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─仕事と介護の両立支援制度&介護保険サービスを活用─
介護離職をしないために 仕事と介護を両立させる4つのポイント

仕事と介護を両立させるための大切な4つのポイント

介護は身体的にも精神的にも負担が大きく、仕事と両立するのは容易ではありません。

介護離職をできるだけしないために、知っておいてほしい4つのポイントをお伝えします。

ポイント① 介護に直面する前に必要な情報を得る

政府は介護離職の状況を大きな社会問題と考え、育児・介護休業法等に基づく「仕事と介護の両立支援制度(以下、支援制度)」【図表1】によって仕事の負担を減らし、介護保険制度に基づく介護保険サービス(以下、介護サービス)【図表2】によって介護の負担を減らすことで、「介護離職ゼロ」をめざしています。

仕事と介護の両立(以下、両立)をするうえで、こうした制度やサービスの活用は必須です。

支援制度は、各制度の対象となる労働者であれば、勤務先の業種や規模にかかわらず利用できます。

【図表1】仕事と介護の両立を支援する主な制度
①介護休業
  • 労働者が要介護状態の対象家族を介護するために、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休業を取得できる。
②介護休暇
  • 労働者が要介護状態の対象家族の介護や通院の付き添い、介護サービスの手続きなどの世話を行うために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで休暇が取得できる。
  • 時間単位での取得も可能。
③所定外労働の制限
  • 労働者は要介護状態の対象家族を介護するために、介護が終了するまで所定外労働の免除を請求できる。
  • 1回の請求で1カ月以上1年以内、請求回数に制限なし。
  • 事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は請求を拒める。
④時間外労働の制限
  • 労働者は要介護状態の対象家族を介護するために、介護が終了するまで1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限できる。
  • 1回の請求で1カ月以上1年以内、請求回数に制限なし。
  • 事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は請求を拒める。
⑤深夜業の制限
  • 労働者は要介護状態の対象家族を介護するために、介護が終了するまで午後10時から午前5時までの労働を制限できる。
  • 1回の請求で1カ月以上6カ月以内、請求回数に制限なし。
  • 事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は請求を拒める。
⑥所定労働時間の短縮等の措置
  • 労働者は要介護状態の対象家族を介護するために、対象家族1人につき次の措置のいずれかを、利用開始から3年以上の間で2回以上の利用ができる。

    • 短時間勤務制度
    • フレックスタイム制度
    • 時差出勤の制度
    • 介護費用の助成措置
⑦介護休業給付
  • 雇用保険法の規定により要件を満たした介護休業取得者は休業している間、給与の67%の介護休業給付金を受給できる。
  • 有期雇用労働者は追加の要件を満たすことで受給できる。
  1. ①~⑥は育児・介護休業法に基づく。
  2. 制度を利用できる労働者は、勤務先の業種や規模にかかわらず、原則として要介護状態の対象家族を介護する労働者(日々雇用を除く/有期雇用は要件あり)が対象。①~⑥は就業規則に制度が無くても、申し出により利用できる。ただし、勤務先の労使協定の定めによっては取得できない場合もある。
  3. 要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障がいにより、2週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態をいう。介護保険制度の要介護・要支援認定を受けていない場合でも取得できる。
  4. 対象家族とは、配偶者、父母および子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。
  5. ⑦以外の手続き方法は、就業規則等の規定がある場合はそれに従う。

【図表2】仕事と介護の両立に役立つ介護保険サービス
自宅で利用するサービス
訪問介護
訪問介護員(ホームヘルパー)が、入浴、排せつ、食事などの介護や調理、洗濯、掃除などの家事を行う。
訪問看護
自宅で療養生活が送れるように、看護師等が清潔ケアや排せつケアなどの日常生活の援助や、医師の指示のもと必要な医療の提供を行う。
福祉用具貸与
日常生活や介護に役立つ福祉用具(車いす、ベッドなど)のレンタルを行う。
日帰りで施設等を利用するサービス
通所介護(デイサービス)
食事や入浴などの支援や、心身の機能の維持・向上するための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供する。
通所リハビリテーション(デイケア)
施設や病院などにおいて、日常生活の自立を助けるために理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などがリハビリテーションを行い、利用者の心身機能の維持回復を図る。
宿泊するサービス
短期入所生活介護(ショートステイ)
施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練の支援などを行う。
家族の介護負担軽減を図ることができる。
居住系サービス
特定施設入居者生活介護
有料老人ホームなどに入居している高齢者が、日常生活上の支援や介護サービスを利用できる。
施設系サービス
特別養護老人ホーム
常に介護が必要で、自宅では介護が困難な方が入所する。
食事、入浴、排せつなどの介護を一体的に提供する(原則要介護3以上の方が対象)。
介護老人保健施設
自宅で生活を営むことができるようにするための支援が必要な方が入所する。
看護・介護・リハビリテーションなどの必要な医療や日常生活上の世話を提供する。
小規模多機能型居宅介護
利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心に、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組み合わせて日常生活上の支援や機能訓練を行う。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期的な巡回や随時通報への対応など、利用者の心身の状況に応じて、24時間365日必要なサービスを必要なタイミングで柔軟に提供する。
訪問介護員だけでなく看護師なども連携しているため、介護と看護の一体的なサービス提供を受けることもできる。
(出所)
厚生労働省「介護保険制度について」を基に作成

(介護サービスの対象者と負担額)

介護サービスは、介護保険の加入者で、要介護または要支援の認定を受けた40歳以上(40~64歳は要件あり)の方が対象になります。

自己負担額は1割から3割ですが、自治体によってサービス内容や要件が異なります。

また、要介護者の見守りなど介護保険制度で提供できないサービスを必要とする場合は、全額負担になりますが、民間事業者などが運営する介護保険外サービスも視野に入れましょう。

(介護サービスの事前準備)

介護はいつ始まるかわかりません。

介護に直面すると精神的にも時間的にも余裕がなくなりがちなので、必要な制度やサービスについて前もって調べておくことが大切です。

とくに支援制度は、労使協定によって条件が異なったり、会社独自の支援制度を設けている場合もあるので、勤務先の就業規則を確認しておきましょう。

支援制度の相談先は、勤務先の人事労務担当や各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)となり、介護サービスについては、要介護者が住む市区町村の窓口や地域包括支援センターなどになります。

ポイント② 日ごろから職場に家族の状況を伝える

両立には、周りの協力や助けが不可欠です。介護は誰でも直面する可能性があるため、日ごろから同僚や上司に自分の家族の状況を伝えておくことで、介護に直面したとき「お互いさま」という気持ちから、協力が得やすくなります。

また、家族が遠隔地にいる場合は、近所の協力が大きな助けになることもありますので、ふだんから良好な関係を築いておくとよいでしょう。

ポイント③ 介護に直面したら必ず会社に相談する

両立とは「介護をするために働き方を変える」ということですから、会社への相談は最優先であり、もっとも大切なポイントと言えます。

介護の状況や働き方の要望を伝えることで、今後の両立プランについて会社と話し合うことができるようになります。

(多くの方は相談前に離職している)

しかし厚生労働省のデータを見ると、介護離職経験者の中で勤務先に介護の相談をした方の割合は約25%で、多くの方は相談をする前に離職してしまいます。

理由として、介護で仕事を休むという前例が勤務先に少ないなど、職場の環境で制度を申請しづらかったり、介護というプライベートなことを仕事に持ち込んで、職場に迷惑をかけたくないという考えを持つ方がまだ多いためと思われます。

会社にとって労働者の離職は大きな損失です。

支援制度の活用は会社と労働者の両方にメリットがあるので、臆することなく会社に相談してください。

ポイント④ 介護をし過ぎず自分の時間を確保する

両立の生活では「仕事の休み=自分で介護」と考えがちですが、ゴールが見えづらい介護にプライベートの時間をすべて費やすのは避けましょう。

精神的にも肉体的にも疲弊して、介護放棄といったトラブルにもなりかねません。

「介護はプロの手で」と考えて、仕事が休みのときこそ介護サービスや介護保険外サービスを積極的に活用しましょう。

つづく

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