人生100年時代に向けた公的年金制度5つの改正
(確定拠出年金が使いやすく進化)
⑤個人型確定拠出年金の加入可能要件の見直し
確定拠出年金がより使いやすく進化
確定拠出年金は、公的年金に上乗せできる私的年金の制度です。
主に、掛金を企業側が負担する企業型確定拠出年金(企業型DC)と、個人が任意で加入する個人型確定拠出年金(iDeCo)の2種類があります。
今回の改正では、確定拠出年金の加入可能年齢が引き上げられます。
2022年5月から、企業型DCの加入可能要件については、現在の65歳未満から70歳未満に、iDeCoについては、現在の60歳未満が65歳未満になります【図表6】。脚注6
こうした加入可能年齢の引上げにより、60歳以上で厚生年金被保険者(第2号被保険者)・国民年金被保険者(第1号または第3号被保険者)であれば、これまでより運用期間が長く取れるため、確定拠出年金を始める時期が遅くなっても加入するメリットが得られるようになります。
また、2022年4月から受給開始時期等の選択肢も拡大されます。企業型DCとiDeCo共に、現行では60歳から70歳の間で、各個人において受給開始時期を選択できますが、今回の改正によって、受給開始の上限年齢は75歳に引き上げられます。
(受取方法の選択肢と注意点)
なお、受け取り方は、74歳までは「年金として分割」、「一時金としてまとめて」、「両者の組み合わせ」から選択できます(注)が、75歳に達すると、一時金としてまとめて受け取る以外の方法が取れなくなるため、注意が必要です。
(注)詳しくは『くらし塾 きんゆう塾』2021年秋号の「そこが知りたい くらしの金融知識」をご覧ください。
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⑥企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入要件緩和
今回の改正では、さらにもう1点重要なポイントがあるため、最後に見ておきましょう。
企業型DC加入者のほとんどは、現行の制度上ではiDeCoに加入することができませんでした。
それはiDeCoの加入にかかる労使の合意や規約の定めの変更をしないと認められていなかったことが背景にありました。
それが2022年10月からは、そのようなことをせずとも、一定の条件を満たしていれば、本人の意思だけで月額2万円までの範囲で、企業型DC加入者がiDeCoを利用できるようになります。これによって、より幅広い人がiDeCoを活用できるようになります。
シニア世代が、従来以上に長く働くようになり、その存在感が高まっています。高齢期を支える年金制度の仕組みや、今回見てきたような改正を理解し、多様な働き方、生き方を通じて豊かな老後を築いていきたいものです。
脚注
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