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アウトドアのスキルが役に立つ 楽しみながら備える新・防災術

冬こそ!キャンプで避難シミュレーションを

キャンプの知識と道具、技術を持っていれば、いざというときも無理のない避難ができます。

とはいえ、慣れていないと役立てることはできません。

寒い季節にこそキャンプを楽しみましょう!

初心者・一般向け

  • 事故、災害

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  • 避難シミュレーション

なぜ冬にキャンプを?すすめるその理由とは?

冬にキャンプというと意外に感じる人は多いかもしれません。

確かに、キャンプは夏にするものというイメージがあると思います。

けれども私が冬キャンプをおすすめするにはいくつかの理由があります。

まずは、近年の気候の変化です。

いまや夏の猛暑・酷暑は野外で過ごすには危険なレベルになっています。

北海道や避暑地とされる高原でも、昼間は30度を超えます。

慣れないキャンプで体調を崩してはいけません。

暑い期間も長くなり、春や秋らしい気候の時期はごくわずか。

それに対して寒い時期は11月頃から3月頃までたっぷりあります。しかも夏よりもすいていて静かです。

近年は冬キャンプ人口が増え、冬場もオープンしているキャンプ場も増えています。

また蚊やアブなどの害虫がいません。

夏は熱くて近寄りたくない焚き火も、寒い季節ならじっくり楽しめます。

景色は澄んで見え、空気が乾燥していて雨が少ないのも利点です。

さらに、キャンプ道具や山道具は基本的に、体温を維持して身体の安全を守れるよう“暖かく過ごすため”に作られたものが多く、その方向で開発された素材や道具も、今はかなり充実しています。

衣類や寝袋などのほか、暖を取ったり調理したりできるストーブも、薪・灯油・カセットボンベなどさまざまな熱源のものが出ています。

キャンプ用ストーブの写真
キャンプ用ストーブにはさまざまなタイプがある

中には、ポータブル電源やキャンプ場の電源を使い、電気毛布やコタツを持ち込む人もいます。

そして、私が冬キャンプをおすすめする最も大きな理由は、災害はどんな季節に起きるかわからないことです。

寒さ対策などの工夫や備えが必要な、ある程度の悪条件下でのキャンプを経験することで、避難時にも落ち着いて対応できるはずです。

そうして少しずつスキルを積んでいけば、季節を問わずどう対策して楽しめばよいかもわかってきます。

その意味では雨の日キャンプを体験しておくのもおすすめですが、雨水対策で楽しさが半減するのは否めません。

最初のうちは晴れ予報の日を選びましょう。

また雪中のキャンプも面白いものですが、これも、行き帰りの大変さや吹雪の危険を思えば、相当慣れてからにしたほうがよいと思います。

冬ならどんなキャンプ場、どんな装備を選ぶべき?

初めて冬キャンプに行くなら、まずは標高が低い平地を選んでください。

山間部の川沿いのキャンプ場は冷え込みます。

富士山麓などでは冬場の夜間はときにマイナス10度以下になり、装備が不十分だと危険。

海に近いほうが暖かいです。

管理者が常駐していて、トイレ、シャワーなども整備されているところが安心でしょう。

焚き火を囲み、暖をとっている写真
身体を温めるだけでなく、心も落ち着かせる焚き火

たいていの場合、昼間が晴れているほど夜間や明け方は放射冷却で冷え込むため、想像以上に寒くなります。

持って行けるなら、衣類の1枚でも2枚でも余分に用意しましょう。

たとえ使わずに済んでも、無駄な荷物だったと考えてはいけません。

たまたま、使わずに済んだだけなのですから。

冬の野外では、とにかく体温を維持することが重要です。

そのため、衣類はレイヤード(重ね着スタイル)が基本となります。

アンダーウエアは汗冷えしないウールや速乾性の合成繊維がおすすめ。

綿は汗で濡れると乾きにくく、身体を冷やすので、夏以外は避けましょう。

その上に空気層を作るフリースや薄手のダウンを重ねます。

そしてアウターとして風雨をシャットアウトしつつ内部の温度を保持する、透湿性(生地の内側から外側へ水分を逃がす性質)のある撥水性ジャケットを着ます。

この3枚は年間を通しての基本。

暑ければ上から脱ぎ、足りなければウールのセーターなどを足します。

そして体を温めるポイントとして“3つの首”があります。

皮膚が薄く、太い血管も通っている首・手首・足首です。

この3つをネックウォーマーや長めの手袋、ウールの厚手靴下などで保護を。

夏は逆に、これら3カ所を冷やすとよいでしょう。

寝袋にオールシーズン対応のものはありません。

夏用と冬用の2種があれば極寒では重ねて使えて理想的ですが、1つだけ持つなら冬の明け方の気温に対応できるものを。

暑い時期は、マットなど地面の温度の影響を避けるものがあれば寝袋なしでも眠れます。

キャンプ場での設営や過ごし方はどうするの?

キャンプ場に到着したら、まずは居場所作りです。

周囲に樹木があるなら、虫やキノコに寄生されて朽ちていないかよく観察して、倒木の危険を避けます。

地面がなるべくフラットであることも居心地のよさに大きく影響します。

土にテントやタープのペグ(杭)が打ち込みやすいかどうかも確認しましょう。

ペグを固定しづらい場所では大きめの石やブロックなどにロープを結びつける方法もあります。

陽が昇る方向、風向きなども見て、焚き火をする位置、次いで、寝室としてのテントや、リビング・ダイニングの日除けや雨除けとしてのタープの位置を決めます。

例えば風がテントの入口に向けて吹き込むと居住性はぐっと落ちます。

キャンプのレイアウト

キャンプのレイアウトのイメージ図

風向き

朝晩で風向きが変わることもあるので注意。

テント

入口はなるべく風下に向ける。風上に向けると風が直撃し、雨が降ると中に入り込んでくる。

車は風除けにもなる。

焚き火台

周りに燃えやすいものがない少し離れた場所に置く。焚き火を始めたら常に風向きに気を配る。

キッチン

バーナーの周りには燃えやすいものを置かない。雨天の際はタープの下へ。

自分の一軒家を建てるくらいの気持ちで配置を考えるのもキャンプの醍醐味の1つです。

失敗してもいいのです。それは自然の力に負けたということ。

笑い話として次に生かせばいい。自分の知恵を総動員して自然と向き合うことが経験値になります。

リビングは焚き火のそばに作りますが、周りに何もないと火の熱は逃げます。

焚き火の向こう側に薪の山や耐火シート、風防板を設置する、あるいは少し離して車を停めるなどの工夫で熱が反射するようになり、暖かさは大きく増します。

キャンプの食事といえばバーベキューが一般的ですが、冬のおすすめは鍋物。

ポトフ→翌朝はルーを入れてシチュー→昼はパスタで鍋掃除とか、おでん→シーフード風味のカレー→カレーうどんといったやり方なら、身体が温まり、洗い物も少なくなります。

鍋や食器などは少量の湯をかけてキッチンペーパーなどで拭けば洗い場に通う必要もありません。

調理に必要な最低限の水しか使わずにすみ、汚水も減らせます。

これも、災害時に飲料水の不足や排水管の被災などの事態に直面したときに、役立つスキルだと思います。

最後に、冬キャンプを快適に過ごすための3つの小さなスキルをお伝えしましょう。

1つめは、寝るときは靴はテントの中へ。凍ったり冷え切ったりするのを避けるためです。

2つめは、脱いだ服は寝袋の中へ。それで翌朝はほかほかに暖かい状態で着られます。

そして3つめ。アウトドア用品店などでは100度以上に耐える樹脂ボトルを売っています。

樹脂ボトルの写真
いろいろなシーンで使える樹脂ボトル

これに熱湯を入れて靴下などでカバーし、寝る数十分前に寝袋の中へ。

ほかほかして幸せこのうえなし!

寝ながら足で「即席湯たんぽ」をごろごろさせて暖まるのも、冬ならではの楽しみです。

これまでキャンプに縁のなかった方々にも、防災の視点をきっかけとして、アウトドアの面白さにぜひ親しんでいただければと思います。

コラム野外で過ごす際の燃料代を節約するための焚き火スキル

遊びのキャンプでも避難時でも、燃料の確保は重要な問題です。

いざというときのために予備のカセットボンベなどを用意している人も多いでしょう。

一般的に3本セットで400円弱で買えるカセットボンベは、とても便利なものですが、3食の煮炊きに毎回使ってしまうと、1本あたり1.5日~2日ほどしかもちません。

しかし、この3本セットを1カ月弱もたせる方法があります。

身に付けるべき技術は焚き火です。

キャンプ場でも火が焚けるような避難先でも、雨天でなければ、カセットボンベの代わりに周辺の小枝・枯れ枝、割り箸、牛乳パックなどを熱源にして湯を沸かし、煮炊きします。

着火用にマッチやライター、着火剤などを用意しておきましょう。

日本では年間平均で、雨が降るのは1週間に2~3日です。

雨の日はカセットボンベを使い、合い間を見て自然界の燃料を集めて雨の当たらないところに確保しておきます。

そのように2つの熱源を天候によって使い分ければ、3本のカセットボンベを何とか1カ月もたせることができます。

さらに、焚き火の周りを風防具で囲んだり、冬には保温用ボンベカバーなどを付けることで、カセットボンベの燃焼効率もいっそうよくなり、長持ちします。

また、キャンプ場では薪を売っています。

だいたいは針葉樹と広葉樹で分けてあります。

針葉樹は油分が多く、火がつきやすく、燃え尽きるのも早いです。

広葉樹は水分が多くて火がつきにくい反面、長くゆっくりと燃えます。

針葉樹のほうが安く販売されていますが、それだけではすぐになくなってしまいます。

広葉樹だけでもうまく燃えません。

両方を組み合わせ、小さな火を維持するようコントロールすることで、薪代は格段に抑えられます。

もしも周辺から拾える枯れ枝などもあれば、ぜひ活用を。

本コンテンツは、金融広報中央委員会発行の広報誌「くらし塾 きんゆう塾」Vol.67 2024年冬号(2024年(令和6年)1月発刊)から転載しています。
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