第44回 全国婦人のつどい
「くらしと経済」
特別講演(要旨)「どうなる新世紀のくらしと経済」
日本経済低迷の実態
21世紀になって2年目に入っていますが、日本経済は相変わらずすっきりとしません。ただ、この状況をきちんと捉えることができれば、少しは展望が開け、元気が出るのではないかと思い、そこからお話しさせていただきます。
さて、日本の景気は1991年の春頃から悪くなりました。その前の昭和時代の最後の5年間ぐらいが非常に景気がよかったため、その反動で少し悪くなるのはしかたがない、2~3年でよくなると思われていました。
しかし、この時期からの平成不況は、10年が経ってしまいました。これほど不況が長く続いたことは、戦後例がありません。この間、政府や日本銀行は一生懸命に政策対応を行いました。財政は一貫してフル出動し、国債も大量に発行しています。公定歩合にいたっては0.1%という、ゼロ金利に近い状態です。一国の基準レートが1%を切るなどということは世界でも例がありません。これほど努力しても景気が良くならないのです。
この景気低迷の象徴としてあげられる指標が三つあります。一つは株価です。株式市場はそのときの思惑や噂、見通しなどでも動きますから、必ずしも経済や企業の実態を正確に反映しているとは言えませんが、長い目で見ると景気のバロメーターになっています。日経平均株価は1989年12月の大納会で、38,915円まで上がりました。今の株価は1万円くらいですから、12年間で4分の1の水準になってしまったというわけです。
二つ目は地価です。1991年の秋から10年間ずっと下がり続けています。6大都市の商業地の地価は、1991年を100とすると今は30程度です。平均で7割程度下がったわけです。都心の一部で下げ止まったところもありますが、全体ではまだ底値が見えない状況です。
三つ目は金利です。公定歩合は1990年代の最初は6.0%でしたが、先にも述べましたように今は0.1%です。1千万円を定期預金にして1年預けたとすると、利率0.032%(税別)の計算で利息はわずかに約3千円です。ちょっとしゃれたランチを食べたら終わりです。
現在の金利では、1億円の宝くじに当たって定期預金に預けたとしても、年間の利息はわずかに約3万円です。10年前は年間利息が約6百万円になりましたから、利息で生活ができたはずです。こうした低金利の状態がもう6年も続いており、今年もこうした状態に変化はなさそうです。
政府、日本銀行、そして企業は考えられるあらゆる手を打っているのに、状況はよくなるどころか悪くなっています。日本経済にいったい何が起こったのでしょうか。その要因を、私がこれまで学んできた経済学から分析したいと思います。