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金融・生活シンポジウム2002

変わる金融、変わる消費者~自己責任時代を賢く生きる~

パネルディスカッション

(3) 生活設計と自己責任

佐藤 では次に「私たちの暮らしや家計をどう見直していくか」というテーマに移りたいと思います。生活設計(ライフプラン)と言われてもピンとこない人もいます。基本的な考え方を、まず伊藤さんにお伺いしたいと思います。

伊藤 ライフプランとは生活のプランを立てていくことです。ひと昔前は、誰でも同じような生き方だったのではないかと思いますが、今は経済が成熟化し、生き方も多様になっています。自分の生き方を実現するためには精神的な自立と経済的な自立が大変重要だと思います。

野中 計画性があるのは素晴らしいなと思うのですが、同時に何が起こるかわからないというのも人生です。

金融広報中央委員会が調べた貯蓄の目的では、複数回答で上位3位が、1.いつ病気になるかわからないし、何かあったときに困る、2.年老いたときにどうしたら良いのか、3.子どもの教育にお金がかかる、なんですね。

何が起こっても国が面倒を見てくれるというシステムをとっている国もあります。良い悪いではなく。それは税金で担保しているわけです。そうなるとほとんどの人が働いて70%くらいは税金で納めている。税金を使ったシステムを選択している地球人もいるわけです。

そうすると、何でも貯めないと老後が不安だという思いに駆り立てられるだけなく、タックスペイヤーとして税金の使い道をチェックする力、知力も付け始めることで、「納めるものは納めるけど、そちらも良いものを作るという政治をしてごらん」という発言者になることも必要だと思っています。

私たちが主人公になることがはじめの一歩だということに気づいて良い頃かなと思います。

佐藤 将来の生活設計を考える場合に年金制度の改革論議が進んでおります。この辺について翁さんにご意見を伺いたいと思います。

 2050年で65歳以上の方が35.7%、2.8人に1人がお年寄りになるということで、どの国よりも急ピッチで高齢化が進んでいくようです。そのため、公的年金制度も逆風にさらされていて、若年層の負担が増え、高齢者の給付は減らす方向にあります。公的年金制度は、5年に1回抜本的見直しをすることになっていますが、むしろもう少し抜本的に改革してはどうかという声もあります。

例えばスウェーデンやドイツ、アメリカなどでも公的年金制度を抜本的に改革する動きがありますから、日本でもそういった論議は避けられないと思います。

年金制度と生き方の多様化は密接に絡んでいまして、これからは共稼ぎをモデルにした年金設計を考えなくてはならないのではないかという議論も行われています。

高度成長期というのはサラリーマンは一生を企業に預ける感じだったわけですが、それでは企業が耐えられなくなり、確定拠出型年金を提案する企業が増えています。サラリーマンでも個人で資産運用するわけですから、ますます自己責任が問われる時代になってきています。

我々消費者は年金制度の動き、改革の動きにも目を光らせながら、将来設計をきちんとやっていかなければならない時代に入っているのかなという感じを持っています。

佐藤 生活設計を立てる上でのノウハウについて専門家の伊藤さんに教えていただきたいのですが。

伊藤 ライフプランを作るためのスキルは、これからは誰でもが持っていなければならないものになるのではないかと思います。ライフプランを作った上でマネープランを作らなければいけない。紙を1枚用意して、家族の年齢を書く。子どもの学校の入学年度を把握し、住宅はいつ買うか、ローンは何年にするか、退職するのは何歳で、再就職はどうするか、1枚のシートに作っていきます。

そのうえで教育資金、住宅資金、老後資金という三大資金をどうするかを考えます。教育資金や老後資金が不足しないよう、住宅資金は抑えた方がいいというのが私の考え方です。

教育資金も学歴の時代ではないので、子どもの実力にどうやってお金を使うのか考えなければいけない。自己責任で老後の資金をどうやって早めに貯めたり、運用して作っていくかということが全ての人の課題になっていると思います。

それから、今高齢の方で資産をお持ちの方は個人のバランスシートを作って、資産構成が時代にあっているのかを点検していただく必要があるでしょう。

また、生活上のリスクが非常に高くなってきていますから、とっさの時のお金はある程度必要でしょう。それから老後資金を中心に、長期で増やしていくお金が必要です。資産の部の中に、今、問題が出ている預貯金と不動産だけでなく長期運用の資産を作る時代がやってきていると思います。

佐藤 野中さんは今の伊藤さんのお話を聞いてどのような印象を持たれますか。

野中 大変具体的なアドバイスだと思います。このままじゃいけないなというのはわかってきました。ところがその先にいろいろな商品がでてきて、自己責任という単語だけが両肩にずしんときている。

落ち着いて見てみると、どれがどういうことで、その先に何が起こるか、それがわからないから不安なのですね。1人1人の国民が自信を持って自分の人生と自分が稼いだお金の使い方、付き合い方、これを知る知力が必要なのだと思います。

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