金融・生活シンポジウム2002
変わる金融、変わる消費者~自己責任時代を賢く生きる~
パネルディスカッション
(1) 金融ビッグバンで何が変わったか
佐藤 金融ビッグバンのもと、ここ数年金融制度の様々な変革や規制緩和、撤廃が行われてきました。また、金融商品やサービスが多様化し、自己責任という言葉も定着してきました。こうした変化の時代、消費者が求めているのは、より豊かな生活を送るために変化をどう捉え、どう行動すればいいかということだと思います。
まず金融ビッグバンで何がどう変わったのか、という点から話を進めたいと思います。金融制度に詳しい翁さんからお願いします。
翁 ビッグバンで変わったことを五つにまとめてみました。
一つ目は「金融新商品の登場と広がり」です。例えば、株式投資信託、不動産投資信託や証券化商品など様々な商品が現れました。
二つ目は「業態を越えた金融商品の取扱」です。銀行の窓口でも投資信託や一部の保険商品などを購入できるようになったのがその一例です。
三つ目に「業態を越えた金融グループの形成」。大手銀行が四つのグループに再編されただけでなく信託銀行との業務提携、生命保険会社と損害保険会社の業務提携など、グループ一体として顧客への様々な商品の提供が可能になってきています。
四つ目として「他業種による銀行業への参入」です。技術革新を活用した新銀行は、従来の銀行と違い、効率的に事業展開できる可能性を秘めています。
五つ目は「金融商品販売法、消費者契約法の制定」です。新商品の販売にともなって新しい法律が制定され、消費者保護の取り組みが本格化しています。
佐藤 こうした金融商品の多様化について、消費者の声を直接聞かれる機会も多い伊藤さんに印象をお伺いしたいと思います。
伊藤 一言で言うと「戸惑っている」のではないでしょうか。安全だと言われたMMFが元本割れしたり、資金を預けている金融機関も信用に不安があるという声もあります。
佐藤 野中さん、いかがでしょうか。
野中 ここで私が確認しておきたいのは何が変わっていないかです。50年前、焼け野原から日本丸がスタートしたときは、善良な市民は勤勉に働くことで、その対価としてのお給料はだんだんと上がり、入ってくるお給料は金融機関に任せておけばよかった。お金に疎いほど善良な人のようなイメージがあります。
その意識が変わらないのにペイオフだとかいわれてもよくわからないし、銀行や証券会社も潰れたりして、残るのは不安の二文字です。そんな時代、大事なのは社会の動きを読みとる力と、自分の人生の主人公は自分だと再認識することです。
自己責任と言われると心配ですが、自分で決めることができると思えば少し安心できるのではないでしょうか。
佐藤 消費者の金融機関に対する意識はどうなのでしょう。
伊藤 金融ビッグバンが始まってから一般の方が金融機関の格付け情報をみて評価をし始めたところがあると思います。金融機関の評価をしないといけなくなったと同時に、金融商品をどう選んで運用したらいいかという問題に直面するようになったのではないかと思います。
佐藤 基本的な消費者の意識は変わっていないというお話がありましたが、金融機関に対する意識や信頼感が変わってきているような気がしますが野中さん、その辺はいかがでしょう。
野中 銀行にお金を預けるというと上の方にお願いしますという感じがありますけど、「銀行にお金を貸している」というと途端に自分が主人公になる。御上が何とかするのではなく自分がどうするのか、といえる時代を楽しまないと損だと思いますね。
翁 ペイオフの解禁が話題になって、今の消費者はますます安全志向が高まっていて、当初ペイオフ解禁で期待された貯蓄から投資へという流れとは逆の、やや皮肉な結果になっているのが現状です。
預金者が金融機関を選ぶという機運は少しずつ高まっています。金融機関も経営内容を情報開示しようという動きも出てきていますが、全体としてみると預金者一般に対してわかりやすいものにはまだなっていないというのが率直な感じです。