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第3回「金融に関する消費者教育セミナー」(京都)

講演「学校教育における金融に関する消費者教育」

学習指導要領と金融に関する消費者教育

さて、そこで二つ目は学習指導要領についてということですけれども、きょう金融広報中央委員会からお配りいただいている「金融に関する消費者教育の推進に当たっての指針(2002)」の中に大変貴重な資料が入っています。別紙5というのが69ページの折り込みの中にあって、学習指導要領の金融に関する消費者教育の関連箇所を幅広く抜粋していただいております。大変役に立ちますので、ご覧いただきたいと思います。

いままで申し上げましたようなこれからの教育の考え方は、金融に関する消費者教育についてもまったく同じだろうと思っています。特に枝葉の知識というのはあっという間に陳腐化したりするわけですし、また、膨らみ続けるものをすべて網羅的に学校教育だけで指導できるわけではありません。

根幹となるところを押さえた授業をして、発展的に子どもたちが広がりを持つ。将来、学校を卒業しても、自分で広がりを持って吸収していけるような力を育てることが大事になってくるというふうに思います。

学習指導要領には、小学校から高等学校までそれぞれの段階や各教科等でいろいろな内容が入っています。それらを紹介しますと、例えば小学校で言うと、低学年のときは道徳の時間を中核としながら、ものや金銭を大切にするという指導が大事であると思っています。3年生以降でも節度のある生活をするといったことが指導されます。

もとより金銭教育は家庭での教育や実践のところに根っこがあって、それぞれの家庭でしっかりしたお考えでやられているところもありますし、野放図なところもあります。学校でどれくらいできるかというのが課題ですが、金融広報中央委員会等のお力添えをいただいて、それぞれの小学校でものや金銭を大切にすることについての指導がされているということです。

それから、社会科で考えると、中学年(3、4年)で、地域の産業や消費生活の様子について理解するということがあります。そのときに生産や販売に関する工夫とか、消費者としての工夫といったことを学んできます。そういった内容は教科書にも書いてありますし、子どもたちは、地域のスーパーマーケットなどに行って調べ学習をしています。

そして、5、6年では国の産業の学習に進んで、6年生で外国とのかかわりにも目を向けるということで、関係の深い国との経済等のつながりの学習をするわけです。

また、5、6年の家庭科でも、身の回りのものや金銭の計画的な使い方を考え適切に買い物ができるようにするということを扱います。今回、家庭科については消費者教育的な内容が小・中・高等学校を通じて非常に重視されているところです。

中学校になると、主として3年生で勉強する社会科の公民的分野と技術・家庭科が核になります。

社会科の公民的な分野では、身近な消費生活を中心にした経済活動の意義とか、価格の働きに注目して市場経済の基本的な考え方、現代の生産の仕組みのあらましや金融の働き、消費者保護行政を中心にした消費者保護といったことを学びます。貨幣ということも改めてここできちんと学ぶわけです。金融の働き、金融機関がそれを仲立ちしているということを具体的に取り扱って学びます。

それから、技術・家庭科の家庭生活と消費という単元では、いろいろなサービスの選択、購入、販売方法が多様化していること、消費者として適切な行動を取る必要があることなどについて学びます。

例えば販売方法については、中学生の読むマンガの雑誌には通信販売などが載っていますよね。あやしいものがいっぱいありますけれども、そういう通信販売、訪問販売を取りあげて利点や問題点を考えるということ、それから、消費者保護基本法の趣旨、クーリング・オフ制度、消費者生活センターなど各種の相談機関があることなどを基本として学ぶわけです。それから、二者間契約について学んで、即時払いのほかに前払い、後払いがあるといったことを学びます。

そういったことを踏まえて、高等学校の公民科や家庭科の授業に進んでくるわけです。高校では政治・経済や現代社会で、現代社会の諸問題にかかわらせて金融機関の働きとか企業の経済活動と社会的な責任とか、資金の循環とか、そういったことを学習するわけです。また消費者問題と消費者保護についても扱います。

それから家庭科です。これはかなり内容を充実したところです。家庭総合、家庭基礎、生活技術で様々な消費行動等について学ぶわけです。

今日はご専門の先生が多いですので詳しく申しませんけれども、一つだけ付言しておくと、完全学校週5日制が入る中で、社会の変化に対応していく力を育てるために、選択を幅広くできるようにしようということで、全体にわたって単位が小さくなっているのですが、家庭科で2単位科目ができたこと自体が、消費者教育の後退になるのではないかという見方があることについては、私はそうではないと思っています。

というのは、全体として教育内容が厳選されているとはいえ、その一方で、充実した内容があるわけです。消費者教育はきわめてウエイトをかけて充実してあって、これは新旧の教科書をご覧になって、ページ数を単純に見ていただければ、従前どおりかそれ以上になっているものもあります。

私どもは消費者教育を後退させる気は持っていないということです。実際、授業でどこにウエイトをかけるかは、そういう教科書、教材等を使って学校でお考えいただくことですけれども、必ずしも単位の問題と内容の軽重は直結しないということです。

さて、そこで大事なことは、そういうふうに教科・科目の中にポイント、ポイントで入っているものを、それぞれの教科・科目で一生懸命やっていただきますけれども、子どもにとってみれば全体が通じているものですから、公民科と家庭科をいかに繋げていけるか、重複があるなら重複は整理して、それぞれの教科・科目で特色があるならうんと特色づけをしてやるということが大事だろうと思います。どうぞ学校の中でそういう話し合いをしていただければと思います。

そもそもの金融に関する消費者教育にかかわらず、そういうふうに各教科・科目ごとに目標や内容などを示すような形で教育課程の基準、学習指導要領ができていますので、実際にやるときは、社会の変化に対応した諸課題について教科横断的にも見ていかなければいけませんね。

子どもたちにとって必要な諸課題については、それぞれの学校で、うちの学校の教育は大丈夫かと、各教科・科目でちゃんと押さえていって、さらに子どもたちは全体を繋げて理解しているか、そのためにそれぞれの指導の時期や方法は適切かということを見ていかなければいけません。

それはまさに校長先生を責任者として教育課程を編成する学校でやっていただく必要があることです。

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