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キャッシュレス時代における家庭の金銭教育
キーワードは「親子で学ぶ」

(おこづかいのキャッシュレス化)

おこづかいのキャッシュレス化の現状について

キャッシュレスを家庭で学ばせるまでの大まかなステップです。

  1. 日常生活の中で、お金の流れやお金には限りがあることを教え、その価値を認識させる。
  2. おこづかいやお使いで現金を使う体験をさせて、お金の管理の必要性を身に付けさせる。
  3. おこづかいとしてキャッシュレス決済を利用する。

家庭の金銭教育において、おこづかいの活用は最適な学びの場ですが、キャッシュレスでおこづかいを渡している方は、まだまだ少ないのが現状です。

私が監修した小学生の子どもを持つ保護者を対象とした調査では、「おこづかいの渡し方」で90%以上の方が現金のみで渡しており、キャッシュレスで渡している方は、現金との併用を入れてもわずか6%でした。「今後のおこづかいにキャッシュレスを取り入れたいか」についても、「取り入れたい」と答えた方は30%未満という結果でした。

キャッシュレスをおこづかいに取り入れていない保護者からは、「現金の方が重みがある」、「使い過ぎてしまわないか心配」という声が聞かれており、現金への根強い安心感が見受けられます。

おこづかいを「現金で渡す」のと「キャッシュレスで渡す」のとでは、それぞれメリットとデメリットがあり【図表3】、その特性を理解したうえで渡し方を決めることが大切です。

【図表3】おこづかいの渡し方の比較
  メリット デメリット
現金
  • 基本的にすべての店やサービスで使える
  • お金の価値を実感しやすい
  • 何に使ったか把握しにくい
  • 現金を持ち歩くことによる盗難や紛失のリスクがある
キャッシュレス
  • 支払いが手軽で簡単
  • 使用履歴が分かり管理しやすい
  • 非対応の店やサービスがある
  • お金の価値を実感しにくい

お金の価値が分かり、管理の習慣がある程度身に付いていれば、キャッシュレスを取り入れてもよいと思います。その際、キャッシュレス決済が使えない場面もあるので、現金と併用するのが良いでしょう。

キャッシュレス決済は、使用履歴が分かるので管理しやすく、プリペイド型を選べば使い過ぎの心配もなくなります。

そして、お金の学びの王道は「子どもにお金の経験を積ませる」ことです。

キャッシュレス決済も、保護者の目が届く年齢のうちにいろいろな場面で使わせた方が、正しい知識と使い方を身に付けられると思います。セキュリティ対策をしっかり行い、リスクを理解させる必要がありますが、子どもは大人が思っている以上にITリテラシーが高く、すぐに使いこなします。

もし保護者自身が使ったことがないのであれば、子どもに使わせる前にご自分で使ってみて、キャッシュレスの良いところや悪いところを体感してほしいと思います。

ルール決めと定期的な確認で、おこづかいをお金の学びに

おこづかいを「子どもの金銭教育の場」とするなら、現金でもキャッシュレスでも、渡しておしまいという訳にはいきません。とくに、おこづかいの開始前に決める「おこづかいのルール」と、定期的に行う「使い方の確認」は、とても重要な役割を持っています。

おこづかいのルールは、保護者が使い方を管理するための指針となります。

定額制か報酬制か、おこづかいで買う範囲とそれに合わせた金額、キャッシュレスと現金の金額の振り分け、足りなくなったときの対処、おこづかい帳の記録、保護者の管理方法など、決めておきたいことはたくさんありますが、あまり神経質にならず、いつでも見直せるくらいに考えておくとよいと思います。

大切なことは、子どもとよく話し合って、子どもが納得するルールにすることです。話し合うことで、子どもなりにお金を使うことの意味を考え、お金の大切さを感じてくれます。それに、自分で決めたルールであればちゃんと守ろうという気持ちが強くなるものです。

保護者が定期的におこづかいの使い方を確認することも、子どもにお金の管理を学ばせる大切なポイントになります。

前月のおこづかいの使い方を子どもと話しながら確認し、ルールに沿って翌月のおこづかいを渡せば、スムーズに行えると思います。おこづかいを確認するうえで、重要な役割を持つのがおこづかい帳です。

保護者が管理するためだけに使うのでなく、子ども自身が自分のお金の使い方を顧みて反省するための教材になるからです。実際には、おこづかい帳をつけている子どもは小学生では2割前後にとどまります【図表4】。

【図表4】「おこづかい帳」をつけているか(小学生)

棒グラフ。低学年では、「はい(つけている)」19.6パーセント、「いいえ(つけていない)」73.5パーセント、「無回答」6.9パーセントです。中学年では、「はい(つけている)」24.1パーセント、「いいえ(つけていない)」72.4パーセント、「無回答」3.6パーセントです。高学年では、「はい(つけている)」21.8パーセント、「いいえ(つけていない)」75.0パーセント、「無回答」3.2パーセントです。

(出所)
金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度調査」

おこづかい帳をつけることが苦手な子どもには、おこづかいを封筒などに入れて渡して、その中にレシートを入れることにしたり、買ったものをその都度袋に記入するなど、子どもができる範囲でかまいません。

また、キャッシュレスの場合、パソコンやスマートフォンで使用履歴が分かって便利ですが、何に使ってお金が足りなくなったかを理解させるには、自分の手で記録させるほうが良いと思います。

キャッシュレスによるおこづかいの使い方について、保護者から増えている相談はゲーム課金ですが、私は、おこづかいのルール内でやり繰りが収まっているなら、頭ごなしに叱るべきではないと考えます。

保護者がおこづかいを管理する範疇は、子どもと一緒に決めたルール内が原則です。ルール内であれば、どのように使っても、あまり口を出すべきではありません。そうは言っても必要な物を買うお金が足りなくなることは問題です。その場合には、子どもと話し合って「ゲーム課金は毎月いくらまで」などルールを見直すと良いでしょう。

つづく

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