─生活・育児支援、就業支援、経済支援、交流場所の提供─
ひとり親家庭が抱える問題や悩みを4タイプの支援制度を活用して軽減
(特に重要な制度や注目の支援事業)
重要度&注目度が高い支援制度をチェック
支援制度や支援事業の中で、特に重要な制度や注目の支援事業をいくつか紹介します。
児童扶養手当
母子家庭の7割超が受給しています。この児童扶養手当の受給が、ほかのひとり親支援制度を受ける要件になることが多く、制度を活用するうえでまず押さえておくべき支援です。
手当の受給以外に、JRの通勤定期の割引や水道・下水道料金の減免など、さまざまな優遇支援を受けられることもポイントです(要申請。自治体によって優遇内容は異なる)。
2021年の改正で、障害年金受給者についての併給調整が見直しされ、児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の額を上回る場合、差額を受給できるようになったことも、知っておくとよいでしょう。
母子・父子自立支援プログラム策定事業【図表3】脚注3
2005年度から実施されている、児童扶養手当受給者などを対象とした就労支援事業です。支援は、次のような流れになります。
- 福祉事務所などに配置された自立支援プログラム策定員が、個別の面接で各家庭の生活状況や資格取得などについての状況把握を行い、個々のケースに応じた「自立支援プログラム」を策定します。
- プログラムに基づいて、母子父子寡婦福祉貸付金や保育所の優先入所などの支援を活用して就業をめざします。
また、ハローワークや母子家庭等就業・自立支援センターとも連携して、就職支援ナビゲーターが面談で就労支援メニューを決定。
職業紹介トライアル雇用の活用などで就業を支援してくれます。 - 就業して自立した後も、アフターケアによって自立した状況を継続できるように支援してくれます。
この制度は、各家庭の実情に応じ、就業に向けたきめ細かい支援策を作成してくれるので、ぜひ活用を検討してみてください。
また、過去にはひとり親世帯を対象にした給付金が実施されたことがあるほか、2022年度は、低所得のひとり親世帯を含む低所得子育て世帯への給付金が実施されています。こうした給付金の情報について、アンテナを高く張っておきましょう。
自治体独自の支援制度にも、注目したい制度は少なくありません。
「ひとり親家庭等医療費助成制度」は、公的医療保険が適用される入院や通院にかかる自己負担金を一部助成し、中学生までの子どもについては無償としている自治体もあります。
「ひとり親家庭住宅手当」は、住宅の家賃として5,000円から1万円程度の手当が支給されます。
このように、国や自治体でさまざまな支援制度が用意されていますので、ご自分の住んでいる自治体に問い合わせてみてください。
そのほか、ひとり親家庭に限定しない支援制度(低所得者対象など)なども忘れずにチェックして、活用できる制度を見逃さないようにしましょう。
ひとり親家庭に必要な支援が行き渡るためには周囲の役割も重要
ひとり親家庭は、経済的な困難だけでなく、情報や人とのつながりが十分でないという困難も抱えています。
国や自治体、民間では、その軽減・解消のための支援に力を注いできているのはこれまで見てきたとおりです。
子どものため、1人で子育てしているご自身のため、抱えている困難を少しでも減らすべく、まずは、そうした支援制度・活動に関する情報を集めることから始めてみてください。
また、ひとり親家庭は、経済的・時間的に余裕がなく日々の生活のことで精いっぱいになりがちですが、少し先の将来を考えることも大事です。
子どもの成長に合わせて「こうありたい、こうなりたい自分」を描くことで、それに向けてどういう支援機関や制度を利用するかを考えることができるようになります。
ただ、実際問題として、生活に余裕がない中で、支援を受けるために必要な情報を集め、関係機関に相談するなどの行動を起こしたり、少し先の将来を考えるといった「一歩」を踏み出すことが難しいひとり親家庭も多いと思います。
そこで大事になるのは、ひとり親家庭の周囲の人です。
支援を必要としているひとり親家庭に、今回ご紹介した制度を伝えるといった、周囲の「一歩」もまた、ひとり親家庭の孤立を防ぎ、抱える困難軽減に向けた助けになり得ます。
支援制度の活用や周りのサポートで、ひとり親家庭が、お子さんと一緒に健やかな家庭を築いてほしいと願っています。
今回のまとめ
- ひとり親家庭は経済的・社会的基盤が相対的に弱い。
- まずは支援制度を知ることから始めてみる。
- ひとり親へ情報を届ける周囲の役割も重要。
- 脚注2
- (出所)厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要について」を基に作成
- 脚注3
- (出所)厚生労働省「母子・父子自立支援プログラム策定事業」を基に作成