豊かな老後生活を送るために
あなたに合った退職金の運用方法を考える
(退職金の使い道)
老後生活の支えになる退職金 じっくり資金プランを立てる
高齢化が進む日本では、定年後、90歳、100歳まで元気に暮らすこともめずらしいことではありません。
しかし、老後が長くなった昨今、「老後生活を支えるのに十分な老後資金を確保できるのか」ということが、多くの人にとっての心配事になっています。
(老後資金を支える退職金)
老後資金を支えるものとしては、現役時代の貯蓄や公的年金などのほか、定年時に受け取る「退職一時金」(以下、退職金)があります。
退職金については、現在、退職給付制度のある会社のほとんどで支給されています。
支給金額の平均は1,800万円弱と大きいことから、老後生活を安心して過ごすためには、この退職金をいかに上手に守り、増やすかが大きなポイントとなります。
そこで今回はこの退職金を中心に、老後の資金プランについて考えていきましょう。
老後の資金は3つの「目的別」に分ける
老後の資金プランを立てるには、まずは使い道(支出)を考える必要があります。
ここでは、Aさんの例も合わせて考えてみましょう。
- 退職金として1,800万円
- 個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)で450万円(45歳から毎月2万円を積み立て、利回り3%で運用した想定)
- 合計2,250万円を60歳時に受け取る
老後に出ていくお金は、大別すると「生活資金」、「ライフイベント資金」、「介護費」の3つに分類できます。
(生活資金)
1つ目は「生活資金」。
ここでは食費や住居費といった日常生活費のほか、趣味や旅行に使う費用、及び医療費も含めて考えていきます。
(医療費)
医療費については、一般的に70~74歳では自己負担が2割に、75歳以上では1割と、現役時代よりも費用負担が軽くなります。
また、高額な医療費がかかったとしても、高額療養費制度を活用すれば全体として大きな出費にはなりにくく、医療費単体で大きな金額を備える必要性は必ずしも高くありません。
(配偶者が亡くなった後は)
なお、配偶者が亡くなった後の1人分の生活費については、夫婦2人の時の7割程度で見積もるとよいでしょう。
(生活資金を賄うお金)
生活資金を賄うお金は、基本的には65歳までは就労収入、65歳以降は公的年金になります。
足りない分はアルバイトなどで就労収入を確保するほか、場合によっては手元の資金を当面の生活資金に充てつつ、夫婦のどちらかが「年金の繰下げ」制度を利用し、受給額を増額することなども考えられます。
- Aさんの場合
- 妻の年金の受取り開始を70歳まで繰り下げ、65歳から70歳までの生活資金はiDeCoの450万円で補うのもよいでしょう。
70歳以降の生活資金は、繰下げによって妻の公的年金が最大1.42倍に増額されるため、夫婦2人の年金で生活していくことは可能と思われます。
(ライフイベント資金)
2つ目は「ライフイベント資金」。
60代から70代前半までは意外とライフイベントの多い時期です。
子どもの結婚や孫誕生などへの資金援助、自宅のリフォーム、車の買替えなど、大きな出費を伴うイベントが目白押しのため、定年で収入が減るにもかかわらず、支出が増えがちです。
イベント出費により生活資金や介護費が圧迫されることのないよう、必要に応じてイベント関連の出費を抑える工夫も考えておきましょう。
- Aさんの場合
- このライフイベント資金は60歳から10年以内に使う分として、退職金のうち、900万円を以下のとおり割り振ります。
- 家のリフォーム費 250万円
- 子どもの結婚・子育て援助費 250万円
- 家族での海外旅行費 200万円
- その他の予備費 200万円
(介護費)
3つ目が「介護費」です。
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査 平成30年」によれば、介護費用は1カ月平均約7万8,000円で、平均介護期間は4年7カ月。個人差が大きい費目ではありますが、上記平均介護費用・期間によれば、1人あたりの介護費は約430万円かかる計算になります。
- Aさんの場合
- 上記介護費の数値を用いて計算し、退職金のうち900万円(430万円×2人分+α)を夫婦2人分の介護費として割り振ります。
なお、実際に介護費として使わなかった場合には、子どもや孫に相続し残すこともできます。