第2回「金融に関する消費者教育セミナー」(東京)
(1)講演「権利の行使方法を子どもたちに教えよう」
昨今、多重債務の問題は実に深刻で、現在多重債務者は、200万人にのぼるとされています。昨年の自己破産申立件数は21万件を超えました。このような中で象徴的な事件が6月14日、大阪府八尾市で起きてしまいました。ヤミ金からお金を借りた女性と、そのご主人とお兄さんが、過酷な取り立てに耐えきれずに鉄道自殺をされたというショッキングなものでした。
この女性がヤミ金から借りたお金は3万円で、そのうち1万5千円の利息を先取りされて手にしたのはわずか1万5千円です。そんな額で3人の尊い命が奪われてしまうのです。実はこういったことが日常茶飯事になっているのが日本の実情なのです。
ヤミ金というのは、貸金業の登録の有無にかかわらず、出資法で定められている上限金利の年利29.2%を超える金利での貸し付けを行う金融業者です。このヤミ金がターゲットにしているのが消費者金融やクレジット会社のキャッシングなどを利用して返済が困難になっている多重債務者、そして自己破産者、また商工ローンなどを利用して追いつめられている中小企業の人たちです。
ヤミ金はこれらの人たちの名簿を不正に入手して、ダイレクトメールやファックス・電話などで融資の勧誘をしています。また新聞の折り込み広告、スポーツ新聞、夕刊紙、チラシ、看板などでもしきりに勧誘しています。
サラ金やクレジットの返済は月に1回というのが普通ですが、ヤミ金は1週間か10日に1回。しかも、「トヨン」(10日で4割の利息=年1460%)という超高金利ですから、みるみるうちに元本が雪だるま式に膨らみます。
気をつけなくてはいけないのは、最近NPOの認証を取った紹介屋が増えていることです。これと手を組んでいる提携弁護士にも注意してください。電車の中やスポーツ新聞、夕刊紙などに広告を出しているNPOや弁護士はほとんど信用できません。
先生方は、もしも多重債務に陥ったりヤミ金の被害にあっている家庭の存在に気がつかれたら、即刻、弁護士会や司法書士会、被害者の会、消費者センターなどに相談に行くようすすめてください。
そうすれば過酷な取り立てをやめさせることができ、命を失ったり、夜逃げをしたりしなくてすみ、任意整理、調停、個人再生手続、自己破産などの方法で債務を整理し、生活を建て直すことができるのです。
多重債務で厳しい取り立てにあうのは本人だけではありません。家庭や周囲の人も巻き込まれる構造ですから、皆が巻き込まれる可能性があるのです。
ですから私はどうしたら自分や家族や周囲の人を救えるか、最低限の知識を学校で教えてほしいと、常々思っています。授業で教えるクーリングオフとかクレジット契約の仕組みといったことも大切ですが、そこにとどまらずに権利の行使方法を教えてほしいのです。
それは内容証明の出し方、刑事告訴・告発の仕方、告訴状の書き方、行政処分の申立方法、裁判の利用の仕方、自己破産の申立方法などです。もしもそうしたことがわからなければ、権利の行使を支援する窓口である弁護士会などを、子どもたちに教えてほしいと願ってやみません。
法定外利息で貸し付けるのは犯罪行為で、警察は取り締まらなければいけません。また私たちも黙って見過ごしてはいけないのです。