金融・生活シンポジウム2003
どう変わった?暮らしとお金~金融ビッグバンがもたらしたもの~
パネルディスカッション
(4) 金融機関と預金者が協力して地域社会をつくる努力を
荻野 国民からは、銀行は儲けてくれ、しっかりしろという注文と、銀行は公共的であれという注文の両方があると思います。そのあたりを整理していただきたいのですが。
山口 今、金融機関も借り手の企業も非常に苦しい状態にあります。そういう時に、育ちあい、育てあいの関係をもう一回つくることが大事だと思います。これが金融機関に対する信頼につながっていきます。
平成15年の3月に「リレーションシップ・バンキングの機能強化に向けて」という答申を政府の審議会が出しました。リレーションシップ・バンキングとは金融機関が地域の経済にしっかり貢献して、借り手と貸し手の間の長期の関係をしっかりと念頭におきながら、お互い育てていきましょうということです。
私は金融機関に対して公共性とか社会性といった観点から情報公開を求めたり、評価したりする金融アセスメント法という法律を提案しました。今、その法律の制定を求める運動が全国に広がっています。
金融機関の側も地域に対して、われわれはこんな風に頑張ってますと、積極的に情報発信していけば、預金も集まってくることになるはずです。
預金者も、地域経済、地域社会をつくっていくうえで、自分も預金者として参加しているという意識を持つことがこれからは必要になってきます。そういう預金者がたくさんいることで金融機関の社会性、公共性が発揮され、地域に「育ちあう」関係ができてくると思います。
荻原 今実際に金融機関は、中小企業に貸し出して焦げつくのが怖いので、個人をターゲットにしています。投資信託とか外貨預金とか、手数料でたくさん儲かる商売です。そのほか、サラリーマン向けの住宅ローンが増加しています。
個人の家庭は結構借金漬けになっていますし、ちょっと余裕があると投資信託とか外貨預金とかに手を出して、損している家庭も多いようです。無知なまま金融機関と付き合うと、そういうものにどんどん誘導されていってしまいます。
山口 先ほど預金者の意識といいましたが、たとえば株式の投資で、自分たちの社会的な倫理観とか関心度に応じて投資をするという人たちも増えています。社会的責任投資といいますが、長期間でみると、社会的責任投資の考え方で運用したほうが利益が出るということも出てきているのです。
そう考えると、目先の利回りとか金利だけではなく、自分たちの倫理観とか社会観とか、価値観とかそういうものを大事にして、運用していくことも考えていいと思います。
大石 リレーションシップ・バンキングは、実務に携わっている人間からいうと、必要条件であって十分条件ではないと思います。企業に投資をするとしても、その中で本当に伸びる企業かどうかを見極める力というのは、最終的には投資家のほうに必要になってきます。十分条件というのは、結局相手および自分にどの程度のスキルがあるかにつきるのではないかと思っています。
荻野 それではお三方の人生設計を聞かせていただいて終わりにしましょう。
山口 年金や医療など基本的なセーフティネットは、公的に確保されるべきだと思います。そういうことを発言していくことが、私の老後対策だといえるでしょう。それから、困った時にいろいろな人から知恵を借りられるような知的なサポートネットワークをたくさん張り巡らしておくこと、これも私の老後に向けての重要な対策です。
荻原 物事を鵜呑みにしない。それから疑う、調べる。これがすごく大切だと思います。とりあえず調べて、いろいろ疑って、それで納得して、行動に移せば、そこに自己責任というのが出てきますよね。そういう生き方をしていきたいと思っています。
大石 一応五つのことをアドバイスしたいと思います。一つは預金をしっかり分散する。二つめは借金をしない。三つめは不動産の評価です。自分が今住んでいるところがどの程度の価値か一回調べておいたほうがいいと思います。
四番目は子どもです。生活力がある、自分でお金の勘定ができる子どもを育てることです。最後は収入の確保。自分なりの収入、それも年金や株式に頼らない収入確保の方法です。預金、借りない、不動産、子ども、収入の確保の五つが大事かなと思います。