ?』『これであなたもひとり立ち』を生かした見事なロールプレイング
第2回「金融に関する消費者教育セミナー」、第1日目の分科会(1)では、東京都立文京高校の阿部智子先生の進行で、実践事例報告および課題提示として「生徒のひとり立ちを促す授業プラン」(新潟県立小千谷高校・池山純子先生、新潟県立見附高校・渡邊祐子先生)と、「多重債務を未然に防止する授業プラン」(城西国際大学講師・阿部信太郎先生)が発表され、その後全国から参加された先生方によるワークショップが開かれた。
「生徒のひとり立ちを促す授業プラン」の池山先生、渡邊先生、そして進行役の阿部先生は、共にこの7月に金融広報中央委員会から発刊された冊子『これであなたもひとり立ち』の執筆者である。
高校生といえば青春の真っ只中。だがこれから親元を離れて進学や就職を控えているだけに、進路の決定やその進路選択に伴う経済基盤の確認、また住居選び、健康と経済に配慮した食生活、銀行口座の開設、インターネット取引やクレジットの利用など、ひとり立ちに向けて様々な基礎知識が必要になる。そこで制作されたのが『これであなたもひとり立ち』というわけだ。
池山先生が高校3年生160人に「一人暮らしの重要項目」を調査したところ、一番重要視されていたのがお金、2番目が食生活であったといい、生徒たちもお金が重要なキーワードになることをよくわかっている。ちなみに「私の命を育んだお金はいくら」と、生まれてからこれまでの18年間に自分に掛かった費用を算出すると、2500万円という金額が出て、生徒たちは唖然としたらしい。
同冊子の「受験のための経済学」、「社会人になるための経済学」等々の項目を通じて、保護者の経済的な負担やこれから一人暮らしをする時、しっかりとした経済観念を持つ重要性を認識させることができた。また、便利になったカード社会の落とし穴にはまってしまうことをよくわからせることに成功している授業実践の報告であった。
「多重債務を未然に防止する授業プラン」の阿部信太郎先生は、消費者に注意を促す有名なキーワード「儲・美・頭・信・健(ちょびっとしんけん)」を紹介し、参加者は実際の新聞の折り込み広告で分析した 。
「この色の財布を買えば、お金がざくざくたまる」と書いてあると、「もしかしたら」と買ってしまう。これが「儲」。そして「これを飲めば痩せて美しくなる」との広告で、つい買ってしまうのが「美」というようなキーワードに相当するというわけ。
また、「生活経済テスト」と金融広報中央委員会から発刊された『きみはリッチ?』及び同書の指導書を使って、多重債務を未然に防止するために必要な金融に関わる教材の活用方法について報告した。
最後は先生方が9グループに分かれワークショップに入った。『きみはリッチ?』の本を教材化する時の要点項目の研究チェックや感想を分担して発表するグループ、『これであなたもひとり立ち』を教材にした「悪質業者の勧誘計画」グループでは悪質業者になってセールストークを考えたロールプレーシナリオを作成、「言っておきたいこと」 ―ひとり立ちの子どもへ― のグループでは、親の立場で子どもに金銭感覚育成として言っておかなければならない言葉を、子どもの性格も考え、ロールプレーシナリオの作成に取り組んだ。
特に面白かったのは「悪質業者の勧誘計画」と「言っておきたいこと」に挑戦された先生方。見事な台本と演技は脱帽ものだった。
受講者の一人(中学校の社会科教諭)は、「家庭科と社会科は発想が違うところがありますが、一緒に考えていくことがとても面白かったし、また違う教科が手をつなぐ必要性を強く感じました」と感想を話していた。