お金について学ぶ 国際シンポジウム
パネルディスカッション
「今なぜ、学校や家庭でお金に関する教育が必要なのか」
身近なところからの教育が一番重要
野田 では視点を変えまして、親子の間でのお金の問題の扱い方をうかがいたいのですが。
ライシュバック これは米国でも一番難しい部分です。全米経済教育連盟のフィットネス・フォー・ライフに、家庭のなかで親子のお金に関する話し合いを進めようというプログラムがあります。
一つやっておりますのは新聞や雑誌を通じての活動で、週に一回金融教育の専門家によって記事が掲載され、それを通じて両親を教育しようとする方法ですが、効果のほどはまだわかりません。
寺脇 家庭も大事だけど、この際家庭も含めた地域社会というグラウンドで考えて、地域の学校を通じて皆で子どもに関わっていくことが大事なんじゃないでしょうか。
いちのせ 我が家では子どもを実験台にしているところがありますね(笑い)。お年玉は親類の人がみんなくれるでしょ。これ問題ありますよね。子どもたちには毎年1月31日に何に使うとか何のために貯めるというのをお礼状にして出させています。
またお小遣いは査定制度にしており、米ドル札で渡しています。するといつ円に替えるかと考えていますよ。上の子は高校生になりましたので、年俸制度にしました。一週間のスケジュールを作らせて、家でどういうことをするのか、それを時間給で計算させて、毎年3月に交渉しています。
高橋 私も子どもたちを実験台にしてきたかもしれません(笑い)。お年玉も私が『お母さん銀行』になり、定額貯金の証書を見せてそれと同じものを子どもたちに作らせました。そうすれば決めた期間は解約できないとか、利息はどう書くかなどを学びますので。
当時の市中金利は5%、それより1%高く6%に利息を設定しましたが、子どもは不安になるわけです。「どうしてお母さんはそれが払えるのか」と。そこで「お父さんのお小遣いが少なくなったときに7%で貸す。これを利ざやという」と説明すると、ますます子どもは不安になって「お父さんが返さなかったら、僕のお金はどうなるの?」
そこで貸倒引当金や不良債権について教えました。そういう実践教育を楽しみながらやるといいのでは?
ライシュバック 私も2人娘がおりますが、一人にうまくいった方法がもう一人にもうまくいくとは限らないということを経験しました(笑い)。お小遣いに関しては、私もインフォーマルな銀行を作って小遣い帳をつけさせました。
野田 教育と構えるより、身近なところから始めるのが一番大事なのかもしれませんね。
寺脇 こういう学習をやりたい、とプログラムを作ったら、直接学校へ提案するのが一番です。また文部科学省が総合的な学習についての情報ホームページをもっていますので、そこへ登録するのも一つの方法です。
ライシュバック いかにお金が働き、人とお金がどのように関連を持ち、また人がどのようにお金を管理するかなど、金融教育はとても面白く素晴らしいものです。日本には金融広報中央委員会もあります。こうした組織があればコーディネーションができて金融理解度を高める意識の広がりをきっと作っていけるでしょう。
いちのせ 金銭教育は、躾の部分と知恵の部分があり、できるだけ小さい段階でしっかり学んでおくべきだと思います。
まとめ 野上圭