平成25年度 春期研修会
3.『これであなたもひとり立ち』執筆者による実践指導
「ワークを活用したこれからの家庭科の授業」
元 新潟県立長岡向陵高等学校 教諭 池山 純子 氏
私はかつて高等学校で家庭科が男女必履修になる時に、男子の興味・関心をどう家庭科にむけさせるか工夫を迫られました。当時考えた経済・住居の分野を強化し、楽しく主体的に学ばせるための工夫点を『これであなたもひとり立ち』に盛り込んでいます。
生徒に同書を配ると、「ひとり暮らしの自立度チェック」などは楽しみながら自分で進んで記入します。そしてワーク2「私の命を育んだお金はいくら?」を演習すると、自分を育てるのにどれだけのお金がかかったのかを理解し、皆、親への感謝の念を持ちます。この気持ちをモチベーションにして、その後のワークを進めていきます。
現行学習指導要領の下で多くの学校で2単位の家庭基礎が開講されるようになり、消費生活分野に時間がとれなくなったという現実があります。この点については、ワークの学習手順等のデジタル化や、他領域とのドッキングによって、授業時数を確保することなどが有効と考えます。
同書のワーク6「ひとり暮らしの部屋探し」とワーク7「ひとり暮らしの快適空間」を活用した授業の進め方を紹介します。事前に、広告チラシ、業者が使わなくなった住宅情報誌、進路室にある大学進学者向けのひとり暮らしガイドなどを、できれば生徒の人数分確保しておきます。まずワーク6で、契約用語を理解し、選んだ物件の経費を計算します。次にワーク7で物件の平面図を描きますが、その際、下書きに製図用の建築方眼を使用し、専有面積を畳数に換算する指導をしておくと先生方の点検が短時間でできます。鳥瞰図にするとカーテンが必要だといった具体的な点にも気づきやすくなり、また部屋の中の危険な所を考えさせることもできます。このワークで、住居衛生、住宅問題、製品安全・環境と防災なども扱うことができ、他領域とのドッキングによる授業時数の確保につながります。
ワーク5「ひとり暮らしの生活費」では、収入総額と支出総額が合うように、それぞれの支出項目の金額を記入させます。私は教え子だった卒業生の「ケータイ家計簿」の金額を、生徒に身近なデータとして授業で使わせてもらいました。
ワーク8「カード社会の歩き方」は、私たちの渾身の作です。カード社会全体を生徒が通帳の宇宙船から眺めています。リボルビング払いに関する「みなさんこれになさいます」というカード会社の宣伝文句や、その他の登場人物の会話もよくご覧ください。ワーク8-2やワーク9「金利と法律に強くなる」では、計算することで学習効果を期待したいのですが、これを2単位の家庭基礎で行うのは難しいので、ワーク5とともに学習手順等のデジタル化が必要と思われます。
ワーク9では、弁護士の宇都宮健児先生からいただいたヤミ金の取り立ての電話を録音したテープを聴かせると、生徒は悪質な業者から借りることの怖さを実感するようです。そして、預貯金は自分でできる保険であることを生徒に伝えます。
同書のワークを通じて、収支記録の習慣、健全な金銭感覚、ノーと言える強さ、おかしいと気づくアンテナ、相談できる心のゆとり、契約、法律やクレジットの知識、金利の計算能力、健康維持力を身につけることによって、生徒が消費者力をつけ、ひとり立ちすることができるようになると考えています。
これであなたもひとり立ち~自立のためのWORKBOOK~
これであなたもひとり立ち~自立のためのWORKBOOK~【指導書】